“足踏みミシン”の愛称で親しまれてきたアンティークミシン。家電というよりもどこか家具を思わせる、そんな愛着溢れるレトロさが最大の魅力ではないでしょうか。
実際のミシンとして実用される事こそ減りましたが、皆さんもご存知の通り、天板を付け替え“台”としてリメイクされたものが広まっていますよね。テーブルとして多目的に使えるのはともかく、そもそもの悩みが「自分で作る」か「買う」のか。
「自分の手で作り上げる楽しさ」や「コストを抑えやすい」などDIYにはメリットも多いですが、一方で肝心な家具としてのクオリティや、材料費などのバランスなどを考えてみると、案外容易く決められないところでもあるのです。
そこで今回は、“買い方”から納得して、アンティークミシン台を選ぶためのポイントを紹介していきます。少し踏み込んだことを言いましたが、まずは基本のデザインもお話ししていくので、自分の理想もちゃんとイメージできるはずですよ。
Contents
アンティークの「ミシン台」って?
冒頭でも少しお話ししましたが、昔ミシンは工業用だけでなく家庭用も足踏み式が主流だったため、必然的にミシンと作業台が一体となったテーブル型が基本となっています。折りたたみ天板の下にミシン本体を隠せるタイプと、固定式のものがありました。
アンティークミシンの本体は凝ったデザインのものが多く、ディスプレイとしても華になるのですが、やはり作業台の幅を取るため、天板を付け替えたリメイクアンティークもアンティークショップで販売されるようになっています。
また、アンティークショップの場合、アンティークミシンも一緒に扱っていることが多いため、名前は「ミシン台」や「ミシンテーブル」などと区別されているので、探す際は参考にしてみてくださいね。
ミシン台の印象を決めるのは脚!定番の2タイプをご紹介
アンティークミシンといえば、何と言っても特徴的な「脚」ですよね。アイアン素材であることは共通していますが、メーカーや年代によってデザインは異なり、大きく2種類に分けることができます。今回は定番の2タイプに加え、アンティークミシンだからこそ見ておきたいポイントにも触れていきますよ。
曲線のフォルムが美しい「網目タイプ」
エレガントな網目状のアイアン脚は、ご存知の方も多いかもしれませんがシンガー(Singer)社の真骨頂のデザインですよね。そんなことから”シンガーテーブル”と呼ばれていることもあります。
ペダルや側面についたペダル車まで網目状で、アイアンは無塗装の黒色も特徴の一つですが、こちらは戦前のアンティークミシンのみに見られるものだと言われています。
ちなみに見かけることはレアですが、曲線と直線を組み合わせた少し個性的なものもあるので、有名メーカーに限らず珍しいデザインのものを探してみるのもおすすめです。
アンティークミシンの王道が欲しい方や、華やかなデザインのものがお好きな方はぴったりですが、黒アイアンのおかげで案外カジュアルに合わせることができますよ。
モダンですっきりと見える「ストレートタイプ」
先ほどのものとは打って変わり、直線的なフォルムを基調としたこのストレートタイプもよくアンティークで出会うことがある種類です。こちらは「ジャノメ(JANOME)」や「リッカ―(RICCAR)」をはじめとした、戦後に製造を開始した日本製のミシンメーカーなどに多く見られるデザインとなっています。
ちなみにこの頃から脚の色は黒だけに限らず、ブラウンなどの塗装を施してあるものも作られるようになりました。
網目状のものよりも装飾がすっきりしているので、どんなインテリアにもシンプルに合わせやすいのがこのタイプの魅力です。ちなみに先ほどの網目状のものよりも比較的に手頃で入手できるのも嬉しいポイントですよ。
基本的な脚のデザインはこの通りですが、さりげなくワンポイントになる次のことについても、チェックしておくと選ぶのがさらに楽しくなりますよ。
個性の出るメーカーロゴやエンブレムにも注目
さりげないですが、脚の正面に入ったロゴや側面のエンブレムも、アンティークミシンを楽しめるポイントの一つです。定番の「Singer」以外にも、今は無き競合メーカーが数多く存在しており、そのメーカーの数だけ色んなマークの入ったアンティークミシンを見ることができます。
また、網目脚タイプのミシンに入っている、脚の側面の「エンブレム」も注目してほしいポイントです。お好みのエンブレムのデザインから選ぶのも、アンティークミシンの楽しみ方の一つですよ。
アンティークミシン台を選ぶ前に整理しておきたい5ポイント
ざっくりとアンティークミシンのデザインが分かったところで、次はもっと具体的なポイントに踏み込んで見ていきましょう。”リメイクアンティーク”だからこそチェックしておきたいことをご紹介していきます。
ミシンはそのまま付いている?それとも外されている?
アンティークミシンをリメイクする際、大体の場合は天板ごと外してしまうことが多いため、ミシンは付属していません。ただ実は本体部分もデザインの凝ったものが豊富なので、ミシンとして実用しない場合でも、解体されていない完全品をあえて選ぶ方もいたりします。
外してしまうのも勿体ない気がしてしまいますが、作業台として使う事を考えている場合は邪魔になってしまう可能性があり、正直なところあまりおすすめできません。また、アンティークミシンの本体だけを別で購入する事もできるので、ディスプレイで十分なのであればそちらも選択肢の一つとしておすすめですよ。
脚元はキャスター式か固定式か
ミシン脚元は、キャスター付きか床に固定できるタイプに分かれています。主にキャスター付きは家庭用、固定式は工業用として作られていたものです。キャスター付きは床移動の際に動かしやすいメリットがありますが、物によっては床にキズをつけてしまう可能性があります。
このようにキャスターカバーが付属しているものもありますが、欠品している場合もあるので注意が必要です。ネットのページに記載が無い場合や、店頭で見ても付いていない場合は、ショップにきちんと確認してみるのがおすすめですよ。
使おうとしている椅子の高さと合うかどうか
椅子と合わせて使うことを考えている場合は、高さがちょうど良いかどうかも確認しておきましょう。アンティークミシン脚の高さは大体70cm前後のものが多く、そこに天板が付くと73~75cm程度になるものが多いようです。アンティークミシン台を何に使うかにもよりますが、椅子の座面から天板までが40cm前後になるものであれば使いやすいと言われています。
また、椅子の脚とミシンのペダル部分がぶつかってしまう可能性があり、前のめりな姿勢になってしまうことも考えられます。椅子をきちんと前へ引いた時のことも考慮して、なるべく姿勢が崩れないものを合わせるのがおすすめですよ。
黒いアイアンか、もしくはリペイントか
先ほどもご紹介した通り、黒いアイアン脚がアンティークミシンの特徴の一つですが、最近では白などにリペイントされたものもアンティークショップで販売されています。
エレガントなフォルムのおかげでそれほど無骨な印象はそれほどありませんが、よりナチュラルな印象でまとめたい場合はリペイントされているものを選ぶのもおすすめです。また、ご自分でリメイクができれば、最初はそのまま使って後でリペイントする、というような事も良いと思いますよ。
天板の風合いは好みかどうか
脚のデザインだけでなく、アンティークミシン台の印象をさりげなく左右するのが天板の風合いです。リメイクを行っているショップによっても雰囲気が違うため、きちんと気にしておくのが良いと思います。たとえば、キズ一つ無い新品の木材を使用しているものもあれば、アンティークにも相性の良い古材を組み合わせているものもあります。実際にどのように印象が違うのか見てみましょう。
新材の天板を使った場合
アイアンが錆びついていない場合や、お部屋のインテリアがアンティークを基調としていないのであれば、こちらの方が相性良く使えるかもしれません。また、周辺のインテリアと木の色味を合わせれば、統一感がより増しますよ。
古材を使った場合
脚に錆びが入っている場合や、木製家具を積極的に取り入れているのであれば、古材の天板のものがおすすめです。ただ、質感によっても印象が分かれるので、気にして選ぶのが良いと思います。たとえば使い込まれた木肌があらわになっているものであればジャンクな雰囲気に、着色やワックスなどを施して表面を整えているものであれば、他の家具との調和が取りやすいはずですよ。
アンティーク家具で囲まれた空間でなくても、天板の合わせ方によっては気にせず取り入れることができます。アイアンの質感や周辺のインテリアを踏まえた上で、バランスが取りやすいものを選ぶのが良いと思いますよ。
リメイク品を買うか、自分でDIYするか
記事の冒頭でも少しお話ししたように、アンティークミシン台は気軽にDIYする事も可能な家具です。自分でできるのかはともかく、アンティークショップでリメイクされたもののメリットとして、クオリティが高いものが手に入ることではないでしょうか。
天板の質はテーブルの印象を大きく左右しますが、自分で作るかリメイク品を買うかの判断は、まず専門的な技術や工具を必要とするかどうかで分かれます。たとえば天板の縁を削って線を入れたりする「モール」などは、テーブルの雰囲気がぐっと上品になりますが、初心者ではなかなか難しいのが現実です。
ただ、ショップによっては質良く見せる方法をアドバイスしてくれる場合があります。諦めず相談してみるのも手ですよ。
以上の点を選ぶ前にイメージしながら、実は活用アイディアについて見ていくことにしましょう。
色々使える!アンティークミシン台のインテリア活用例
飾り台やちょっとした作業用のテーブルに、色々活用可能なアンティークミシン台。活用例をまとめてみました。
デスク代わりの小さなワークスペースに
小さなワークスペースとして、アンティークミシン台を取り入れた例です。家事や趣味に専用スペースをわざわざ持つのはなんとなく躊躇してしまいますが、サイズ的にもあまり気にせず取り入れられることができますね。
また、リビングやダイニングに置く場合は、以下のような活かし方も踏まえられるとより良いかもしれません。
リビングダイニングのコンソールテーブルに
リビングやダイニングなどの人が集まる空間では、「視線を集めるポイント」がひとつあれば、生活感をカバーすることもできます。そんなシーンでの飾り台にアンティークミシン台を使えば、お部屋の雰囲気も一気に増すはずです。
飾り台の用途のみでの購入に迷いがある方は、少し欲張って広めの天板を選んでコンソールテーブル兼作業スペースとして活かすのもおすすめですよ。
キッチンの作業台に
効率よく使うためにも広い方が嬉しいキッチン台ですが、物を並べているうちに仕込みのスペースが無いなんて事もよくありますよね。そんなシーンの助っ人として、ミシン台を取り入れてみてはどうでしょうか。仕込んだ材料を一時的に逃がしておく台としてはもちろん、盛り付ける器などをスタンバイさせておくのも良いでしょう。また、足下にも物を置くスペースがあるので、常温の野菜などをかごに入れておいておいたりする事もできますね。
雰囲気の良い家具を取り入れることは、日々当たり前に繰り返す家事のテンションも上げてくれるはずですよ。
2人用のダイニングテーブルにも
このように、2人用のダイニングテーブルとして使う方法もあります。二人暮らしをはじめるタイミングでは、部屋の広さなどの兼ね合いでダイニングテーブルを諦めることも多いですよね。大体奥行が80㎝を越える天板であれば、対面のテーブルとして使うことも可能です。
また、奥行が狭い横長の天板であれば、カフェの横並び席のように活かすことも。このように座る人数とそれに合わせたサイズさえ把握していれば、さまざまな使い方ができますよ。
実際のところどれくらい?アンティークミシン台の価格
サイズ的には手軽に取り入れられそうなところですが、気になるのが価格ですよね。これまでの話を踏まえ、「リメイク品」と「アンティークミシン(リメイク無し)」と「脚のみ」の3パターンで、価格を洗い出してみました。価格の面で、リメイク品を買うか、DIYするかまだ決めかねている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
Singerミシン(網目脚)の場合
■リメイク品の場合…54,000円~87,000円程度
天板の材質や大きさによって価格が変わります。また、天板の長さに合わせてミシン脚を分解し、再度接合する場合は値段が少し高くなります。
■ミシン本体付きの場合…68,000円~100,000円程度
シリーズや状態によって値段が変わるようです。または動作品の場合値段が少し高めになる傾向があります。
■脚だけの場合…32,000円~38,000円程度
脚だけの場合はこの範囲の価格で手に入れることが可能なようです。あとは天板の価格がここにプラスされることになるので、計算して納得いく方を選ぶと良いでしょう。
直線脚の場合
■リメイク品の場合…15,000円~27,000円程度
日本製のものは比較的に安く入手することができます。先ほどと同様、組み合わせる天板の種類によって価格が変化します。
■ミシン本体付きの場合…5,000円~85,000円程度
「Brother」など、脚が海外ブランドのものだと価格が高いようです。オークションであれば安く入手できますが、未修理のものが多いことを理解しておきましょう。
■脚だけの場合…5,000円~10,000円
オークションなどでかなり安く入手することが可能です。ただし、脚が老朽化していないかなど、実用に関して不安が残りますので、極力事前にチェックすることをおすすめします。
多くのアンティークショップで売約済みになると価格を伏せてしまうため、相場が把握しにくいですが、大体はこのようになっております。王道のシンガーは他のメーカーに比べやはり高い傾向にあるようですね。
アンティークミシン台のお手入れ方法は?
“リメイクアンティーク” でも、お手入れに関してそれほど難しく考える必要はありません。簡単に言えば、木と鉄のそれぞれに合わせたお手入れを行えばOKです。
天板部分のお手入れは基本的に乾拭きで
何かをこぼしたりしない限り、通常のお手入れは乾拭きで十分です。もし水拭きを行う場合でも、固く絞った上で行うようにしましょう。
ワックスの塗り直しは、「表面が乾いてきたかな?」と感じたタイミングで遅くありません。ワックスを少量取って、柔らかい布で拭き取ります。車のワックスを拭き取る時と同じように、ゴシゴシと力を入れずに何度も布を往復させればピカピカになりますよ。
脚部分にも時々ワックスを
基本的に脚部分もほこり取りなどで掃除をしてあげるだけでOKです。表面が乾いてきたタイミングでワックスを塗布すれば、サビ予防にもなります。あえて錆びさせたい場合は、ワックスを塗らずに放っておけば自然と変化するはずですよ。
最後に
憧れはあっても、そのままではなかなか使い道が無いアンティークミシン。ちょっと視点を変えるだけで私たちにとっても親しみある家具に生まれ変わります。「どこから楽しもうかな?」とライフスタイルを描くような気持ちで、アンティークミシンを長い目で捉えてみるのも良いかもしれませんね。