地方移住。忙しない都会の暮らしに疲れて、地方でのスローなライフスタイルに憧れる方も多いでしょう。しかし一方で、理想と現実のギャップに直面し、結局は都会へ戻ってしまう移住者が少なくないのもまた事実。
そこで今回は、地方移住を考えている方のために「地方移住ノウハウ」を徹底伝授!メリットとデメリットをしっかり踏まえた上で、失敗しない地方移住のための対策や心構えをお届けします。
Contents
地方移住のメリット・デメリット
冒頭でお話した通り、地方での暮らしに挫折して都会に戻ってしまう地方移住者は一定数存在します。その最大の原因は、「地方移住に対して過度な期待を持っている人が多い」ということ。いざ地方移住をしてみて「こんなはずじゃなかった!」と頭を抱えないために、メリットとデメリットは事前に整理しておきましょう。
メリット
自然に囲まれた暮らし
地方移住希望者にアンケートを取ると、「地方移住先の条件」として常に上位に食い込むのが“自然環境の良さ”。コンクリートとビルに囲まれた都会の暮らしに疲れて、地方移住を検討する方は少なくありません。広大な自然の中で、アクティビティを楽しめるような場所も多数あるので、都会とはひと味違う体験ができるのも魅力ですね。
鮮度のいい野菜や海産物
地方移住のメリットとしては、やはり食べ物の鮮度の良さが挙げられます。地域にもよりますが、おいしい海産物や野菜が多く、さらに都会に比べて安価な価格で購入できるというのは、地方移住の大きな魅力です。 高騰が続く野菜の価格に悲鳴を上げている都会人にとっては、嬉しいポイントですね。
人が少ない
都会はとにかく人が多く、どこへ行っても混雑しています。飲食店に行ったら30分待つのは当たり前、デパ地下では何を見るにも長蛇の列、日々の通勤では満員電車に揺られ…そんな生活に限界を感じ、地方移住を考える方も少なくないのでは。
都会に比べ、ぐっと人口が少なくなる地方では、それなりに賑わっている駅でさえゆったり歩ける余裕があります。 多くの地方移住者が「地方は時間の流れがゆっくりしている」と口を揃えて言うのも、人が少なく、せかせかしていない田舎特有の空気感ゆえでしょう。
家賃が安い
地方移住者にとって、「家賃が安い」というのはかなり嬉しいポイントですよね。都内では1K賃貸の家賃相場が5万円~10万円前後。対して、東京都・神奈川県を除いた関東地域の家賃相場は4万円~6万円前後と、大きな差があります。
「空き家バンク」など、地域の空き家を格安で貸し出す地方移住者向けのサービスもあるので、地方で安い家を探している方は検討の価値ありですよ。
デメリット
求人の業種が少ない
市場が小さい地方では、仕事自体はあるものの業種がかなり限られます。 好きなことや得意なことを活かして就職したいのであれば、多種多様な選択肢で溢れている都市部の方が求人は探しやすい、というのが正直なところ。憧れだけで一念発起して地方移住した結果、やりたい仕事が見つからない、移住先の就職先が合わない、といった理由で泣く泣く都会に戻った…なんてことも少なくありません。
給料が安い
厚労省の都道府県別最低賃金ランキングでは、東京都が1163円で安定の首位。最下位である秋田県の951円と比べると、200円以上の差があります。地方移住を考えているなら、都市部で働いていた頃よりも収入がガクンと下がるということは、あらかじめ覚悟しておかなければなりません。
さらに、後述するように地方では車が必要不可欠なので、都会暮らしではかからなかったガソリン代や車の維持費がプラスされます。それに加え気温が極端に低い・高い地域では、光熱費がよけいにかさんでしまう場合も。「地方は生活費がかからないから、給料が低くても大丈夫」と思っていると、痛い目を見るかもしれませんよ。
車がないと生活できない
地方では冗談抜きで、車がないと何もできません。 都心では次から次へひっきりなしに電車が来ますが、地方は1時間に1本、終電が21時台なんてのが当たり前。バスもまた然りです。田舎の公共交通機関はあてにならないということは、肝に銘じておいた方が良いでしょう。
地元民との付き合い
地方移住に関する体験談や失敗談は数多く語られていますが、中でも「地方移住における地元住民との軋轢」はよく耳にする話ですね。 例えばゴミ出し問題。都心から地方に移住してきて、近くのゴミ収集所にゴミを捨てようとするも、地元住民から「町内会に入っていないから」という理由でゴミ収集所の利用を拒否される。では会費を払って町内会に加入したい旨を伝えると、住民の全会一致がないと加入できない。住民票を地方に移していないよそ者は論外。などと言われ、にっちもさっちもいかない…ということが実際にあるんです。もちろん地方全体がそうというわけではないものの、地元住民との付き合い方に頭を悩ませる人は多いです。
公共施設や娯楽施設が少ない
首都圏では、いたるところに飲食店やコンビニが軒を連ねています。が、地方は基本的に車社会。一番近いコンビニでも車で20分、30分かかるのは当たり前です。
カフェやショッピングモールなどの娯楽施設はもちろん、病院などの公共施設が少ないのも悩みどころ。地域差はありますが、都会に比べて選択肢がぐっと減るのは覚悟しておきましょう。地方移住を考えている方は、いざという時に駆け込める病院が近くにあるかどうかも、前もって確認しておくことをおすすめします。
高等教育機関の少なさ
地方では、田舎になればなるほど子どもの数が少なくなっていくため、小さな小学校や中学校はどんどん統合されていきます。 その結果学校の局地化が進み、中には毎日70㎞以上の距離を運転し、なんとか子どもを学校へ通わせているという親御さんも。場合によっては、中学進学や高校進学の時点で下宿や寮生活を余儀なくされ、親元を離れなくてはならないようなパターンもあります。
子どもの成長に合わせて選択肢の多い都市部に戻るのか、地方でも学校が選びやすい場所に移住するか。子育て世代の地方移住に関しては、単身や夫婦単位での移住よりもいっそう慎重な判断が求められます。
失敗しないための対策と心構え
メリットとデメリットが分かったところで。では、手酷い失敗をしないためにはどうすればいいのか?快適な地方移住を実現するための対策と心構えをお話します。
お試し期間を設けよう
地方移住、それはつまり生活であり、そこで生きていくということです。安易な思い付きで行動に移すのは得策とは言えません。そこでぜひ活用してほしいのが、自治体が実施している地方移住のお試しサービス。
1泊・2泊程度の短期間から、3ヵ月ガッツリ移住体験ができる長期間まで、期間や内容はさまざま。実際に空き家に暮らしてみたり、農家や地元企業での職場体験などができる地域もあるので、こういった自治体の活動を通し、まずはその土地の雰囲気や人々の関わり方を肌で感じてみましょう。 移住を決断するのはそのあとでも遅くはありませんよ。
それなりに栄えている地方都市を選ぼう
集落や村など、人口が少なく周囲から遮断された地域ほど、地方移住のハードルは高くなります。 娯楽施設は少なく、地域の共同体としての意識はいっそう強く頑なになり、求人や進学の選択肢も狭まっていく…。そうした不便や不都合を受け入れる覚悟がないのであれば、初めての地方移住は適度に栄えた地方都市を選ぶのが無難です。
首都圏と同じように、とまではいきませんが、多くの地方都市は飲食店や公共施設もそれなりに点在し、車さえあれば不自由のない暮らしが可能です。 田舎と都会の良いところを程よく取り入れた“丁度良い地方暮らし”で、まずはハードルを下げましょう。
運転免許と車を確保しよう
上の方でお話した通り、地方はどこも車社会です。地上移住を決めたのなら、とにもかくにもまずは車を確保しましょう。地方では一つ一つの施設が遠いので、電車や徒歩といった移動手段だけでは通勤はおろか、スーパーの買い物も子どものお迎えもままなりません。
就職にあたっても、ほとんどの企業が運転免許を必須条件としています。 地方においては、車はいわば自分の足と同じ。移住を考えるにあたって、運転免許と車の確保は早急に済ませるのがベターですよ。
「空き家バンク」を賢く活用しよう
地方移住での住居探しの際、おすすめなのが「空き家バンク」と呼ばれる制度です。所有者が持て余している空き家を、格安で移住希望者に提供する空き家バンク。 自治体によっては賃貸補助など手厚い支援をしてくれるところもあり、地方移住を考えている方にとっては嬉しい制度です。
ただ、空き家バンクに登録されている空き家は、「持ち主が住まなくなった」「長年放置されていて人が住めるような状態ではない」など、問題を抱えた物件も多数見受けられます。場合によっては虫やネズミといった害獣駆除も必要で、通常の賃貸を借りた方が安上がりだった、なんてことも。
また、仲介業者を通さない直接交渉で契約を交わす場合、貸主と借主の間で思わぬトラブルに発展することもあります。後々のことを考えるなら、間に業者を挟んだ契約の方が安心ですよ。
空き家バンクを利用する際は、交渉は仲介業者を挟む、必ず下見を行う、家の補修に関する取り決めは事前にしておくなど、通常の賃貸を借りるとき以上に用心深く話を進めましょう。
地元住民とのコミュニケーションを取ろう
人口が少なく、周囲の住民と協力して生活していく必要のある地域ほど、地元住民とのコミュニケーションは重要になってきます。 例えば町内の清掃活動や飲み会、祭りごとの準備など、住む場所によってはかなり頻繁に住民同士の交流の場が設けられています。こういった地元民の交流会は、その地域のコミュニティ=“共同体”という意識を作るための大切なイベントです。 都会と違って逃げ場の少ない地方においては、周囲との人間関係は生命線といっても過言ではありません。
人気の移住先4選+α
続けて、移住先として人気の高い地域をご紹介します。それぞれの地域ごとに魅力や特色がありますので、参考までにチェックしてみてください。
長野県
避暑地としても人気の高い長野県。豊かな自然環境や首都圏から近いこと、自治体の支援が充実していることなどから、NPO法人「ふるさと回帰支援センター」が毎年発表している移住希望地ランキングでも、常に上位にランクインしています。
長野県は縦に長い立地なので、北部に住むか南部に住むかでも環境が変わってきます。ウィンタースポーツを楽しみたい、豊かな自然の中で暮らしたいなど、移住者の希望に合わせたライフスタイルが選べるのが嬉しいですね。
また、長野県は地方移住の支援に力を入れている県の一つ。400近い移住支援制度が存在し、地方で起業する移住者や二地域居住など、幅広いニーズに対応しています。
静岡県
こちらもランキング上位常連の静岡県。周囲を山と海に囲まれながらも、1時間~2時間程度で関東・関西どちらにも足を伸ばすことができるアクセスの良さで、移住のハードルは低めです。二拠点生活もしやすそうですね。
静岡県の中心地である静岡市は、ショッピング施設や行政機関、学校など、生活に必要な施設が近接しているため、移住にあたって車が絶対条件ではないのもポイントが高いです。
また、静岡県は地価と坪単価が東京に比べかなり安く 、マイホーム購入を考えている方は静岡県に家を建てる、という選択肢もありですよ。
群馬県
関東の北部に位置する群馬県。県内には草津温泉や伊香保温泉など、全国的にも有名な温泉地が点在しており、東京から日帰りで行ける旅行先としても人気があります。
群馬県は特に子育て世代からの支持が厚く、理由としては地震によるリスクが少ないこと、生活費や教育費が安いことなどが挙げられます。 また、「古民家DIY」「移住に必要なお金」といった、移住希望者のニーズに即した内容の移住セミナーを年100回以上行うなど、県全体として移住促進に力を入れている印象です。
宮城県
東北地方の中でも比較的温暖な気候で、1年を通して過ごしやすい宮城県。国の政令指定都市、仙台市は通称「杜の都」と呼ばれ、オフィスビルが建ち並ぶ街の中心地も緑にあふれています。自然豊かな環境で、夏には海水浴、冬にはスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツと、四季折々のレジャーを満喫できますよ。
また、日本有数の米どころであり、海の幸、山の幸にも恵まれた宮城県は、移住後の「食」も楽しみの一つかもしれませんね。
+α。茨城県のすすめ
茨城県常陸太田市の移住者リポートとして、ラフジュ工房のスタッフ一家が
『田舎暮らしの本』2月号に掲載されました。
上でご紹介した4県はメジャーどころですが、ダークホースとしてぜひ筆者の暮らす茨城県もご紹介させてください。
実は、当サイトを運営している「株式会社ラフジュ工房」の所在地、茨城県常陸太田市は、若い夫婦や子育て世代への支援が手厚いことで近年注目を集めているんです! 宝島社の月刊誌『田舎暮らしの本』に掲載された「2022年版住みたい田舎ベストランキング」では、なんと子育て世代部門で全国3位に。
茨城県には国営ひたち海浜公園をはじめ、家族で楽しめるスポットも多く点在していますし、特急1本で都内から宮城県まで行けるのも嬉しいところ。さらに、農業産出額が高い茨城県では、新鮮な野菜や肉、魚介類が安く手に入るんですよ。
子どもを連れての地方移住、ぜひ茨城県も選択肢に加えてみてくださいね。
(出典:宝島社『田舎暮らしの本』2月号、「2018年版 住みたい田舎ベストランキング」小さなまちランキングより)