アンティークファンの間でも注目度の高い、ホーロー雑貨。
新しさも感じるけれど、なぜかほっこりなつかしい、そのレトロな感じこそ、アンティーク好きな方たちが注目する理由です。
でも、その古びた味わいも含めて、これから大切に使って行こう思うとき、アンティークの魅力でもあるサビやキズとどうやって付き合って行けばいいのか、お手入れはどうすれば良いのかなど、いろいろと不安になったりしませんか?
そこで、昔から愛され続けるホーローの機能美と、今でもなつかしさを感じる魅力のわけ、さらには、これぞアンティークの美学とも言える“ダメージ”とも上手に付き合うコツなどをじっくりご紹介していきます。アンティークホーロー雑貨を良く知れば、活用するカギが見えてきますよ。
Contents
「おしゃれな」暮らしの必須アイテム、ホーロー雑貨
ホーロー雑貨が置いてある場所って、どんなところでしょうか。
道具にもこだわる人のキッチンに?
インテリアのポイントアイテムとして?
レトロな雰囲気のカフェに?
どれも正解ですよね。“おしゃれな”部屋には必ずホーローがあるといっても言い過ぎではありません。ホーロー雑貨は、それほど身近にあって、今も昔もみんなに愛されているのです。
ホーロー雑貨を探す手がかりは?
ホーロー製品は、上流階級ではない一般の人びとの生活用品として生まれ、広く使われた身近な道具。ありとあらゆるものがある、と言ってしまうのが一番簡単なのですが、その説明ではあまりに雑ですね。では、普段なかなか気づかなさそうなところを中心に、アンティークホーロー雑貨を探す手がかりをご紹介しようと思います。
キーワードは「水まわり」
ホーローには、水やサビに強く、丈夫で割れにくいという特徴があります。昔は、水まわりの道具として活用されることが多くありました。ホーロー雑貨を探すときのキーワードは、「水まわり」です。
水まわりで探せるアンティークホーロー製品といえば、今でも多く使われる「キッチン雑貨」や「バスタブ」が代表です。ちょっと昔を思わせるノスタルジックなものでは「洗面器」や「水差し」などもあります。
また、雨や風、ホコリにも強いという特徴から、かつてたくさん作られていたのが「ホーロー看板」。昭和レトロな雰囲気を出すためには必須といえるアイテムです。
「アンティーク」ホーロー雑貨の見分け方・選び方
現在でも新しい製品が次々に生みだされているホーローですが、“アンティーク”の見分け方はどこにあるでしょう?
ペイント図柄と文字に注目
図柄によっても、時代や国がわかります。ホーロー雑貨が作られ始めた当時は、ハンドペイントが主流。手描きの図柄であれば、古いものであることがわかります。
また、文字が書かれていることが多いのもホーロー雑貨の特徴。英語やフランス語など、書かれている言語から、作られた国がわかります。
他にも、イギリス製品はほとんどが文字、フランス製品は花柄やチェックなどの絵柄が描かれているなど、地域によるデザインの違いも見られます。
鉄の厚みに注目
厚みといっても、指でつまんで分かるほどではないかもしれません。でも、持ってみた時にずっしりとした重さを感じるのが古いものの特徴です。
鉄を薄く延ばす技術が開発される前のホーローには、厚みのある鋳鉄(ちゅうてつ)が使われていました。その後、プレス技術が生まれ、現在のような薄くて軽い鉄板が使われるようになりました。つまり、古いものほど重量感があるのです。
接合部分に注目
持ち手などの接合部分に注目してみるのも、アンティークホーローの楽しみ方。ビスなどで補強されていたり、継ぎ目が目立ったり、ちょっと無骨なものほど古いものが多いです。
サビやキズ
長年使われてきたホーロー雑貨であれば、サビやキズがあるのも当然です。このダメージこそがアンティークの魅力ですよね。新しいものを、自分の手元で育てていくという楽しみももちろんあります。でも、手っ取り早くインテリアとして馴染ませたいのなら、アンティークがおすすめです。
ホーロー入門 ~そもそも、ホーローって何?
ホーローって、意外と身近にあって、手にしたこともあるけれど、素材や特徴については知らないことも多いのではないでしょうか。ここであらためて、ホーローとは一体何かを知っておきましょう。
割れない金属と錆びないガラスのハイブリット、ホーロー
ホーローとは、鉄などの金属の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けたもののことです。
最近では、カタカナでホーローと書かれることも多いので、外国語と間違われてしまいそうですが、実はきちんとした日本語で、漢字では「琺瑯(ほうろう)」と書きます。英語いうと、「enamelware(エナメルウェア)」です。
壊れにくくて熱伝導も良いいけれど腐食しやすい金属と、見た目が美しくて腐食にも強いけれど壊れやすいガラス。その二つの素材の良いところを合わせて、強さと美しさを兼ね備えた、機能的な「ホーロー」が作られるようになりました。
ホーロー雑貨が生まれたわけ
世界で最初にホーロー製品が作られたのは、今から3000年以上前にもさかのぼると言われています。そこから長い時を経て、世界中に広まっていきました。世界最古のホーローの一つは、あの有名なツタンカーメンの黄金マスクの表面に施されたものだそうです。
現代の、ポップな印象のホーロー製品からは想像もつきませんが、それもそのはず、ホーローは、もともと、金・銀・銅を下地に、装飾品や美術品として作られた「七宝(しっぽう)焼き」が主流だったのです。黄金マスクもその代表です。
それが現在のホーローの姿になったのは、18~19世紀頃のイギリス。鉄のサビ止めとして実用化されて以来、装飾品としての七宝焼きから日用品へと枝分かれし、看板や医療用具、そして今でも人気なキッチン雑貨などに広く使用されるようになりました。水まわりの日用品の多くが鉄製だった時代、錆びにくいホーローは画期的な素材だったに違いありません。
こうした長い歴史があるからこそ、アンティークのホーロー雑貨がたくさん存在するのです。
アンティークホーロー雑貨で、インテリアを楽しむコツ
今でも新しいものがたくさん生まれているホーロー雑貨ですが、アンティークならではの良さも。アンティーク好きな方のためにも、これから好きになる方のためにも、その魅力をしっかりと探っていきましょう。
希少価値よりも身近さにこそ、魅力あり
たとえアンティークであっても、他の家具や雑貨と違って、希少品というものはあまり多くありません。一般的な日用品として生まれたアンティークホーローは、高級品というよりはむしろ、作られた時代や当時の人びとの生活がイメージできるものほど魅力を感じることができます。
アンティークホーローと上手に付き合う方法
古くても、新しくても、取扱いの注意点は基本的に同じです。とはいえ、アンティークだからこそ気を付けなくてはいけないところもあります。
キズやサビなど、ダメージと上手に付き合う
新品と違ってアンティークのホーロー雑貨は、「チップ」と呼ばれるガラス質がはがれている部分や、そこからサビが発生しているものがほとんど。もちろんそのダメージこそが、長い年月を経た証拠であり、アンティークの魅力でもありますが、これ以上サビを進行させたくない場合もありますよね。その場合には、こまめに錆び止めをしましょう。
市販のサビ取り剤を使って、まずはサビを取り除き、そこに食用油を塗るとサビの防止になります。
使い方に合わせて、きちんと選ぶ
ダメージがあることが前提のアンティークですが、使い方によっては、そのダメージの様子をきちんと確認することも必要です。
例えば、キッチンで使いたい場合、容器の内側のサビはやはり気になるところ。口に入るものを扱うのであれば、サビの少ないものを選んだり、あるいは、ここだけは妥協して新品を選ぶほうが安心できるかもしれません。
また、花瓶などとして使いたい場合、サビや欠けはデザインの一つとして楽しむことができますが、腐食が進んで穴があいているものだと、機能としては不十分です。
使い方も踏まえて、自分の目的と好みに合っているものを選びましょう。
アンティークホーロー雑貨をインテリアとして活用するコツ
アンティークホーローの最大の魅力は、なんといっても、その素朴で温かみのあるフォルムと、レトロでポップな見た目。その魅力を活かした、インテリアのお悩み解決術をいくつかご紹介します。
色や形で、インテリアのアクセントに
例えば、無骨さが人気のインダストリアルな部屋。落ち着いた色味と金属で、かっこよくまとめるのがポイントなのですが、無機質になりすぎるという悩みもよく聞きます。
そこに、ぜひ加えていただきたいのが、ホーロー雑貨。温かみのあるフォルムが、行き過ぎたクールさを軽減してくれます。また、色の選び方で、男前なかっこよさをキープしたり、ちょっと中性的な可愛らしさを加えたり、自分らしいテイストに傾けることも可能です。
シルバーのアルミランプシェードを、グリーンのホーローランプシェードに替えてみる。すると、生活感のないクールな部屋に温かみが加わります。あるいは、植物の鉢カバーを赤いホーローバケツに替えてみる。すると、可愛らしさが目を惹く、インテリアのポイントカラーになります。
はみ出していても、おしゃれに
例えば、収納スペースの限られたキッチン。こまごましたキッチン雑貨は、すべてのものが棚の中に収まりきるとは限りませんよね。でも、見た目がおしゃれであれば、それはただの道具ではなく、立派なインテリアアイテムになります。
ポットや水切りを好きな色のホーロー製に替えてみる。すると、作業台に出しっぱなしだったとしても、おしゃれさは倍増、ズボラさは隠してくれます。また、紅茶やコーヒーを、ホーローのキャニスターに入れてみる。この時、セットで並べるのがおすすめです。“同じもので揃える”ことは、スッキリさと統一感を出す、インテリアのコツでもあります。
屋外であっても、見た目が重要
例えば、ガーデニングが趣味の方のお庭。雨や風にさらされる環境ではあるけれど、使う小物の見た目もしっかり重視したいところです。屋外の広告看板に採用されていたほどのホーロー雑貨は、雨にもホコリにも強いので、屋外の使用にも最適です。
植物の鉢をホーロー製に替えてみる。マグカップのような小さいものからバスタブのように大きいものまで、サイズも豊富なので、小さな鉢植えにも、たくさんの寄せ植えにも対応てきます。もちろん、部屋の中のグリーンポットにもおすすめですよ。
ホーロー雑貨の上手な使い方 ~メリットとデメリット
鉄のサビ止めとして生まれ、日用品として広く使われてきたホーロー製品。見た目の可愛らしさも魅力ではありますが、実際に使ってこそ、その力を最大限に発揮できるというものです。ただ、鉄の強さとガラスの美しさのハイブリッドではありますが、完全無敵というわけにはいきません。使っていくうえで知っておくべきメリットとデメリットを押さえておきましょう。
ホーロー製品のメリットと、その活かし方
日用品として作られたホーロー製品の多くは、鉄の表面にガラスの釉薬をかけたもの。鉄とガラスの両方の良さを合わせ持っています。
においや汚れ、塩や酸にも強い
ガラス質のおかげで、においや汚れがつきにくく、塩や酸にも負けません。
ホーローのボウルやバットは、調理の下ごしらえや、お漬物の保存などにも最適です。梅干しを入れても穴が開かないホーローは、昭和の主婦のお弁当作りの強い味方だったのだとか。
冷蔵・冷凍、さらに直火もOK
冷蔵・冷凍ができ、電子レンジにこそ使えませんが、そのまま直火にかけられるという便利さも持ち合わせています。忙しい現代の生活では、週末の休みにおかずをまとめて下ごしらえしておくという方も多いですよね。冷凍ストックをそのまま調理できたらいいのに、と思っている方、ぜひ一度ホーロー製品を試してみてください。
ホーロー製品のデメリットと、上手な付き合い方
強さと愛らしさを持ち合わせた、ホーロー。とはいえ、良いところがあれば悪いところもあります。欠点ともきちんと向き合っておきましょう。鉄とガラスの欠点を補って生まれただけあって、それほど多くの欠点はありません。でも、長く使っていくためには知っておきたいことばかりです。
強い衝撃は避ける
ホーローの表面を覆うガラス質の部分は、強い衝撃を受けると、ヒビや欠けが生じることがあります。また、加工方法やキズなどで金属が表面に出ていると、そこからサビや腐食が発生します。アンティークの場合には、売られている時点で何らかのダメージが生じていることがほとんど。そのダメージを育てて楽しむか、良いところでサビ止めをするか、自分の手を加えながら付きあっていくのが、アンティークの醍醐味です。
重さを考えて、サイズ選びは慎重に
ポップな見た目とは裏腹に、ホーローは内部が鉄なので、しっかりとした重量感があります。特に、鉄の加工技術が発達していなかった時代に作られたアンティークの場合には、鉄も厚く、更にどっしりとした重みがあります。頻繁に移動させる場所や、中にたくさんのものを入れるような使い方は、あまりおすすめとはいえません。使い方や、それに合わせたサイズ選びもアンティークのホーロー雑貨と上手に付き合うコツです。
電子レンジは使用不可
ホーローの内部は金属ですから、電子レンジには使えません。万一、お弁当箱に使おうとすると、お昼にチンすることはできません。温かいお弁当を食べたい場合には、一度別の容器に移し替える必要があります。見た目の可愛らしさも大切ですが、実際に使うときのこともしっかりイメージして選んでくださいね。
アンティークホーロー雑貨を扱うコツ ~取扱いの注意とお手入れ方法
アンティークのホーロー雑貨が好きならば、多少のダメージはむしろ魅力にもなりますが、使い方によってはこれ以上のダメージの進行を防ぎたいということもあるかもしれません。ホーローの特徴を踏まえて、取扱いの注意やお手入れ方法などもぜひ押さえておきましょう。
使うときに注意すること
ホーローを使うときは、表面を覆って鉄を守っているガラスを傷めないようにすることが一番のポイントです。具体的には次の3点に特に注意しましょう。
- ぶつけたり、落としたりなど、強い衝撃を与えない
→ ガラス質が割れることがあります。 - 金属たわし、磨き粉、漂白剤の使用を避ける
→ ガラス質の表面にキズがついたり、傷んでしまったりします。 - 空焚きをしない
→ ガラスを傷めてしまいます。
よくあるお悩みと、解決方法
お手入れ方法には、さほど気を使う必要はありません。使い終わったら、きちんと洗い、よく乾燥させるという、ごく普通の使い方が基本です。ここではさらに、こんな時にはどうすればいいの…というよくある3つのお悩みとその解決方法をご紹介しておきます。
①サビの防止、これ以上サビを進行させたくない
1.使用後には水気を取り、しっかり乾燥させる
2.市販のサビ取り剤を使ってサビを取り除く
3.食用油を塗る(サビ防止)
②焦がしてしまった
- ぬるま湯を入れて焦げを柔らかくする(重曹と食用油を入れると効果大)
- 焦げが柔らかくなったら、お湯を捨て、スポンジで洗う
※お湯を一度沸騰させるのも効果的です。
③空焚きしてしまった
- 水などをかけず、自然に冷めるのを待つ
※急な温度変化はガラスを傷めます。
まとめ
1.アンティークを見分けるポイントは、図柄、重さ、そして無骨さ
日用品として生まれたホーロー雑貨は、今でも新しいものが作られています。アンティークを見分けるには、図柄やデザイン、鉄の厚みと重量感、そして接合部分の無骨さがポイントです。
2.「割れない×錆びない」ホーロー雑貨
実は、3000年もの歴史があるホーロー。金属とガラスの両方の良さを兼ね備えたホーロー技術が、鉄のサビ止めとして実用化されて以来、さまざまな日用品が作られるようになりました。
3.インテリアとしても幅広く、アイディア次第でさまざまに
見た目の愛らしさもアンティークホーロー雑貨の大きな魅力。カラフルでポップなのに、どこかノスタルジーな風合いは、インテリアのお助けアイテムになることも。さらに、アンティークとなれば、サビやひび割れなどの“ダメージ”もまた、美学と言えます。
4.お手入れは意外と簡単、使い方に合わせてしっかり活用
アンティークならではのダメージに魅力を感じることができたなら、ホーロー雑貨と付き合うのはさほど難しいことではありません。お手入れのポイントは、表面のガラスを傷めないように気をつけることと、使った後にはきちんと洗って良く乾かすこと、これだけです。
これまで何気なく「おしゃれ」「可愛い」「カッコイイ」と思っていたアンティークのホーロー雑貨。日用品としても活躍する機能美と、長い歴史が感じさせるなつかしさなど、その魅力の理由を、改めて知っていただけたのではないでしょうか。
アンティークならではのダメージとも上手く付き合いながら、日用品としても、インテリアのポイントアイテムとしても、アンティークホーロー雑貨のある生活、ぜひ楽しんでくださいね。