アンティーク家具の魅力というと、どんなことがあるでしょう。
優れた素材や作り、美しい職人技など、さまざまなポイントがありますが、アンティーク家具に詳しくない人にとっては、魅力と言われてもピンとこないかもしれませんね。アンティーク家具は高価なものも多く、「実際何がそんなに良いの?」と疑問を抱いている方も少なくないかと思います。
そこで今回は、アンティーク家具屋の視点から、アンティーク家具の魅力についてあらためて整理してみました。まずは、アンティーク家具の魅力をポイントごとに紹介してから、反対に、デメリットや間違ったイメージなどについてもお話しします。
これからアンティーク家具に挑戦しようかな?と考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
アンティーク家具の魅力とは?アンティークならではの良さを深掘り!
アンティーク家具の魅力は、大きく次の8点があります。アンティーク家具屋として、知ってほしい点をまとめましたので、ぜひ目を通してみてください。
アンティーク家具の魅力1.最高級の木材を贅沢に使用
アンティーク家具は、木目の美しい高級材が贅沢に使われているのが特徴です。
例えば、西洋アンティーク家具でよく目にするマホガニー材やローズウッド材は、まさに今では手に入れることが難しい高級木材。これらは古くから高級家具や内装材などに好んで使われきた歴史があり、乱伐によって数が激減。現在では絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約で取引が制限されています。
そのため、マホガニー材やローズウッド材製の美しい家具は、新たに制作することができず、アンティーク家具でしか手に入れることができません。
ちなみに、現在も流通しているマホガニー材やローズウッド材もありますが、これらは、マホガニーやローズウッドと似た木肌の樹木を「〇〇マホガニー」などと称した代替品。古い時代のマホガニー材やローズウッド材とは、厳密には異なるものです。そんな経緯もあって、希少木材が使われたアンティーク家具の価値は年々高まっています。
また、アンティーク家具は、マホガニー材やローズウッド材のような入手困難の木材に限らず、オーク材やウォールナット材、チーク材、欅材、唐木材など、多くの上質な木材が贅沢に使われています。
今では、高価になりすぎてしまう作りのものが、アンティーク家具にはザラにあるんです。そのため、アンティーク家具は、一流の木製家具が欲しい方にうってつけの選択肢と言えます。
アンティーク家具の魅力2.美しい木目にこだわった作り
アンティーク家具は、木目の美しさも魅力です。特に上質なものは、天然木の突き板を使って丁寧に作り込まれており、無垢材製の家具以上に整った美しい木目が楽しめます。
突き板とは、木を薄くスライスしたシートのこと。突き板製の家具は、芯材の表面に突き板を張って作られています。そのため、突き板は無垢材よりも軽く、変形しにくく、薄くても強度が高いのが魅力です。
ただ、現代では、安っぽい薄い突き板を張った家具や木目調のプリントシートを貼った合板の家具が、安価な量産品として多数流通しているため、「突き板=粗悪品」、そして「無垢材の家具=優れたもの」というイメージが定着してしまいました。
しかし実際は、無垢材だから、突き板だから、良い・悪いと決められるものではありません。
上質な突き板の家具は、天然木の分厚い突き板が使われていて、いわゆる無垢材のような木の温かい質感がたっぷりと感じられます。また、突き板だと美しい木目を厳選して、自由に組み合わせることができ、無垢材よりもさらに整った外観のものが多いです。
反対に無垢材製の家具は、割れや変形が起きやすい、重いなどのデメリットもあります。また、一枚板の無垢材は木目が美しいですが、値段が非常に高価。無垢材の集成材だと価格は抑えられますが、天然木のダイナミックな木目は楽しめません。
このように、無垢材と突き板は、どちらの種類かというよりは、元々の素材や作りのクオリティによって、良し悪しが左右されるんです。
アンティーク家具には、突き板と無垢材、どちらの家具もあります。突き板の家具は、北欧ヴィンテージ家具をはじめ、イギリス・フランス・日本などのアンティーク家具にも豊富にあるんですよ。前章でご紹介したような上質な木材を使って、素晴らしい職人技を駆使して制作されています。
現代物の高級家具にも美しい突き板の家具はありますが、クオリティの高さ、価格のお手頃さは、アンティーク家具ならではの魅力です。
アンティーク家具の魅力3.職人技が光る装飾
アンティーク家具は、凝った装飾も大きな魅力です。特にモダンデザインが流行する以前の西洋アンティーク家具、和製アンティーク家具は、デコラティブな美しい装飾細工が見所と言えます。
西洋アンティーク家具は、生き生きとした草花のレリーフや精巧な象嵌細工、S字を描いたしなやかな猫脚、金彩や絵付け装飾など、優雅で華やかな装飾美が楽しめます。
特に最高級の西洋アンティーク家具には、顔となる部分に天然木の美しい突き板が用いられ、天板から脚まで贅沢なレリーフや象嵌細工などで彩られています。実用というよりも、観賞や室内装飾に重きをおいた、ゴージャスなデザインです。
和製アンティーク家具で、特に贅沢な職人技が見られるのは、和箪笥。財力のある商家や船乗りたちが作らせた帳場箪笥や船箪笥、茶棚、水屋箪笥などは、一見の価値ありです。欅材などで作られた頑丈な木地に、美しい漆塗りが施され、さらに鉄金具や蒔絵、螺鈿などで煌びやかに飾られています。
アンティークの帳場箪笥や船箪笥は、金庫として使われていたため、カラクリにも凝っているものも多数。見るだけでなく、実際に使って伝統的な作りを楽しめます。
職人ハンドメイドによる装飾は、今では再現が難しい、もしくは非常に手間がかかりすぎるものが大半です。新品で同じクオリティのものを制作するとなると、アンティーク家具の2〜3倍の価格になってしまいます。
これほどまでに職人技が詰まった個性の光る家具を、お手頃な価格で手に入れられるのは、アンティーク家具ならではなんです。
アンティーク家具の魅力4.深みのある表情で上質なインテリアに
アンティーク家具は、味わい深い経年変化が楽しめるのも大きな魅力。はじめにお話しした通り、アンティーク家具は高級木材で作られているだけあって、使い込むほどに木肌が艶やかに美しく変化しています。
すでに何十年と使い込まれたアンティーク家具は、細かい傷やシミ、角の丸みなどが豊かな表情を作り出しています。特に高級材で作られた上質なアンティーク家具は、表情に深みが増して、見事な風格を漂わせているんですよね。
そのため、アンティーク家具は、部屋に取り入れるだけで、その空間をより上質に、雰囲気たっぷりに演出してくれます。
ロココ調やカントリー調、和風、大正ロマン風、ミッドセンチュリーテイストなどの、アンティーク・ヴィンテージインテリアを楽しんだり、モダンなインテリアのアクセントに取り入れるのにぴったりです。ありふれたインテリアではなく、記憶に残るような印象的な空間づくりができますよ。
アンティーク家具の魅力5.希少価値の高い一点もの
アンティーク家具は、同じものがまたとない一点もの。職人がオーダーメイドで手作りしたアンティーク家具はもちろん、ミッドセンチュリー期くらいに多く作られたヴィンテージ家具でも、木目や色、状態まで全く同一の家具というのは存在しません。唯一無二という特別感があって、自分だけのユニークなインテリアを楽しめます。
また「好みのアンティーク家具にタイミングよく出会えた!」という運命的な体験も、一点もののアンティーク家具ならではの魅力。
もし、タイミングを逃していたら…、他の誰かが買っていたら…、前の持ち主が売りに出さずに処分していたら…、そんな少しのズレで、アンティーク家具があなたのもとに来ることはなかったんです。こんなご縁を感じる出会いもアンティーク家具ならではの魅力です。
アンティーク家具の魅力6.時代・地域性を反映した個性豊かなデザイン
アンティーク家具は、古い時代性や地域性を色濃く反映したデザインも注目すべきポイントです。
例えば、煌びやかな宮廷文化を映したようなロココ様式のアンティーク家具や、田舎町で使われていた素朴でナチュラルなカントリー調アンティーク家具、はたまた、日本で住まいの西洋化に伴って制作された大正ロマンなアンティーク家具など、バラエティに富んだデザインがあります。どんな時代に、どんな場所で使われていたかが、その家具の個性として現れているんです。
もっと細かい例を挙げると、日本のアンティーク衣装箪笥も、一見どれも似たようなデザインに見えますが、作られた地域によってデザインが違います。金具のデザインに着目してみると、その違いがわかりやすいです。
例えば、仙台地方で作られたアンティーク仙台箪笥には、「百花の王」と称される牡丹の花などが彫られた、威厳漂う金具が付けられています。仙台箪笥は、仙台藩の武士たちが内職として製作していたとされ、まるで作り手の豪勢な気質が現れているようです。
一方、山形県のアンティーク米沢箪笥には、桜や蝶などが彫られた上品な丸い錠前金具が付けられています。米沢地方は美しい米沢織が発展していたため、その上質な織物にふさわしい、優雅な衣装箪笥が多く製作されました。このようにアンティーク和箪笥は、地域の文化や歴史を反映して、独自の発展を遂げています。
つまり、アンティーク家具のデザインには、作られた土地の文化や当時の流行などが現れていて、知れば知るほど奥が深い世界。そのデザインから、アンティーク家具に秘められたストーリーを調べたり、想像したりするのも面白いところです。
詳しいことまではわからなくても、フランスの田舎町で使われていたカップボード、明治時代に仙台で使われていた箪笥などとわかるだけで、さらにアンティーク家具に対する思い入れが増してきませんか?アンティーク家具は、そこに秘められた歴史も魅力の一つと言えます。
アンティーク家具の魅力7.リペアで美しく再生可能
アンティーク家具は、職人がリペアすれば、どんな状態からでも再生が可能です。到底使えそうもないボロボロのアンティーク家具でも、丁寧に洗浄して、傷んだ部分を補修すれば、キレイで高品質な状態に復活します。
現代物の大量生産の家具の場合、アンティーク家具のようにダメージを修復することが難しく、修理するなら部材を丸ごと交換したり、むしろ処分して買い換えた方が経済的だったりします。したがって、アンティーク家具のように使い継ぐことが難しいです。
アンティーク家具は、もともとの素材が良く、アナログな工法で作られていて、修理すれば何度でも美しく蘇ります。そして、一度きちんとリペアされた家具は、特別なお手入れなしに使い続けられます。この耐久性の高さは、アンティーク家具ならではの魅力です。
アンティーク家具の魅力8.廃ることのない価値
アンティーク家具は、希少価値の高い上質な素材を使って、職人がハンドメイドで制作しており、骨董的・工芸的価値の高い家具です。流行に左右されず、修復で何度でも蘇るため、時代が移り変わっても価格が下がりにくいと言えます。
これと真逆なのが、現代物の中古家具。中古家具は、購入してすぐが最も価値が高く、使用感が出たり、新たなモデルが出たりすると、すぐに需要が下がってしまいます。つまり、購入して時が経つとともに、価値が下がってしまうものがほとんどです。
そのため、もし将来、住まいやライフスタイルの変化などによって、アンティーク家具を手放すことになったとしても、ある程度の価格で売ることができます。状態や家具の種類によっては、価格が下がってしまうかもしれませんが、一般的な中古家具のように処分費を払って廃棄するなんてことにはなりません。
特に、骨董品として非常に優れた価値の家具であれば、さらに価値が高まることもあり得ます。廃ることのない価値、これもアンティーク家具ならではの魅力です。
アンティーク家具のデメリットは?アンティーク家具の正しい知識を身につけよう
さて、アンティーク家具の魅力についてお話ししましたが「でも、アンティーク家具って良いことばかりじゃないでしょう?」と疑問に感じている方も多いかもしれませんね。その通り、もちろん良いことばかりではありません。
ここからは、アンティーク家具のデメリットや、よくある勘違いをわかりやすく解説したいと思います。アンティーク家具があなたに合う家具かどうか、判断する材料としてご活用ください。
アンティーク家具は古いユーズド家具。傷や汚れがあるのが普通
アンティーク家具は、これまで何十年と使われてきた家具。コンディションが良いとされているアンティーク家具でも、細かい傷や汚れはあるのが普通です。そのため、新品のように傷や汚れのない家具が欲しい方には、アンティーク家具は向いていません。
「アンティークのようなクラシカルなデザインが好き。でも古い家具は苦手」という方は、新品のアンティーク調家具から好みの家具を探す方がおすすめですよ。
アンティーク家具のコンディションは、店舗やアイテムによってさまざまです。
当店では、大きな傷や汚れなど味わいとは言えないダメージは取り除き、しっかりとリペアしたアンティーク家具を販売していますが、低価格のアンティークショップやオークションサイトなどでは、ほとんど手を入れていないアンティーク家具を販売しています。
そういったショップのアンティーク家具は、DIYで調整できる方や、アンティークの古い味わいが特に好きな方向けです。引き出しや扉が開けづらい、棚の中が汚れている、脚がガタついている、なんてことはごく一般的にあります。
そのため、アンティーク家具の中でも、できるだけキレイで高品質なものが欲しいという方は、リペアにしっかり力を入れているアンティーク家具屋から購入することが鉄則です。
家具の状態に関して不安なことがあれば、購入前に積極的に問い合わせて、納得できる品質かどうか確認しましょう。きちんとしたアンティーク家具屋であれば、実際に状態を再確認したり、追加の画像を撮影したりして、しっかり疑問を解消してくれますよ。
また、アンティーク家具屋によっては、理由にかかわらず、商品到着後の返品・キャンセルを受け付けている店舗もあります。特にコンディションに不安がある方は、そういった店舗から購入すると安心です。
アンティーク家具は一点もの。理想のものに出会うまでに時間がかかるかも
アンティーク家具は、一点ものという特別感が魅力でもありますが、逆にいうと、理想にぴったりのアンティーク家具を探すのに苦労するのも事実です。
新品の家具であれば、同じデザインに対して素材違いや色違い、サイズ違いなどのバリエーションがありますし、在庫も豊富にあります。しかしながら、アンティーク家具は一つのデザインが一点のみしかないので、デザインもサイズも理想にぴったりで、きちんと在庫もある!というアイテムになかなか出会いえないんですよね。
理想のアンティーク家具と出会うには、やはり、できる限りたくさんの商品を見て回るしかありません。オンラインショップなども活用しながら、気長に多くのショップをチェックするのがおすすめです。
ラフジュ工房でも、未リペアのものも含めて約8,000点のアンティーク家具を販売していて、毎日新着商品を更新しています。
また、売約済みのアンティーク家具の再現製作や、販売中のアンティーク家具のカスタム・オーダーも受け付けています。売り切れだったアンティーク家具でも諦めずに購入できますし、「デザインは好きだけど、サイズが理想と違う」といったアンティーク家具を自分好みにリメイクすることもできますよ。詳しくは、通販サイトをチェックしてみてくださいね。
アンティーク家具は完成品が届く。大型家具はサイズや重量に注意
アンティーク家具は、現代物の家具に多い組み立て式の家具と違って、はじめから完成品が届きます。そのため、組み立てる必要がないというメリットがある反面、家具のサイズによっては搬入できない場合があるのがデメリットです。
特に大型のソファやキャビネットなどは、狭い階段や廊下、ドアなどに引っかかって、部屋までたどり着けないことがあります。上下段などに分解できるものもありますが、それでもなかなかのサイズです。
通常ルートで搬入できなかった場合、窓から吊り上げて搬入することが大半ですが、そうすると、さらに費用がかさんでしまいます。
また、アンティーク家具は、すべて無垢材で作られたものがほとんど。そのため、大型家具だと重量が100kgを超えるものもあります。配送時は、プロの家財業者が指定の場所に設置してくれますが、その後は簡単には移動できません。模様替えや引越しの際は要注意です。
また、床材が柔らかい場合は、家具の重みで床が傷がついてしまう恐れもあります。賃貸の場合は、あらかじめ絨毯を敷いておくなど対策しておくと安心です。
アンティーク家具はお手入れが大変?きちんとリペアされたものならお手入れ不要
アンティーク家具は、お手入れが大変というイメージがあるかもしれませんが、実はそれは間違いです。一度アンティークショップでリペアされたアンティーク家具は、面倒なお手入れは必要ありません。ホコリなどが気になった時に、乾いた布で払うくらいのお手入れだけでOKです。
オイルフィニッシュや蜜蝋ワックス仕上げの家具は、定期的なお手入れを推奨している店舗もありますが、基本的には不要です。たしかにお手入れすると少々ツヤが増しますが、しなかったからと言ってコンディションが悪くなることはありません。
そもそも、アンティーク家具は、これまで100年もの長い間使われてきた家具。そんなに頻繁なお手入れが必要だったら、現代まで残っていないでしょう。ほったらかしでも問題ないからこそ、価値あるアンティーク家具として、現代でも重宝されているんです。
現代物の家具と同じように使って大丈夫ですので、肩肘張らずにアンティーク家具を楽しんでいただければと思います。
アンティーク家具はけっこう高級…でもコスパは抜群です!
アンティーク家具は、現代物の大量生産の家具と比べると、価格が高いイメージがあるかと思います。たしかに高級と言えば高級ですが、その品質の高さを考えると、決して高すぎる家具ではないんですよ。
アンティーク家具は、1章でお話ししたとおり、優れた素材・作り・装飾・デザインなどに加えて、骨董的・工芸的価値のある家具です。もし、現代で同じ品質の家具を一から制作するとなると、何倍もの価格になってしまいますし、素材などの制限があって、厳密には再現できない部分もあります。
今では手に入らない家具で、品質も人気も高い家具なので、これだけの値段がついているんです。
加えて、アンティーク家具は、一度リペアされたものであれば、特別なメンテナンスなしにこれから先も何十年と使い続けられます。まさに、一生ものの家具ですし、もっと言えば次の世代まで使い継ぐことだってできます。高い耐久性と家具の持つ価値を考えれば、コスパ抜群ですよ。
ぜひ、価格だけを比較せずに、長い目で見てどちらがいいか、判断してみてくださいね。
最後に
アンティーク家具には、数多くの魅力が秘められています。作り手・使い手の思いや歴史が詰まった上質な家具です。ぜひ、アンティーク家具の良し悪しをしっかり踏まえたうえで、自分にぴったりの家具を選んでみてくださいね。