鉄工所とは、すなわち鉄を加工して製品を作る工場です。でも実際、何をどんな風に作っているのか?どんな業務があるのか?といったところまでは、知らない人の方が多いのでは。
そこで今回は、知る人ぞ知る鉄工所の世界にフォーカスし、職種やそれぞれの仕事内容についてご紹介していきたいと思います。
さらに鉄工所の花形、製造職の仕事に興味がある方に向け、製造職のリアルもお伝えします!
鉄工所の仕事に興味がある方は要チェックですよ。
Contents
鉄加工・溶接のスペシャリスト。鉄工所とは?
鉄工所ではクライアントの要望に応じて、主に鉄製品の開発・設計、加工(切断・組立て・溶接など)を手掛けています。 鉄製品の具体例を挙げると、公園の遊具や鉄製の家具など身近なものから、自動車や航空機・産業ロボットなどの機械部品、建築の鉄骨、鋼鉄製の大型船まであらゆるものを製造しています。知らないと素通りしてしまいがちな業界ですが、私たちの生活の根底を支えている重要な存在なんです。
鉄工所の仕事を職種別に紹介
鉄工所と言うと、鉄を加工・溶接する製造職のイメージが強いですよね。しかし実際は、管理や工事、設計、営業、事務などさまざまな業務があります。 会社の規模によっては、製造職が設計や工事まで担当したり、営業が技術的な業務に関わったり…というところもあるんですよ。それぞれの職種の特徴をまとめてみたので、参考にしてみてください。
製造職
鉄工所の製造職は、設計図をもとに製品を作る実働部隊。 大きな鉄工所では工程ごとに担当の部門がありますが、小さな工場だと1人が複数の業務を担当します。
一般的な仕事の流れはこんな感じ。
切断・加工 | 工作図・現寸図をもとに工作機械を使って材料をカット。必要に応じて熱を加え、叩いたり、曲げたりして成形する。 |
仮組み | 部材同士を組み立てて、溶接して仮止めする。 |
溶接 | 製品の材料や場所によって適切な接合方法を判断し、溶接する。鉄工所によっては、ロボット溶接を導入して効率化を図っているところもあり。 |
磨き | 表面を磨き整え、溶接の際に出る微粒子などを除去。塗装が美しく、剥離しにくくなるよう仕上げる。 |
防錆塗装 | 最後に防錆剤を塗布。主に吹きつけ機械を用いつつ、細かい部分は刷毛を使って、下塗り・上塗りを行う。 |
この一連の流れの中でも特に経験が必要とされるのが、溶接の仕事です。 新人の頃は、とにかく数をこなして腕を磨くことが求められます。昔ながらの職人気質な鉄工所では、技は見て盗めというところが多かったようですが、最近は研修制度が設けられていたり、OJTで学んだりするのが一般的ですね。「全国溶接技術競技会」という腕試しの大会もあるので、従業員の技術向上や自社技術のアピールを目的として、出場を推進している鉄工所もあるんですよ。
製造職は手先が器用な人、ものづくりが好きな人、地道に集中して作業に取り組める人に向いている仕事です。 設計図に沿って小さな部材から1つ1つ作り上げるため、丁寧に・正確に作業を進める能力が求められます。また、製造業務は一瞬の気の緩みが大事故につながる仕事でもあります。 常に安全第一で、集中して作業できる人でなければ、務まらないでしょう。
生産管理職
生産管理職は工作図面をもとに、納期内に適切な生産数と品質を確保できるよう、製造方法や工程の計画・管理、作業員の割り当て、在庫管理などを行う仕事です。 時には厳しい納期の案件が入ったり、思わぬトラブルが起きたりと、急な予定変更に臨機応変な対応を求められることも。営業と製造職の間に立って、全体を調整・指導していく力が求められます。
また、1つ1つの商品の品質をチェックするのも大切な仕事です。製造過程や納品前段階で目視や検査機械を使って、製品が図面通りに仕上がっているか確認したり、定期的に社内設備の点検を行ったりします。 規模の大きな鉄工所では、工程管理と品質管理は部署を別に設けている場合もありますよ。
生産管理職に向いているのは、やはりマネジメント能力のある人。 会社全体と各部署の状況を理解しつつ、最適な方法を判断し、人を動かしていかなければなりません。仕事の知識や経験に頼るだけでなく、日頃から各個人とコミュニケーションをとって信頼関係を築ける人であれば、円滑に仕事を進めやすいでしょう。会社全体の動きが分かる仕事なので、将来管理職を目指したい人にも向いています。実際、1つの会社で長く働く人も多いです。
資材調達職
資材調達職はその名の通り、商品を製造するために必要な鉄材などを仕入れる仕事です。 仕入先への発注や新規仕入先の開拓、納期・数量管理、検収、入出庫・在庫管理など、資材調達に関するあらゆる業務を担当します。資材調達と聞くとなんとなく裏方の仕事のようですが、鉄工所などの製造業では、資材調達が利益や商品の品質、生産性に大きく影響するため、責任重大なんです。
資材調達の仕事は、材料や加工に関する専門知識に加えて、仕入れ価格や納期の交渉・調整などの業務もあるため、営業としてのスキルが求められます。 材料や機械加工について興味があって、知的好奇心の旺盛な人。仕入先と円滑な関係を築くコミュニケーション能力のある人。また、事務仕事から営業まで幅広い業務に携わるので、マルチタスクを効率良くこなしたいという人に向いています。
設計職
設計職はクライアントからの設計図をもとに、工場で製品を作るのに必要となる工作図や現寸図を作成する仕事です。 時にはクライアントの製品設計だけでなく、自社工場のクレーンなど社内設備の設計や、自社商品の開発・設計を行うこともあります。
設計図は、主にCAD という製図ソフトを使って制作します。設計にあたっては、設備の能力検討や強度計算なども手掛けます。材料や製造工程、施工など専門的な知識を活かしつつ、クライアントの意向に沿って設計することが求められる職種です。
大きな工場設備などの設計になると、チームを組んで1〜2か月かけて設計に取り組むことも。営業や製造、工事担当者など各部署からの意見を折衷しつつ、安全で最適な設計をしなければなりません。基礎的な設計力に加えて、クライアントや各部署の意見を正しく理解し、調整できる人に向いている仕事と言えます。
工事・施工管理職
工事職は、製造した商品を現場へ運び、施工するのが仕事。一方施工管理職は、工事の総合的な管理をする仕事です。 機械部品のみを作っている鉄工所にはない職種ですが、建築物の鉄骨などを作っている鉄工所では大抵工事まで担当しているので、工事・施工管理者が在籍しています。
工事担当者は現場へ資材を搬入し、設計図をもとに部品を現場で組み立て、溶接をして仕上げます。 手掛ける工事はさまざまで、建物や橋などの鉄骨、工場設備、立体駐車場など、鉄を使う建造物や設備の工事を幅広く担います。規模の小さな鉄工所では、製造から施工まで一貫して同じ担当者が手掛けることもあります。
組み立てにはクレーンなどの特殊車両を操作したり、高所で作業をしたりと、現場ならではのスキルが必要です。安全に十分配慮しつつ、設計図に沿って美しく仕上げることが求められます。
施工管理者は工事現場の工程管理や安全管理、品質管理などを行います。 施工計画を立てるところから、クライアントとの打ち合わせ、人員配置、現場での技術的指導、図面通りに仕上がっているかの確認など、仕事は多岐にわたります。
安全かつ計画通りに工事が進むよう、全体をマネジメントする施工管理は、社内外の人と広く関わりながら進める仕事です。そのため、コミュニケーション能力のある人、時には自分の意見をしっかり通せる人に向いていると言えるでしょう。
営業職
営業職はクライアントの窓口として、要望のヒアリングに始まり、仕様・概算の検討・提案、見積もり作成、契約、その後のフォローなどを行います。 営業方法としては、反響営業やルート営業が一般的です。自社の技術をベースとして、顧客の要望に沿って柔軟に対応することが求められます。
鉄工所の営業には、専門的な知識を分かりやすく説明する力、製造や設計など他部署とうまく連携して業務を進める力が求められます。 他業界の営業職と同じく、高いコミュニケーション能力が必要となる仕事です。
事務職
事務職は、他の企業の事務職とほぼ変わりません。違うことと言えば、一般的なデスクワークに加えて、工場の簡単な機械の操作や出荷のための梱包など、軽作業を行う場合もあること。 納期に応じて忙しい時期があったり、聞きなれない言葉が多かったりもしますが、基本的に難しい業務は少なく、未経験者でも始めやすい仕事だと言えます。
残業はあまりないところが多い ので、プライベートの時間をしっかり確保したい人にぴったりです。また、ものづくりに興味がある人なら、普段の暮らしでは目にしない製造の世界を間近で見ることができるので、より楽しめるはずですよ。
製造の仕事はキツい?知っておきたい本当のところ
肉体労働が多く、つらいと言われることが多い製造の仕事。仕事自体には興味があっても、実際続けていけるのか不安で求人応募をためらっている…なんて方もいらっしゃるのでは。ということでここでは、鉄工所で製造職として働きたいなら知っておきたいポイントをまとめました。
製造職は肉体労働で危険を伴う
まずお伝えしたいのが、鉄工所の製造職は常に危険を伴う仕事だということ。 高温の材料を扱ったり、機械による切断・加工を行ったりする場面が多々あるため、一瞬の気の緩みが大事故につながります。十分に気をつけていたとしても、軽い火傷をしてしまったり、服や手がボロボロになったり、といったことは日常茶飯事。時には溶接マスクをつけていても、溶接の光で目が焼けて、涙と激痛が止まらなくなることもあります。
作業場は夏は灼熱、冬は極寒。さらに、重い資材を持ち運んだり、同じ姿勢での作業が多いため、腰痛になりがちです。過酷な環境下での肉体労働ですから、慣れないうちは体力的にかなり辛い思いをすることが多いようです。
鉄工所の製造職は、離職率が高い業界です。ただ、そういった環境でも半年、1年と働いていれば、徐々に体が慣れてきます。実際、はじめの数年さえ乗り越えられれば、その先10年、20年とキャリアを重ねているベテラン職人も多いです。
ものづくりが好きな人はやりがいを感じられる
製造は基本的に、業務時間内は黙々と手を動かして作業をする仕事です。ものづくりが楽しいと思えるかどうかで、心持ちも変わってくるでしょう。 以前はできなかった作業ができたとき、難しい溶接をきれいに仕上げられたとき、街中で自分が作ったものを目にしたときなど、自分の仕事にやりがいを感じ、誇らしく思える人であれば、少々辛いことがあっても前向きに続けていけるはずです。
特に、ものづくりの完成度を追求したい職人気質な人であれば、続ければ続けるほどのめり込んでいける世界です。 技術を磨けば磨くほど給与も上がっていくので、よりやりがいを感じられるでしょう。
休みは日祝が一般的
鉄工所がきついと言われる理由の一つに、労働時間の長さがあります。中小規模の鉄工所の場合、休日は日曜と祝日のみで、土曜は毎週〜隔週出勤というところが一般的。 さらに下請けの仕事が中心の鉄工所だと、納期の厳しい仕事が多く平日は遅くまで残業、最悪休日も出勤というというところもあります。
ただ中小でも、元請けから直接仕事を受けている企業や、自社の技術を活かしたオーダー品の開発を多く受けている企業など、量よりも質で勝負している鉄工所は、それほど労働時間が長くない傾向にあります。 また残業を減らすため、システム開発や最新機器の導入に力を入れている鉄工所もありますよ。