アンティークやヴィンテージといった古いアイテムが好きだけど、ふと「アンティークの定義とは?」「そもそもヴィンテージってどんなもののこと?」と疑問に思うことありますよね。
なんとなく分かっている気でいるけれど、改めて問われるとうまく答えられない…。実際のところ、アンティークって何なの??
今回はそんな疑問にお答えするべく、アンティークとヴィンテージについてまとめてみました。
結論からいうと、それぞれに明確な定義はないのですが、できる限り、その輪郭を浮き上がらせてみましたよ。アンティーク家具やヴィンテージ家具に関心のある方は、知っておいて損はない情報だと思いますので、ぜひ一読してみてくださいね。
それでは、まずは「アンティーク」と「ヴィンテージ」という言葉の定義を確認し、そのあとで「家具」に焦点を当てて「アンティーク家具」と「ヴィンテージ家具」の違いについて迫っていくことにしましょう。
Contents
アンティークとは
アンティークという単語はアルファベット表記で「Antique」と書きますが、これはフランス語です。その語源は、古代ギリシャやローマの遺物を意味するラテン語の「Antiquus(アンティクウス)」から来ています。そこから古いものを指す意味の言葉として用いられるようになり、現在では骨董品や古美術品全体を意味する言葉に変化しています。
どのくらい古ければ「アンティーク」と呼ばれるのかといった正確な定義はありませんが、一般的には100年以上の歴史があるものにを指す傾向がありますよね。
その根拠としてよく挙げられるのが、1934年にアメリカが定めた通称関税法。「100年以上の古い美術品、工芸品、手工芸品に輸入関税を課さない」と決められたことで「アンティーク」=「100年以上経ったもの」という慣習になったのです。
さらにGATT(関税と貿易に関する一般協定)やWTO(世界貿易機関)がこの基準を採用したので「アンティークとは100年を経過したもの」と広く言われるようになりましたが、これはあくまで、アメリカの関税法上で輸入関税がかからないという決めごとに過ぎません。
アンティークが生活に密着しているヨーロッパ各国では、「アンティーク」に対して明確な定義は存在していないのが実情です。後に詳しく見るように、アンティーク家具の世界では、作られてから100年経っていない1920~1930年頃に製造されたものが多いのですが、それらも現地では「アンティーク」と呼ばれていたりします。
ヴィンテージとは
「ヴィンテージ」は、もともとはワイン用語。アルファベットで「Vintage」と表記しますが、これは「vine」と「age」を組み合わせた単語であるといわれています。「vine」とはつる植物のことで、一般的にブドウのことを指します。「age」は年齢を意味する単語で、この二つを組み合わせて、ブドウの収穫年を表す言葉として生まれた言葉です。
当たり年(おいしいぶどうが採れた年)のワインは「ヴィンテージワイン」と呼ばれ、高級品として扱われるようになり、そこから転じて、ヴィンテージは由緒ある年代に作られたもの、古くて価値のある品という意味合いで使われるようになりました。現在では家具や車、ジーンズやギターなどにも用いられていますよね。
こちらも明確な定義はありませんが、アンティークに比べるとより歴史の浅いカジュアルなものとして認知されている感触があります。通説では、(アンティーク=100年経っているものという説に対して)ヴィンテージは20年~30年以上100年未満のものに対して使うなどとも言われています。
アンティーク家具とヴィンテージ家具の違い
さて、「アンティーク」と「ヴィンテージ」それぞれの語源を見てきましたが、その定義はどちらも曖昧なものでしたね。
それではアンティークとヴィンテージの違いとは何なのでしょうか?
ここで一度簡単にまとめると、アンティークは大量生産されたものではなく、歴史や伝統を受け継いだ由緒あるものを指します。一方、ヴィンテージは製造から100年未満のものを指し、それ以外の明確な定義がないカジュアルな呼称です。
一般にはアンティークは製造から100年以上経ったもの、と定義されますが、上記の条件を満たしていれば必ずしも100年以上経っている必要はないんですよ。ヴィンテージは特にデザインに意匠性が無くても、20~30年以上経過していれば大抵の場合ヴィンテージと表現しています。
100年以上前か、それ以下かで分けて考えることが多く見られますが、アンティークに関しては100年以上経っていなくてもアンティークと呼ぶことがあることを覚えておくと良いですね。
こうしたアンティークとヴィンテージへの定義付けはどういった背景で今まで引き継がれてきたものなのでしょうか?ここからは歴史を遡ってさらに「アンティーク」と「ヴィンテージ」について深堀りしていきましょう。
アンティーク家具は、時間の経過よりもデザインの質を重視
先ほども少し触れたように、アンティーク家具に関して世界で一番大きなシェアを占めているイギリスでは、100年経っていないものでも「アンティーク」と呼ばれているものがたくさんあります。
そもそも、100年も前に作られた家具が今なお良い状態で残っているということは非常に稀なこと。100年の時が経てば、湿度も温度も変化するうえ、人々の生活環境も大きく変わります。そうした諸々の変化の中を良好なコンディションを保ったまま潜り抜けるのは不可能に近いですよね。そのため、「100年」という線引きはそれほど重要なものではないんです。
そして、時間の経過よりも現地の人々が重視しているのは、アンティークとしてデザインの歴史を継承しているということです。
より具体的にいうと、第二次世界大戦以前頃、すなわち1920~1930年頃に作られた大量生産ではない家具に、イギリスの人々は歴史的価値を見出しています。
英国ではこの年代に作られた家具のデザインが一番美しく、家具としての完成度が高いとされ、「アンティーク」と呼ばれているのです。
なぜこの1920~1930年頃なのかというと、1920年以降に少しずつ機械化が進んだことが要因として挙げられます。
機械がなく家具作りのほぼ全ての工程を手作業で行っていた1920年代以前に作られた家具は、やはり手作業の限界というものがあり、今ほど美しいデザインを作り出すことができませんでした。
しかし1920年以降、機械化が進むと、徐々にデザインのバリエーションを作り出すことが出来るようになり、手作業では叶わなかった繊細かつ美しい意匠も可能となりました。こうしてヨーロッパのアンティーク家具に見られる数々の様式美が誕生していったのです。
また、手作業と比べて量産できるようになったことから、オーダーした人の要望や好みに合わせてセミオーダーの家具が作られるようにもなりました。オーダーした方の好みに合わせて、色々な時代のデザイン様式を組み合わせて作り出された「エクレクティックスタイル(折衷様式)」と呼ばれる美しい家具が誕生したのも、この1920~30年代です。
美しい意匠をいくつも組み合わせたことで芸術的な完成度も高くなり、またセミオーダーということもあって、似たデザインはあっても全く同じものは存在しないというアンティークの醍醐味のような魅力もあります。
まとめると、この時代(1920~1930年)のデザイン性の高い家具が、アンティークの本場イギリスでは「アンティーク家具」と呼ばれる中心的な存在なのですね。
第二次世界大戦後、すっきりとしたヴィンテージ家具へ
イギリスのアンティーク家具の中でも1950~70年代に作られた家具は「ヴィンテージ」と呼ばれています。
先ほどご紹介した1920~1930年頃の「アンティーク」と呼ばれる家具と比べると、そのデザインの差はこの通り!
左の彫刻が施されたカップボードがアンティーク、右のシンプルなデザインのカップボードがヴィンテージです。
同じ英国家具でもそれまでのデザインとは全く異なり、とてもシンプルでスッキリとしたデザインになっていますよね。この洗練されたデザインは、スウェーデンやノルウェー、フィンランドやデンマークなど「ノルディックスタイル」と呼ばれる北欧デザインの影響を大きく受けています。
近年日本でも大変人気を博している「北欧スタイル」と呼ばれるデザインの家具の源流には、この1950~70年代のイギリスヴィンテージ家具があるのです。
同じ英国で作られているのに、アンティークとヴィンテージでここまでデザインが違う理由は、第二次世界大戦が大きく関わっています。
イギリスは、第二次世界大戦の戦勝国ですが、それでも大戦による物資不足はイギリスの家具作りにも大きく影響しました。
それまで家具に使われていたオーク材やマホガニー材、ウォールナット材などといった高級木材の調達はかなわず、また、第二次世界大戦で破壊された都市では、失った家屋を建て直す必要から、コストや手間が掛からず大量生産できる簡単な構造の北欧デザインの家具へと需要がシフトしていきました。
こうして、輸入しやすく加工も簡単なチーク材の北欧家具が、それまでの高級素材と熟練職人の技術で作り上げられた芸術的な英国家具に取って代わったのです。
そんな中でもとくに人々に受け入れられたのが、シンプルながらも洗練されてデザイン性の高いデンマークの家具でした。
もちろん、それまでの重厚な家具に比べると、ベニヤやMDFなど安価な素材を中心に作られているうえ、構造も全く異なり、クオリティの面ではやはり劣る部分もありました。
しかし、それをカバーするデザイン力と大量生産できるメリットを活かして、それまで伝統的な家具作りが定着していたイギリスでも、戦後の復興期に大量生産され、世界各国にこの北欧スタイルの家具が多数輸出されるようになったのです。こうして瞬く間に北欧スタイル家具は広まりました。それが今、私たちがヴィンテージ家具と呼ぶものの中心をなしているのです。
ちなみに、第二次世界大戦の爪痕も薄らいできた1970年以降、「それまで人気だったシンプルな北欧スタイルの家具もいいけれど、やはり昔の英国らしい伝統的な家具のデザインに戻そう」という運動が起こり、昔のイギリスらしいリバイバルデザインの家具が多く作られるようになりました。そのため、年代も若くコンディションも良好なイギリスの伝統的なデザインの家具が、今の私たちの手にも入りやすくなっています。初めてアンティーク家具に挑戦するという日本の方にも受け入れられやすくて人気のアイテムでもあるんですよ。
アンティークの定義は曖昧。「私にとってのアンティーク」を見つけてみて
さて、アンティークの本場イギリスの歴史の流れに沿って、アンティーク家具とヴィンテージ家具の違いについて紐解いてみました。なんとなく両者の違いが見えてきましたか?
しかしながら、今回ご紹介したのはイギリスにおける家具のお話だけ。もちろんアンティーク家具もヴィンテージ家具も、イギリス以外にもフランスや中国、日本など、各国のものがあるわけです。それぞれに明確な定義を引いて覚えていくのはちょっと大変ですよね。
たしかに明確な定義があったほうが家具探しはスムーズに運ぶのですが、幸か不幸か、世間共通の決まった定義が無いのなら、自分の中でオリジナルの定義を作って持っておくのも良いのではないかと思います。
「アンティーク家具」に求めるものは人それぞれ違いますよね。今回ご紹介したような1920~1930年頃のデコラティブな家具こそがアンティークだ、という人もいれば、私にとっては日本の昔懐かしい和箪笥がアンティーク、という人がいてもよいですし、芸術性の高さを追求する人もいれば、実生活の中で使えることが大事、という基準を持つ人がいてもよいわけです。
それぞれがそれぞれに、自分にとってのアンティークとはどんなもの? と考えて、自分基準のアンティーク家具探しを楽しむのも素敵なことだと思います。
また、自分にとってのアンティークがどんなものか自分の中で言語化できていれば、お店の店員さんにも相談しやすく、イメージに近いアイテムを見つけやすくなります。
もちろん私たちラフジュ工房でも「探しているものが見つからないんだけど…」など困ったことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。お探しのアイテム探しや、古い家具に対する心配事のご相談など、どんなことでも安心しておまかせくださいね。
アンティーク家具ラフジュ工房では、家具探しサポートサービスをおこなっております。アンティーク家具をお探しの方はぜひお気軽にご活用ください。
【おまけ】レトロ・ブロカント・ジャンク…その他の定義もご紹介
「アンティーク」や「ヴィンテージ」と似たような言葉として、「ブロカント」「ジャンク」「レトロ」などの用語を目にすることも多いですよね。これらの違いを簡単にご紹介します。
まずは「ブロカント」と「ジャンク」。どちらももともとはガラクタという意味合いで、カジュアルな古家具を指す言葉として知られています。どちらかというと「ブロカント」は寂れたなかにも品が漂うイメージですが、「ジャンク」というと本当にガラクタ、役立たずというような意味合いが含まれます。アンティーク家具の中でも修理をあまり施さずワイルドな雰囲気がするものを表す傾向がありますよ。古ぼけた味わいある質感のアンティーク家具やヴィンテージ家具を探している方におすすめです。
続いて「レトロ」ですが、こちらは懐かしさを感じる家具に使われる呼び名で、木材の温かみや可愛らしいペイントが施されたものなど、やわらかな雰囲気のアンティーク家具によく使われます。やさしいほっこりとした印象の空間を作りたい方に適しています。
参考までにこれらの用語も抑えておくと、お探しのイメージに近いアンティーク家具をよりスムーズに見つけられると思います。
最後に
アンティークやヴィンテージという言葉の定義や、アンティーク家具やヴィンテージ家具がそれぞれどんなものを指すのか、少しでも参考にしていただけたら幸いです。
明確な定義がないものに自分で答えようとするのは難しいことではありますが、きっとこの記事をご覧の方はアンティーク好きな方がほとんどだと思いますので、ご自分の好きなアンティークに触れながら、少しずつ自分にとっての「アンティークとは」を考え見つけていければよいのではないかなと思います。
アンティーク家具もヴィンテージ家具も本当に様々、奥深い世界が広がっていて、私もまだまだ勉強の日々です。