デスクワークで使う椅子といえば、定番の”回転椅子” 。
今やオフィスに自宅に大活躍の回転椅子は、くるっと回転させることで、その場にいながら立ったり座ったりが非常に楽にできる便利なアイテムですよね。
現在の回転椅子は、プラスチックや金属でできたものが一般的になっていますが、アンティーク家具の世界では、木製の回転椅子がたくさん。
木の温もりや味わいなど、アンティークならではのひと味違った魅力がありますよ。
今回は、そんなアンティーク回転椅子にスポットライトを当て、回転椅子の誕生秘話や歴史、ラフジュ工房がおすすめするアイテムを紹介していきます。
何気なく使ってきた回転椅子。その魅力はさらに深まること間違いなしです!
目次
回転椅子は「仕事が忙しいから」生まれた!?
回転椅子が登場したのは、時代をさかのぼること18世紀の終わりごろのアメリカ。
まさにイギリスからの独立の機運が高まっていた頃、のちにアメリカ合衆国の第3代大統領に就任し、アメリカ独立宣言を起草した人物としても知られるトーマス・ジェファーソンは、政治家としてオフィスワークに多忙を極めていました。
当時愛用していたウィンザーチェアに座り、デスクで作業をしていたジェファーソン。
執務の際は職業柄、後ろに置いた書棚のために何度も振り向く必要がありました。
ある時ジェファーソンは、あまりの多忙と仕事の非効率さに、次第に椅子を引くことすら煩わしく思い、「椅子が回転してくれればなあ…」とひらめいたそう。
そして馴染みの椅子職人に声をかけ、発明したのが「回転する椅子(Revolving Chair:リヴォルビングチェア)」。
世界中で愛される回転椅子の誕生です。
登場した当初は珍しかった回転椅子ですが、やがて椅子メーカーがその便利さに注目し、大陸をわたりイギリスなど欧米諸国で普及しはじめます。
くるっと回転する椅子は、後方にある書類を取りたいときや後ろから声をかけられたりしたときに難なく応じられてとても便利。
今や世界中のビジネスシーンで定番アイテムとなったこのデザインは、多忙を極める中で執務をこなしていたジェファーソンの何気ないひらめきから生まれたものだったのです。
始まりはウィンザーチェア
前項でも触れたように、アメリカで生まれた回転椅子の前身はイギリス発祥のウィンザーチェアでした。
ウィンザーチェアとは、古くからイギリスの地方で作られていたカントリーチェアに起源をもつ木製の椅子のこと。
ウィンザーチェアの歴史は古く、原点をたどると16世紀までさかのぼります。
もともとは農民や挽物師が上流階級の家具を見よう見まねで作ったことからはじまり、下流階級から上流階級に広まった珍しい家具なのです。
そんなウィンザーチェアの特徴は、厚い木で作られた座面、お尻を包み込むような形を施した独特なくぼみ、そして脚や背もたれのスポークが直接差し込まれていること。
シンプルで実用的なウィンザーチェアはイギリス各地で作られるようになり、細い背棒が櫛のように並んだ「コムバック」や弓のような曲げ木が特徴的な「ボウバック」など、多様なデザインが生まれました。
やがて18世紀に入り1720年代ごろになると、ウィンザーチェアは移民と共にアメリカに渡り、開拓民らによっていわゆる “アメリカン・ウィンザーチェア” が誕生します。
その後も既成概念にとらわれないアメリカならではの自由な発想で、新しいデザインを生み出し続け、アーム付きの「キャプテンチェア」や、より簡素な背もたれが特徴の「シェーカーチェア」などが次々と誕生していきました。
ジェファーソンが発明した「回転椅子」も同様、独自のユニークな発想から生まれたデザインといえるでしょう。
以下の記事では、ウィンザーチェアについて詳しく紹介しています!もっと知りたくなった方はぜひチェックしてみてくださいね。
日本では和洋折衷の象徴。レトロな木製回転椅子
一方日本では、明治維新を迎えるころに洋家具の文化が入り、大正時代になると富裕層を中心に広がり始めます。
洋家具の歴史はここ100年ほどと割と日の浅い日本ではありますが、回転椅子は比較的早くから作られていたようです。
大正や昭和初期に作られた現存するアンティークの回転椅子を見てみるとわかる通り、形も意匠もさまざま。
100年経てば過去の時代を象徴するアンティーク品として私たちの目に映りますが、当時の人々にとっては最先端のデザイン。
畳で床座りするスタイルが当たり前だった日本に、椅子が置かれ始めたことを想像すると、いかに日本人が洋家具も強い関心を寄せていたかがわかりますね。
少し余談ではありますが、古き良き昭和を描いた小津安二郎監督の作品、「麦秋」の中では、木製の回転椅子がいくつか登場していますよ。
主人公の畳張りの自宅で、デスクと一緒に木製の回転椅子が置かれているのが見られます。
縁側がついた伝統的な日本家屋に洋風家具が置かれるという、なんとも風情のある光景です。
また、主人公が勤める東京・丸の内のオフィスでは、タイプライターを打つ主人公の横で”専務” が、ハイバックの背もたれがついた木製の回転椅子に座っている姿が見られます。
近代様式のビルのオフィスに木製の回転椅子が置かれる光景は、無機質と温かみが入り混じり、まさに古き良き日本の昭和の象徴といえますね。
昭和レトロならではの雰囲気をアンティーク家具で再現したいなら、ぜひ参考にしたい作品です。
デザインいろいろ。ラフジュ工房おすすめの木製回転椅子5選
ラフジュ工房では、イギリスやアメリカなど海外のアンティーク回転椅子はもちろん、日本製のアンティーク回転椅子も多数取り揃えています。
たくさんのアンティーク品が集まる中で、特におすすめなアンティーク回転椅子を厳選してご紹介します!
【1】職人の技が光る。透かし彫り入りアンティーク回転椅子
ナラ材のフレームに施された透かし彫りが美しい、ドクターチェア型の木製回転椅子。
深いブルーの張地が、ミステリアスさを醸し出し、心を落ち着かせてくれる逸品です。
デスク周りや書斎に置くだけで、大正ロマンな雰囲気が一気に高まります。
【2】小さな座面がかわいい。チャイルド回転椅子
お子様用にはもちろん、インテリアとしても映える子ども用の回転椅子。
シックな色合いのウッドフレームと張地がクラシカルな雰囲気を演出し、すらりと伸びた猫脚がさらに美しさを引き立てます。
現代の子ども用の椅子というとカラフルでポップな色使いが多いですが、アンティークの世界なら大人用の椅子をそのまま小さくしたような作りもたくさん見られます。
インテリアに統一感が出るので、クラシカルな空間を保ちたい方は必見です。
【3】重厚感のある佇まいが魅力。欅材のアンティーク回転椅子
欅材ならではの重厚感と、脚部や背もたれに細やかな意匠が見られる和製アンティークの回転椅子。
職人によって一つ一つ丁寧につくられたスポークのおかげで、とてもエレガントに仕上がっています。
【4】ミニマルさに惹かれる。スツール型回転椅子
作業用にちょっと座る椅子が欲しい、そんなささいな願いをかなえてくれるのがスツール型の回転椅子。
ミニマルでかわいらしく、鋲で丁寧に打ち込まれた張地がレトロ感いっぱいです。
小さいので邪魔にならず、臨時の椅子としても使い勝手が良いアイテムですね。
【5】和モダンにも合う。畳ずり回転椅子
和室や和風テイストに合う回転椅子をお探しなら、このようなスタイルはいかがでしょうか。
前脚と後脚がつながった畳ずりと呼ばれる構造で、畳を傷めないように配慮された回転椅子です。
低い座面に設計されているので、座卓やローテーブルとも相性が良いですよ。
【番外編】北欧好きには、イージーチェア型回転椅子
アンティークとまではいかないけれど、ヴィンテージや北欧テイストが好きな方ならこちらの回転椅子は必見。
一見、一人掛けソファに見えるドルソのイージーチェアも、実は回転するんです。
包み込むようなフォルムと、シンプルなデザイン、くすみカラーでお部屋になじみやすいのが魅力的。
リビングや寝室のほか、住宅以外にもホテルやオフィス空間にも合いますよ。
Check! ラフジュ工房が提案するアンティークの世界
ラフジュ工房がお送りする『PHOTO GALLERY』では、プロのインテリアコーディネーターによる木製の回転椅子を取り入れたインテリア事例をご紹介しています。
さまざまなシーンに合わせて¥た取り入れ方を提案しているので、空間づくりの良いヒントになれば嬉しいです!
▼「好きなものに囲まれる幸せ。可愛いレトロ家具を集めた手芸用アトリエ」
▼「淡い色をブラックで引き締める。シャビーシックなダイニング」
▼「大正ロマン家具で憧れの書斎を実現。重厚感漂う上質なインテリア」
おわりに
今回は、木製の回転椅子についてご紹介しました。
回転椅子は当たり前の存在すぎて、意外と注目してこなかった方も多かったのではないでしょうか。
イギリスやアメリカの歴史的な部分に視点を変えたり、回転椅子の誕生秘話にフォーカスしてみたりすると、家具がもつ機能性やデザインの魅力もより一層奥深く感じますよね。
アンティーク家具の中でも、身体を預ける椅子はダイレクトに深い味わいを体感できるアイテムなので、デスクワークする方はもちろん、書斎を持とうかな、なんて方はぜひアンティークの回転椅子を取り入れてみてくださいね。