ウォッシュスタンドとは、水道がまだ発達していない時代に、水を要する作業を行う目的で、寝室・キッチン・リビングなどに置かれていた家具のことです。正式には「ウォッシュハンドスタンド」といいます。
天板にジャグとボウルを置き、洗顔や洗濯をしたり食材の泥を落としたりしていました。水道が発達した現代では見られない、時代を感じさせるアンティークならではの家具です。
ウォッシュスタンドの特徴
デスクやキャビネットのような形をしていることが多く、主に3本または4本の脚で支えられています。
貴族の間で使用されることが多く、マホガニー・チーク・ローズウッドといった木目の美しい高級材で作られるのが一般的でした。
水が掛かりやすい天板やバックスプラッシュ(立ち上がりの部分)には、耐水性のある大理石などの石材やタイルが使用されていることも特徴のひとつです。
ウォッシュスタンドの種類
小型タイプ
ウォッシュスタンドが誕生した頃は、小型で簡易的に作られたものばかりでした。
日常的に使用する身近な家具であったため、扱いやすさという視点ではとても優れています。
3本脚タイプは部屋の角に設置できたり、余分なスペースは無く天板に開けられた穴にボウルをはめ込むだけのシンプルな設計だったり、スマートに使用するための工夫がたくさん見られます。
大型タイプ
お部屋に並ぶ他の家具と同じようなサイズ感で使用できる大型タイプは、安定感があって機能性も充実しています。
例えば収納がたくさんあったり、タオルが掛けられるバーが備わっていたり、中にはミラーが付いているものもあったり。
高級木材・大理石・タイルなど美しい見た目の素材が使用され、至る所に凝った装飾が施されデザイン性が高い点も大きな魅力となっています。
金属製タイプ
木製に比べシンプルで軽やかな印象の金属製タイプ。優雅な曲線を描く細いラインはどんな場所にも馴染みやすく、扱いやすいです。
ボウルを2つ並べることができたり、木製でもよく見られるような脚にキャスターが付いているタイプがあったりと種類も豊富にあります。
和製アンティークでも金属製ウォッシュスタンドを見ることができ、当時も今も医療の現場で使用され活躍を続けています。
ウォッシュスタンドの歴史
ウォッシュスタンドの原型となる家具が誕生したのは15世紀より前といわれており、ボウルをはめ込むだけの小さな天板とその下に設けられた棚板のみで構成されたシンプルな家具でした。
17世紀には人々の間で石鹸を使用しての洗顔が習慣化し、イギリスの紳士の間では髭を剃るという身だしなみが根付いていきます。
そうした生活や文化の変化から、徐々に機能性を高め進化していったウォッシュスタンドが、大理石を使用するスタイルになったのは19世紀初頭のこと。
当時ヴィクトリア女王の時代であったイギリスでは、豪華でエレガントなヴィクトリアン様式のベッドルームには欠かせない家具の1つとして重宝されました。
20世紀に入ると、水道や配管の普及に伴い表舞台で見ることが減っていきますが、その機能性やデザイン性の高さから、現代でも十分活躍してくれるアンティーク家具として根強い人気を集めています。
【シーン別】ウォッシュスタンドの活用法
水道のある生活が普通となった現代では当時と同じような使い方をする機会があまりないかもしれませんが、その他にも様々な活用法があるのでシーン別にご紹介していきます。
【キッチン・ダイニング】調理台・家電製品置き場として
耐水性のある大理石を使用しているタイプは、キッチンに置いても水跳ねを心配することなくご使用できます。
また大理石は耐熱性もあることから家電製品を置く台としても重宝でき、キッチングッズやお皿などもたっぷり収納できて実用的です。
【リビング・店舗】ディスプレイ台として
リビングでは本やブランケットなどをスッキリ収納しながら、天板には好みの雑貨やお花などが飾れて素敵なインテリア空間を作ることができます。お店の中でウォッシュスタンドをうまく使いながら商品を陳列すれば、一風変わったオシャレな店舗什器として目を引くこと間違いなしです。
【書斎】デスクやワークスペースとして
椅子と組み合わせればデスクとして使用することも可能です。普通のデスクとは違った雰囲気で気分も上がりそうです。
ジャグとボウルを置くため天板の面積が広めに作られたウォッシュスタンドも多く、作業スペースとしても十分に確保できます。
【寝室】ドレッサーとして
当時寝室に置かれたウォッシュスタンドは、顔や手を洗うだけでなく鏡を使って身なりを整える場でもありました。そのためミラー付きのウォッシュスタンドはドレッサーとして使用するのにピッタリといえます。
チェストやデスクなどの要素も併せ持つため、お気に入りの小物をしまったり、のんびり読書を楽しんだりと、自分だけの特別なリラックス空間を演出してくれます。
【庭・玄関】ガーデニング用品として
金属製のものは庭や玄関先で花台・プラントスタンドとして使用するのもオススメです。もちろん室内でもスタイリッシュに植物を飾ってくれます。
はめ込まれたボウルに寄せ植えしたり、水を張ってお花を浮かべてみたり色々な使用法が楽しめて、高さもあるので植物のお手入れも楽にできます。
