こんにちは!ラフジュ工房店長の岩間守です。
今回の店長ブログも前回に引き続き、お客様から実際にいただいたお叱りの声を一つ、テーマに取り上げさせていただきました。
始まりはそんな1本のお電話からで、昔当店でご購入いただいたお品をご自身でリペアしたい、そういった内容のお問い合わせでした。
しかしながら当店ラフジュ工房では、お客様にリペアの方法をお教えするようなことはしていません。
というのも、お客様ご自身でのリペアは端的にいって非常に難しく、また失敗してしまう危険性が極めて高いため、お控えいただくことをおすすめしているんです。
お問い合わせをいただいたお客様にも、同様のことをお伝えさせていただきました。
その結果、
とタイトルのように激怒されてしまった、というのがことの次第です。
そこで今回のブログでは、なぜ当店ではリペアの方法をお客様にお教えしていないのか、その理由を正直に書かせていただきました。
と思われた方がもしいらっしゃったら、ぜひこのまま続きも読んでみてもらえるとありがたいです。
リペア方法を教えられない理由(1) 家具のリペアは「抽象的」?
実はお叱りをいただいた件のお客様以外にも、「リペア方法を教えてほしい」というお問い合わせ自体は、これまでにもちょこちょこいただいています。
一例を挙げると、
ざっとこんなところでしょうか。
その大きな理由の一つが、家具のリペアは数ある仕事の中でも非常に抽象度の高い分野であり、そもそも詳細を分かりやすく言語化することが極めて困難だから。
料理のレシピのように、それを見ながらやれば比較的大多数の人がある程度のクオリティのものをつくることができる、そういったマニュアルは残念ながらありません。
例えば、「塗装」を例に考えてみましょう。
工程だけを見れば割合シンプルで、要はヤスリがけ→色入れ→クリア塗装・ワックスなどの塗装という手順の繰り返し…なのですが、じゃあどんなヤスリでどこをどれぐらい削ったらいいのか?削り過ぎたらどうすればいいのか?色はどの色をどんな風に、どの程度塗ったらいいのか?などなど、全てをメール・あるいはお電話でお伝えするのは至難の業です。
正直なところ、常日頃から木工家具に触れている我々プロどうしですら、その微妙な加減を言葉で的確に言い表し、相手に誤解なく伝えることの難しさを日々痛感させられています。
これが対お客様、しかも我々は実際に現場にいるわけでもないとあっては、もはや無謀といっても過言ではありません。
だからこそ、当店ではお客様に簡単にリペアの方法を教えます、とはいえないんです。
リペア方法を教えられない理由(2) リペアには経験値とセンスが不可欠!
また、これもそもそも論になってしまいますが、仮に完全なマニュアルがあったとしてもそれを再現できるだけの非常に優れた能力がなければ、ハッキリいって何の意味もありません。
ここでいう能力とは、「経験値」と「センス」に裏付けされた技術力・対応力のことです。
これが、お客様ご自身でリペアを行っていただくことはオススメできない=リペアの方法をお教えできない二つ目の理由です。
もしもそんな風にお考えの方がいらっしゃったら、声を大にしてお伝えしたいです。
なんとかなる・なんとかできるのは、プロだからこそです。
先ほどは塗装を例にとってご説明しましたが、もっと細かいことをいうと色を一色つくるのだって、経験に基づく勘がなければできないことなんですよ。
なにせ配合のちょっとした違いによっても、木部に色を載せたときの馴染み方はまるで違います。
さらに、土台となる木材の種類や状態によっても色の定着度合い・吸収のされ方は違ってきますし、たとえ同じ木材を使っていたとしても全ての部位に全く同じように色が入ってくれるかというと、そんな単純なことでもありません。
紙に絵の具で絵を描くのとは、全く勝手が異なります。
そういったことは全て、何度も何度も失敗を経験し試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ技術を習得してきた者だからこそ分かることです。
それがない、つまり積み重ねてきた経験も磨き上げられたセンスもないということであれば、セルフリペアは全くもっておすすめできません。
ちょっとだけ裏話をさせていただきますと、当店で今現在プロとして働いている職人たちの中にも、実は未経験からスタートしてここまでやってきた者が何名かいるんです。
が、その一方で経験を積む前にどうしても心が折れてしまい、試用期間で辞めていった者も多くいます。
とんとん拍子で実力が身についていくような仕事ではないので、理想と現実のギャップに耐えきれず早々にリタイヤしてしまう人の方が、むしろ多いぐらいです。
自分なりに試行錯誤を繰り返しながら経験を積み重ねてきた者か、あるいはそれに加えて持ち前のセンスが抜群に優れている者。
結果として残ったのはそういうスタッフばかりでしたし、逆にいえばそうでなければ続かないともいえます。
経験もセンスも、当然ながら一朝一夕に手に入るものではありません。
だからこそ皆さんにはどうか、
なんて思わずに、お困りの際にはリペアのプロである我々へお任せいただきたいのです。
最後に
というわけで今回は、なぜ当店ではリペアの方法をお客様にお教えしていないのか?その理由を深掘りさせていただきました。
お客様からしてみれば、
と思われてしまうようなことかもしれませんが、我々がリペアのプロである以上そう簡単にはいかない事情が、何となくでもご理解いただけていたら嬉しい限りです。