火を灯すための道具であるランタン。中でもアンティークのランタンは、その幻想的な佇まいが魅力です。
実はアンティークのランタンとひとことで言っても、いくつか異なる種類があるんです。自分の求めるイメージや活用法から選ぶことが、
あなたにぴったりのアンティークランタンを手に入れるポイントです。
そこで今回はアンティークランタンの種類を、デザインや活用方法と共にご紹介していきます。あなたのお部屋で活躍するアンティークのランタンを、一緒に探してみましょう。
アンティークのランタンとは
まずはアンティークのランタンの種類や魅力など、全体像をつかむところから始めましょう。
そもそもランタンって何か分からない、ランプと何が違うの?…という方は最後に付録として解説を載せていますので、そちらをお読みになってくださいね。
アンティークランタンの種類
アンティークランタンには使い道に応じて2つのタイプが存在します。それは室内で使う固定型と、持ち運びができるタイプです。用途やお好みに合わせて選んでください。
小振りな手提げ型
インテリアのアクセントに使いやすい小振りなランタンです。室内や屋外の間接照明に使うほか、ディスプレイだけでも使用することができます。
また手持ち型はデザインがクラシカルなものからカジュアルなものまで、幅広いのが特徴です。
電気で光る、室内固定型
光源を電気とし、室内で固定して使用するタイプです。天井から吊り下げるペンダント型、壁に取り付けるブラケット型などがあります。「ランタン型シャンデリア」と呼ばれることもあります。
屋外で使用することはできませんが、ガラスと金属で光源の周囲を覆っている形はまさにランタンです。デザインはクラシカルなものが多く、優美な雰囲気が楽しめます。
アンティークランタンならではの魅力
手提げ型・室内固定型のどちらも、アンティークのデザインを踏襲した新品のランタンが今も作られています。そんな中でアンティークのランタンだけの魅力とは何なのでしょうか。
アンティークの手提げ型ランタンの魅力は「味」と「想像」
アンティークの魅力のひとつが、時代を経た味わいや使用感ですが、手提げ型のランタンは屋外で使用されることが多いので、家具以上に使用感が出ています。以前の持ち主が、日々使っていた証がしっかりと表れています。誰かが使っていたものを自分がバトンタッチした、それを実感しやすいのが大きな魅力です。
また中には用途がぱっと見ただけでは分からない、ユニークなデザインのものもあります。例えば赤い色が特徴的な手信号ランプ。合図灯とも呼ばれ、道路や鉄道工事現場などで合図を出すために使用されていました。火をともして赤い警告灯として使っていたんです。
普通は家では使われないようなものをインテリアに取り入れる、これもアンティークならではの楽しみ方ですよね。
アンティークの室内固定型ランタンは、凝ったデザインが魅力
もちろんシンプルなデザインのものもありますが、アンティークの室内固定型ランタンは、凝った装飾の施されたものが多いのです。高級感のある装飾は新品では手に入りません。
美しい装飾で飾られていながらも、直線的な構造のお陰ですっきりとした印象のランタンは、男性のお部屋にも取り入れやすいです。クラシカルなインテリアが好きだけれど、彼がシャンデリア嫌い…なんて女性はランタンタイプの照明を提案してみてはいかがでしょうか。
アンティークのランタンとは何か、概要が分かってきたところで、どんなデザインのものがあるのか具体的に見ていきましょう。
デザインからみるアンティークランタン
実際にどんなデザインのランタンがあるのでしょうか。デザインは大きく分けると2種類あります。簡素なつくりの実用的なタイプと、真鍮とガラスでできたクラシカルなタイプです。
実用的な、シンプルデザイン
屋外で使われる手提げ型に多く見られるカジュアルなデザインです。光る仕組みによって形も雰囲気も大きく変わり、オイルによって光る「オイルランタン型」と、中にろうそくやオイルランプを入れる「ケース型」の2種類に分けることができます。
オイルランタン型
キャンプで使用するような、手持ち型ランタンです。ホヤ(※)というガラスパーツがオイルタンクの上についています。こういったランタンをつくるメーカーは登山用品メーカーとして、今なお続いていることが多いのです。コレクターがいるため高値で取引されることも。同一ブランド内でも時代や、民間用か軍用かによってデザインが異なります。軍用は民間用に比べて大振りで無骨な雰囲気がたいへん人気です。
代表的なメーカーとしてはColeman(コールマン)社、DITEZ(ディーツ)社、Sears(シアーズ)社、The-Nier-Feuerhand(ザ・ニャー・フュアーハンド)社などがあります。
ケース型
中にろうそくやオイルランプを入れて使用するタイプで、ランタンは風よけのドームの役割を果たします。先程のオイルランタンに比べてつくりが簡素なので、よりクラシカルな印象です。
持ち手の部分がオイルランタンでは大きいですが、ケース型は小さな丸いわっかやフックが引っ掛け口として付いることが多く、手で直接持つのでは無く、棒などに固定して使用していたことを伺わせます。
アンティークらしいエレガントなデザイン
室内で使用する固定型ランタンによく見られるデザインで、細工の施された真鍮などの金属を使用した、上品なデザインです。
シャンデリアほど甘すぎない、固定型
室内固定型のランタンは、同じくお部屋をクラシカルに演出してくれるシャンデリアと比べると、重厚過ぎません。その秘密はシャンデリアに比べパーツが細々としていないことと、大きさがコンパクトなこと。それによって軽やかな印象が生まれるのです。シャンデリアではしっくりこないけれど、お部屋の照明に雰囲気が欲しい方は検討されてみてはいかがでしょう。
またシャンデリアと比べ、掃除がしやすいのも嬉しいところです。
クラシカルな手提げ型なら、ミサ用
真鍮の細工が美しいクラシカルなデザインは、手提げ型だとほとんどありません。
ほぼ唯一の例外が、教会で使われたミサ用のランタン。19世紀のものが多く、カテドラルという形をしています。カテドラルとは大聖堂のこと。大聖堂の凝った細工と荘厳な雰囲気が再現されています。聖堂はゴシック様式で建てられたものが多いため、ミサ用のランタンにもゴシック特有の三つ葉文様がみられたり…細かい細工をみるだけでも楽しめます。
ガラスの細工を楽しむ
クラシカルなデザインのアンティークのランタン照明のガラス面に、彫ったような模様が入っていることがあります。
これはグラヴィールという手法。似たガラス装飾でエッチングがありますが、エッチングは表面上に線で絵を描く感じ。グラヴィールはガラスを彫るように模様を描いていきますので、灯りををともすとカットの陰影が映し出され、より華やかな空間を演出してくれます。
直線を放射状に広げた花のような模様が多いですが、これは花ではなく星を象徴するマークなのだそうですよ。
欲しいアンティークランタンの雰囲気がつかめてきましたか。次は実際にアンティークランタンを選ぶ際や使う際に押さえておきたいポイントを、用途別にご紹介していきますよ。
アンティークランタンの上手な選び方と使い方
アンティークランタンの主な活用法は、照明やディスプレイとして使用することです。まずはどちらの用途にランタンを使うのかを決め、目的に応じて最適なランタンを探していきましょう。
照明用ランタンを選ぶコツ
ランタンの光はたき火のように、どこか自分の内側に入り込ませてくれる力があります。お茶やリラックスする時間を素敵に演出してくれること間違い無しです。
照明としてアンティークのランタンを使う場合は、どの程度の範囲を照らしたいのか、そして何から光源を採るのかを考えましょう。
どれぐらいの範囲を照らしたいか
室内に置いて、広範囲を明るくしたいならばペンダントライトが最適です。
ただし室内固定型のペンダントライトは1灯のものが多く、まれに見られる2・3・5灯のものでも、ひと部屋の照明をそれひとつでまかなうには不十分なことが多いです。
明るさの目安としては1畳の空間に対して、40Wくらいの明るさが必要であるといわれています。ランタン型の照明では25~40Wの電球の使用が推奨されることが多いので、そこから逆算し、明るさが足りない場合は、複数の照明を組み合わせるのがおすすめです。
間接照明として小振りなランタンが使いたいなら、演出したい印象で決めましょう。あたたかみが欲しいなら手提げ式のランタンを、端正さが欲しいならブラケット型を選ぶといいでしょう。
どうやって光らせるのか
ペンダント・ブラケット型は室内電源から電気を取ることになりますが、手持ち型の場合は3つ選択肢があります。まずは固定型と同様に電気を取り込むこと。次にろうそくを使うことが考えられます。ろうそく型LEDを使って手軽に楽しむこともできますね(※)3つ目はランタン自体に火をともすという方法。ランタンの状態さえよければ、現代でも点火して使うことができます。
※ろうそく型LEDを入れて使用する場合は、「ディスプレイ用ランタンを選ぶコツ」も参考になさってください。
アンティークランタンを照明として使う際のポイント
ランタンを照明として使う場合は飾るだけの場合と異なり、実用的な面が気になりますよね。ランタン照明を使う場合の工夫や注意点を、ここで確認しておきましょう。
室内固定型のランタン照明を使う
固定型のランタンを使う場合は明るさに、少し気を配ることをおすすめします。ランタン型の照明は、シャンデリアのように複数灯で照らさず、電球がひとつという作りが多いです。そしてほとんどのランタンがクリアガラスを使っています。あまりに明るい電球を入れてしまうと、ランタンのガラス面から電球の光が直接視界に入り、目にうるさい印象に。
最大で60Wの明るさの電球が使用できるという場合が多いですが、他の照明も補助的に使用しながら、1灯の明るさを25~40W程度に抑えて使うのがおすすめです。
火がともるランタンを使う
意外と手軽なオイルランタン
オイルランタンの中には、今もオイルを入れて使えるものがあります。火をともせばキャンプのような特別な気分が味わえます。お子様がいらしたら、きっと喜んでくれるはず。
オイルランタンの消耗品は芯とオイル。オイルは通常の灯油を使用してもいいですし、オイルランタン用の匂いが少ないオイルも製造されてます。芯も専用オイルもネットで簡単に購入が可能ですよ。
実際の火のともし方
それでは、火をともす手順を見てみましょう。まず油壷の栓を開け、オイルを8分目まで注ぎます。新しい芯を使う場合は30分ほどそのままにして、芯にオイルを染み込ませましょう。次にレバーを下げてホヤを上げます。すると点火口が現れますので、芯に点火した後ホヤを下します。
火の強さは調節つまみで芯を上下させ、変更することが可能です。芯を出し過ぎるススが出やすくなりますので、芯の頭はあまり出さないのがポイントです。なお炎が消えるまで芯を下げるか、ホヤの上部から息を吹きかけると、火を消すことができます。炎を消した後しばらく熱いので、ホヤは触らないようにしてください。
メンテナンスは?
基本的なメンテナンスは簡単。ホヤの汚れやほこりをやわらかい布やティッシュで拭くだけです。その際に芯とその周辺には触れないようにしましょう。芯に水分がつくときれいな炎が上がらなくなります。ランタンのホヤは、レバーを使って引き上げ、傾ければ取り外すことができます。後は必要に応じてオイルや芯の補充をすれば大丈夫です。
なおメンテナンスを簡単にするために使用時に気を付けることは、燃料を絶やさないことです。オイルが無くなってしまうと芯自体が燃え始め、芯の寿命が短くなってしまいます。
火のつかないランタンを再生させる
昔はろうそくを入れて使用していた、あるいはオイルランタンとしての機能が壊れてしまっているランタンでも照明として使えます。その方法をいくつかご紹介します。
昔ながらにろうそくを入れて
ランタンの中にろうそくを設置します。日常的にキャンドルを取り入れていらっしゃる方も、ランタンに入れて使うことにより、火が消えにくいといったメリットを感じることができます。固定台が残っている場合は、そのままろうそくを挿して使うことができます。
そもそも火を使うのが嫌だという方は、ろうそく型のLEDライトを入れて使用するのがおすすめ。様々な大きさのものが売られていますので、色々なランタンに対応が可能です。ろうそく型LEDを入れたい場合は先ほどもお話ししたように、購入前にランタンの中に部品が残っていないか確認するのを、忘れないでくださいね。
DIYで電気をとおす
電球と、電球を入れ込むソケット、コンセントつきのコード。この3つをランタンに設置できれば、ランタンの中で電球を光らせることができます。ランタンの下か上に、ソケットと同じ直径の穴を開けてソケットを固定できれば、後はそこに電球とコンセントを接続するだけです。
穴が開けやすいアルミなどの素材でできたランタンなら、加工も比較的しやすいです。改造ですので安全はあくまでも自己責任にはなってしまいますが、DIY好きの方は挑戦してみるといいかもしれません。
ディスプレイ用ランタンを選ぶコツ
ディスプレイに使う場合、候補に挙がるのは手持ち型のランタンになると思います。
普通に飾るだけでも絵になるアンティークランタンですが、ランタンの中に何かを入れて使うという活用法もあります。例えば先ほどご紹介した様にろうそく型LEDを入れたり、何か雑貨を入れてディスプレイするのも素敵ですね。ただしこの場合は、選び方に少しコツがありますよ。
ランタンの中はどうなっているか
アンティークのランタンを開けると、底が平らなものと、中に部品が残っているものがあります。平らなものは多くの場合、ランタンの中にオイルランプを入れて使われていたようです。
一方ろうそくを挿して使用するタイプや、ランタン自体にオイルなどの燃料を入れて使用するタイプは、中にろうそくの固定台や燃焼芯を出す金具が残っている場合が多いです。
底面の部品のせいで中に物が入れられないこともあります。あらかじめ確認しておくと安心ですよ。
開閉方法もチェック
ランタンの開閉の仕方は、形状によって異なります。ガラスなどを使い直線的に光源周りを覆う形状であれば、1面が扉になっていたり、あるいは1面を引き抜いて開閉できる使用になっていることが多いです。他にも光源を丸ガラスで覆っている形状のランタンであれば、ガラス部分をレバーで上げ下げして開閉します。
開閉方法によって中に入れやすいものも変わると思いますので、底面の状態と合わせてチェックしてみてくださいね。
アンティークランタンをディスプレイするヒント
アンティークのランタンはそのまま置いて飾っても、もちろん魅力的ですが、中に何かを入れて飾るのもおすすめです。
例えばアンティークのランタンは、そのシャビーさが植物と相性抜群です。観葉植物を入れてテラリウムのように使ってみましょう。観葉植物の緑がとても映えます。大き目のランタンならば鉢ごと中に入れ込むことも可能です。育てやすいけれど鉢も必要ないからどこに置けばいいか分からない…なんていうエアープランツも、ランタンに入れてしまえば立派な居場所の完成です。
おしゃれなだけでなく、冬の寒さから観葉植物を守る効果も期待できますよ。
その他にも小物類を入れて飾るのも、小さなガラスケースのようで素敵です。ほこりが付きにくいのも嬉しいところ。自由な発想でディスプレイしてみてくださいね。
アンティークランタンの価格は?
最後に、気になるアンティークランタンの価格についてお話したいと思います。
アンティークランタンの価格は、持ち運びができる小振り型と、室内で使う固定型で異なります。おおよその目安をここでご紹介しますので、ランタン選びの際の参考にしてくださいね。
小振りな手提げ型
10,000~80,000円台が相場です。
一般的なオイルランタンですと10,000円台から購入が可能ですが、船用、軍事用またミサ用のランタンなど少し珍しいものや、コレクターが多いメーカーものになりますと価格が高価になります。
室内固定型
40,000~90,000円が平均です。
価格を左右するのは装飾の凝り具合、サイズの大きさなどです。真鍮の彫りやガラス面の装飾が豪華で大振りなものほど、高価な傾向にあります。
まとめ
今回はアンティークのランタンの使い方をご紹介しました。ランタンは、光をともさずとも絵になる魅力があります。
アメリカンカジュアルのようなハードテイストからやわらかいインテリアまで、幅広いインテリアに対応するのも嬉しいポイントです。ぜひみなさんのお家に、取り入れてみてください。
付録:ランタンってなんだろう
ランタンといっても、いったいどんなものを指しているのか、少し分かりにくいかもしれません。そんなモヤモヤをすっきりさせるため、ランタンの定義について簡単に見ていきましょう。
「ランプ」との違いは?
「ランタン」と似たものでは「ランプ」がありますね。実はこの2つに明確な区別はありません。現在では屋外にぶら下げられるものをランタン、卓上用のものをランプと言うことが多いようです。
屋外利用を想定しているランタンは、光源をガラスと金属でしっかりと囲み、風を入れない形状になっています。一方のランプは光源を覆うガラスの上部が空いているなど、風よけの対策があまりなされていません。
人々の生活を支えていた、ランタン
電気が出現するまで、ランタンはもっとも身近な灯りでした。光源はろうそく、オイル、ガスなどを燃やして発生する炎。燃料の種類によって形状が異なります。
また、アンティークランタンには個人宅で使われていたもの以外に、軍や船舶鉄道で使われていたものがあります。屋外使用に対応したものが多いせいか丈夫なものが多く、今なお状態のいいアンティークのランタンが流通しています。