曲げ木細工が施された椅子は、エレガントな曲線を描くフォルムがとても魅力的ですよね。木の繊維を絶たずに曲げて使用することから頑丈さも兼ね備えており、日常使いのダイニングチェアとしても人気です。
しかし!一重に「曲げ木を使った椅子」と言っても、そのデザインバリエーションは多岐にわたります。曲げ木がどこにどれくらい使われているのかによって、それぞれ随分と印象が変わるんですよ。
せっかく曲げ木のチェアを選ぶのであれば、きちんとすべてのデザインを把握した上で選びたいものですよね。
そこで今回のRAFUJU MAGでは、曲げ木の椅子にはどんなものがあるのか?デザイン別にご紹介していきたいと思います。また、曲げ木椅子を作っている代表的なブランドも併せてご紹介するので、この記事を読めばお好みの椅子選びが断然楽になるはずですよ。
曲げ木の椅子に興味がある、購入を検討しているという方はぜひ読んでみてくださいね。
どんなものがあるの?曲木チェアのデザインは4種類
さて。曲げ木細工を少しでも使っている椅子なら、「曲げ木の椅子」とひとくくりにされていることは先ほどもお伝えした通り。そのせいでイメージが曖昧になって、お目当てのアイテムをはっきりさせにくくなっている方も少なくないかと思います。
ここでは曲木細工を使った椅子にはどんなものがあるのか、その代表的なデザインを順番にご紹介していきます。種類は大きく分けて4種類です。
ベントウッドチェア
曲木細工を使った椅子といえば、まずイメージするのがこのベントウッドチェア(※)ではないでしょうか。
ベントウッドチェアは、後述する曲木チェアのパイオニア、「トーネット社」が1850年に製作した椅子です。背もたれや脚を支える貫など、随所に曲げ木の技術が活用されています。
シンプルで華奢な骨組みのおかげで空間を圧迫しにくい上に、耐久性も申し分なし。また、曲木を多用している分非常に軽いので、動かすのも楽々です。
ちなみに、画像のような背もたれ2本の作りは「ダブルループ」と言うそう。アンティークショップでも比較的よく見かける、定番のデザインですね。
その扱いやすさから、パブやカフェなど人のたくさん集まる場所で使われてきたベントウッドチェア。長年にわたって多くの人々に愛されてきたのも納得の、実用的で美しい曲木チェアです。
※曲げ木細工を使った椅子を総称してベントウッドチェアと呼ぶこともありますが、ここではフレーム自体に曲げ木を多用した画像のようなデザインのものに限定してお話しています。
ウィンザーチェア
シンプルながら洗練されたフォルムが目をひく、イギリスを代表する椅子ウィンザーチェア。こちらはアーコール社のものですね。
背もたれ部分の曲線、実はこれがほとんどの場合、曲木細工によって形作られているんです。(※)
ウィンザーチェアの誕生は諸説ありますが、17世紀頃には現在よく見られる「コムバック」に近いデザインが作られていたようです。その後18世紀半ばにオーストリアから曲げ木の技術が伝わり、画像のような弓なりの背もたれ「ボウバック」が主流となりました。
いずれのタイプもエレガントさとカジュアルさを兼ね備えており、どんなインテリアにも馴染みやすくコーディネートしやすいのが強みです。
ウィンザーチェアは時代の流れと共に一度姿を消してしまいましたが、アーコールが新しい形のウィンザーチェアを生み出したのをきっかけに、再び注目を集めるように。今でもイギリス国内外で愛され続けています。
※ウィンザーチェアの曲線パーツは曲げ木の技法を使わず、木材を直接曲線状に切り出して作られることもまれにあります。
スピンドルチェア
スピンドルチェアはベントウッドチェアやウィンザーチェアの一種と考えられることもありますが、少しデザイン傾向が違うので分けてご紹介しますね。
こちらは19世紀頃に誕生した比較的新しいデザイン。背もたれの支えや脚・貫などの細身なパーツが、スピンドル(糸紡ぎ棒)のような作りになっているのが特徴です。
その魅力は何と言っても、挽き物細工で形作られたスピンドルの美しさ。後ろから見た姿も見栄えがし、クラシカルやカントリーなど華やかなムードを演出したい空間によく合います。
デザインのアクセントとして、曲げ木を取り入れたモデル
また、作りとして特別な名前はありませんが、例えばアームや脚など部分的に曲げ木を採用した椅子も多く見られます。
モダンでスタイリッシュな雰囲気ながら、曲げ木のやわらかなフォルムのおかげで体にやさしく馴染み、どこか温かみも感じさせてくれますね。
曲げ木の椅子を探すならここから!代表的なブランド紹介
どんなデザインの曲げ木椅子が欲しいか、なんとなく整理がついてきたでしょうか?
続いてこの章では、曲げ木の椅子を得意とするブランドをいくつかご紹介します。ぜひあわせて参考にしてみてくださいね。
(曲木チェアをお探しの方の中には、より年代の古いアンティークのものがほしい!という方もいらっしゃるかと思います。その場合はブランド名などついていないことが多いので、先ほどの章でご紹介したデザイン名をもとに探してみるのがおすすめですよ!)
曲げ木椅子のパイオニア「トーネット社」
前の章でも少し触れましたが、トーネット社は曲げ木の技術を確立したブランドで、ベントウッドチェアのパイオニアとも言える存在です。
1819年、ミヒャエル・トーネットによって設立され、世界で初めて家具の大量生産を実現した会社としても知られていますね。
トーネット社では19世紀中頃に曲げ木細工を使った椅子の制作を始め、現在に至るまで良質なベントウッドチェアを作り続けています。
また近年では、曲げ木のフォルムをスティールで表現した、近代的なコレクションも取り扱っているようですよ。
北欧デザインが素敵な「アーコール社」
北欧デザインの代表的ブランドとして有名なイギリスの老舗、アーコール社。こちらもまた、曲げ木細工に長けたブランドです。
当時、家具の素材としての使用は不可能と考えられていたニレ材(エルム材)、そして曲木加工の組み合わせによって、シンプルで実用的なウィンザーチェアの大量生産に成功しました。
曲木をいかしたチェアシリーズでは、クエーカーチェア、ゴールドスミスチェア、フープバックチェア、シスルバックチェアなどたくさんの椅子が作られています。
伝統的なウィンザーチェアの形状をベースにしつつも、随所にアーコールならではのオリジナリティが感じられるアーコールチェア。北欧家具はもちろん、和家具など異なるテイストのインテリアともケンカせず馴染んでくれます。
曲げ木専門のブランド「秋田木工」
秋田木工は日本で唯一、曲げ木家具を専門に製作しているブランドです。
中でも有名なのが、日本を代表するインテリアデザイナー・剣持勇がデザインを手掛けたスツール。曲げ木独特のカーヴィーな脚が愛らしいだけでなく、スタッキングも可能という機能性もバッチリなアイテムです。例えば来客用に何脚か備えておいて、ダイニングチェア代わりに使うのも良いですね。
他にも、職人技が光るウィンザーチェアも見逃せません。洋家具を思わせるデザインながら、細部のフォルムに秋田木工ならではの丁寧な仕事ぶりが感じられ、洋家具とは一線を画してます。
国産ブランドだからこその、日本人の美意識にマッチした緻密でしなやかさな佇まいがなんとも素敵です。
現代的なシルエットが目を引く「天童木工」
1940年創業、成形合板を日本でいち早く実用化させた天童木工。
現代美術の作品を思わせるようなモダンなシルエットが印象的ですが、この形状の秘密こそ成形合板にあるんです。
成形合板とは、薄くスライスした木材を重ね合わせ、型に沿って圧力と熱を加えながら形作られた板のこと。木材自体の強度に頼らず、薄くても十分な強度を保持できる成形合板の誕生によって、天童木工独自の複雑なフォルムが実現されました。
天童木工の代表的な曲げ木椅子としては、柳宗理デザインの「バタフライスツール」が有名ですね。バタフライスツールは、2016年グッドデザイン賞を受賞しており、戦後日本の近代化の象徴として広く世界に知られています。
ナチュラルモダンなムードの「カリモク」
ほっとやすらぐナチュラルさと、モダンな雰囲気を兼ね備えたカリモク家具。
洋風家具の生産開始は1962年と比較的最近ですが、すっかり日本の洋家具ブランドの定番となりましたよね。そんなカリモク家具にも、曲げ木の技法を使った椅子が多く見られます。
画像の「Kチェア」は、カリモクを代表するロングセラーの曲げ木チェアです。
曲げ木を活かしたやわらかなアームとビニールレザーのブラックの組み合わせは、カリモクの定番です。スタンダードなデザインでどんなコーディネートにも合わせやすいのに、独特のレトロな佇まいがインテリアのアクセントにもなる。そんな2面性のあるデザインが、多くのファンを捉えて離さないのかもしれません。
最後に
曲げ木細工を施した椅子のデザインと、それを作る代表的なブランドを紹介しましたが、いかがでしたか?
バリエーション豊富な曲げ木細工の椅子の中から、あなたに合ったひと品を選ぶ手助けになればうれしいです。
美しいフォルムの曲げ木椅子を取り入れて、ぜひ日常を美しく彩ってみてくださいね。
● アンティークチェア大全!椅子の種類からお手入れ方法まで徹底解説
● イギリスアンティークのおすすめ椅子特集!ダイニングチェアや書斎に
● アンティークベントウッドチェアはどんな家具?魅力をまるっとご紹介
● アーコールチェアの総まとめ!アンティークの人気種類とインテリア