前回は、“こんなにあったの!?アンティークロッキングチェアのデザインまとめ”の記事で、アンティークロッキングチェアの様々なデザインを素材別にご紹介しました。続編ともいえる今回は、有名メーカーが独自に生み出した個性的なデザインのロッキングチェアをご紹介します。まだまだ「こんなデザインもあったんだ!」とびっくりするようなロッキングチェアが登場しますよ。
それでは早速、国外・国内あわせて5社のユニークなロッキングチェアを見てみましょう。
目次
豊富なデザインに思わず目移り。アーコール社のロッキングチェア
まずは、北欧家具ブランドとして人気の高いアーコール(ERCOL)社のロッキングチェア。温かな木肌を活かしたシンプルなデザインが特徴的ですが、実はイギリスのブランドなんですよ。伝統的なウィンザーチェアの形をベースとしつつも、洗練されたモダンな雰囲気が漂い、人気の北欧スタイルやナチュラルスタイルのインテリアとも相性抜群です。
アーコールチェアといえば、様々な種類があるのもポイント。それは、ロッキングチェアでも変わりません。本当に種類が豊富なので、一つ一つ丁寧にご紹介するのはまた別の機会に譲るとして、今回は簡単にご紹介しておきます。気になるデザインがある方は、ぜひチェアの名前で調べてみてくださいね。
まず、画像の左上が「フープバックチェア」。名前が示す通り、背もたれの丸い形が可愛らしいチェアです。お部屋に取り入れやすいコンパクトな大きさも魅力ですよ。次に右上のチェアが、「クエーカーチェア」。フープバックチェアが真っ直ぐ引き伸ばされたようなデザインが特徴的です。画像右下は「ゴールドスミスチェア」。上に向かってすぼまってゆく背もたれのデザインがお洒落ですよね。最後、画像左下は「チェアメイカーズチェア」です。全身がすっぽりと包み込まれる大きさで、まさにくつろぎの時間にぴったりなロッキングチェアですよ。
画像を見てお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、アーコールチェアは色味も様々。ぜひ、お気に入りのデザインと色味の組み合わせを見つけてみてくださいね。
アーコールチェアに関しては、こちらの“アーコールといえばウィンザーチェア。ビンテージで見る定番の種類”の記事でもご紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。
「アーコール ロッキングチェア」の商品一覧へ
優美な曲線に目を奪われる。トーネット社の「ベントウッドロッキングチェア」
次にご紹介するのはドイツ生まれのブランド、トーネット(THONET)社です。トーネット社は、独自に開発した曲木の技術を駆使し、1860年、それまでになかった新しいデザインのロッキングチェアを完成させました。それがこちらのベントウッド(曲木)ロッキングチェアです。
アームも脚も優美な曲線を描き、そのまま床に接するロッカー部分へとつながっていくデザインには、思わず目を奪われてしまいますよね。このような個性的なデザインは、当時爆発的な人気となりました。なんと、あの有名な画家ピカソも愛用していたそうですよ。
ただし大変な人気となったため、それだけ多くの模倣品も出回ったそうで、今でもアンティークのベントウッドロッキングチェアを購入する際には本物かどうか注意が必要です。
ちなみにこちらの画像では、脚の部分がリング状のデザインになっていますが、この他に、グルグルとした渦巻き状のものもあるようです。
大正時代のモダンデザイン。ヤマハが作った「山葉文化椅子」
日本にも、独自のロッキングチェアを生み出した有名メーカーがあります。こちらのロッキングチェアを作ったのは、現在では楽器メーカーとして名高いヤマハ(当時は日本楽器製造株式会社)です。
「山葉文化椅子」と名付けられたこちらは、大正末期から昭和10年頃まで製造販売された大ヒット商品で、ロッキングタイプではない通常の椅子もあります。まだまだ畳のお部屋が主流であった時代に、和室にも合わせやすい洋家具として人気を博しました。テーブルと合わせて3点セットになった「山葉文化椅子セット」としても売り出されていたんですよ。
この「山葉文化椅子」は、なんと折りたたむこともでき、日本で最初のグッドデザイン賞にも輝きました。外国と違って、コンパクトなサイズ感の日本の住宅にも取り入れやすい画期的なアイディアだったのでしょうね。和と洋をうまく融合させた見た目のデザインも印象的で、懐かしさと同時にモダンな雰囲気も感じられます。
「山葉文化椅子」の商品一覧へ
上質な民芸家具。松本民芸家具のロッキングチェア
落ち着きのあるシックな佇まいのこちらのロッキングチェアは、松本民芸家具のお品です。創立者の池田三四郎が民芸運動に感銘を受け、1948年に家具作りをスタートした松本民芸家具。「アンティーク」と呼ぶほどの歴史はまだありませんが、それでも一点ずつ丁寧に手作りされた家具からは、機械でつくられる大量生産品とは一線を画す、独自の味わいと職人の想いが感じられます。
材には硬く丈夫なミズメザクラが使われており、長年の使用にも耐えうる高品質なつくりです。赤みを帯びた艶やかな木肌が、空間に上質な雰囲気を添えてくれそうですね。
デザインのラインナップは、なんとロッキングチェアだけでも10種類もあるんだとか。詳しくは松本民芸家具に問い合わせてみてくださいね。
「松本民芸家具 ロッキングチェア」の商品一覧へ
クラシカルにもカントリーにも。飛騨産業のロッキングチェア
最後にご紹介するのは、1920年に設立された、キツツキマークで有名な国産家具メーカーの飛騨産業。飛騨産業が作るロッキングチェアは、座面が低く安定感があるのが特徴です。こちらも松本民芸家具と同様に、アンティークと比べると歴史は浅いほうですが、ビスを使わない本格仕様の手作りで、その丁寧な仕事には職人のこだわりが感じられます。
こちらは、「穂高」シリーズのロッキングチェア。優雅なファブリック遣いが印象的なシリーズで、クラシカルな雰囲気が漂います。西洋アンティークと合わせても劣らない存在感が魅力的です。
こちらは、「WINDSOR」シリーズのロッキングチェア。名前の通り、ウィンザーチェアをベースとしたシンプルなデザインです。高級なナラ材が使用されており、素材の温もりが感じられるお品です。カントリースタイルのお部屋にもぴったりですね。
「飛騨産業 ロッキングチェア」の商品一覧へ
最後に
メーカーごとの様々なデザインのロッキングチェアをご紹介しました。いかがでしたか。同じ家具でもこんなにもデザインの幅があるなんて、なんだかとても面白いですね。それぞれのブランドにそれぞれの背景があり、どのロッキングチェアもそうした歴史や時代の流れから生まれてきたデザインなんだということに、記事をまとめていく中で改めて気づかされました。今回はあまり時代背景などには触れられなかったので、また別の機会にそれぞれのブランドの歩みなどもご紹介できたらと思います。