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ロココ調とは

ロココ様式(ロココ調)とは、18世紀のブルボン朝後期におけるフランスの文化・芸術の表現形式です。主に絵画・工芸等の装飾美術に対して用いられます。前代のルネサンスやバロックの壮麗で厳格な古典主義様式に代わって、貴族や新興富裕層の趣味を反映した、アシンメトリーや曲線を使った、中間色による軽やかで優雅な表現を特徴としています。フランスにはじまり、イギリスやイタリア・ドイツなど、ヨーロッパ各地の宮廷や市民に広まりました。

ロココ様式までの流れをおさらい

ロココ様式はバロック様式の流れを引き継いで生まれた

ロココ様式が生まれる以前、ルイ14世が治めた17世紀後期、イタリア発祥の自由豊麗な「バロック様式」が、古典主義的荘重さを持つフランス・バロック(ルイ14世)様式に結実されます。そして18世紀初期に、軽快さや繊細さが付加されたものがロココ様式となりました。装飾のモチーフ等が似ていることから、ロココ様式は後期バロックの一様式ともされることもあります。

また、これ以外にもH.マンサールやP.ルポートルが設計・改装して1701年に完成したヴェルサイユ宮殿の「牛の眼の窓の間」の装飾がロココ様式の始まりともされます。建築の内装はこの後も明るく軽快な装飾が続けられます。

「ロココ調」家具の特徴とは?

カブリオールレッグ

ロココ様式の家具を代表する様式の一つとして、カブリオールレッグがあります。日本語では「猫脚」とも呼ばれ、S字の曲線が特長です。

カブリオールレッグ

●カブリオールレッグについての詳細はこちらの記事をご覧ください。

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ロココ様式のトレードマーク、「アカンサスの葉」と「貝」の紋様

また、紋様には「アカンサスの葉」と「貝」がモチーフとして使われています。この他にも婦人像や、渦巻きといった図柄もあります。また彫刻がバロック様式よりも浅く彫られるようになったという特徴もあります。

ロココ調 アカンサスの葉

パーケット(寄木細工)

ロココ様式に特徴的な貝や真鍮の象嵌(ぞうがん)や、東洋(シノワズリ)風の漆塗と蒔絵もこのころ。また17世紀からイギリスで流行をはじめていた寄木細細工「パーケット」でつくられた家具も多く見られます。

イタリアアンティーク テーブル

アンティーク 象嵌

ロココの名は貝や小石等による人口洞窟を意味するフランス語「ロカイユ」が語源とされ、装飾性に富む様式を指す語として19世紀初期頃から使われたとされます。服飾や絵画、建築などにも影響するなど、芸術と生活を融合させる総合芸術的な動きもみせました。

フランス・ロココは2つの時期に分けられる

ではここで、フランス・ロココ様式を中心にロココ様式の歴史や家具の特徴、また当時流行したデザインなどを時系列に沿ってご紹介していきます。フランスのロココ様式は大きく分けて以下の2つの時期に分けることが出来ます。

  • レジャンス(オルレアン公)様式期
  • ルイ15世期

レジャンス(オルレアン公)様式期

バロック様式からの過渡期にあたるスタイルで、家具の小型化が進み始めたころです。
1715年、ルイ14世が亡くなり、王の甥オルレアン公が、王の幼いひ孫ルイ15世を補佐するため、摂政(せっしょう)を置く時代が始まったことから、摂政(レジャンス)期と呼ばれています。王権や宗教の権力が衰え始め、産業発展で台頭した上流市民や貴族らによるサロン文化が開花します。この貴族たちのサロンづくりが、ロココ様式の発展を促していくことになります。

ロココ様式は家具だけでなく建築・絵画にも影響を与えた

「建築」

建築では、1717年にオップノールがパレ・ロワイヤルに明るい装飾の「楕円形の間」等を製作。ヴァセやオードランらも室内装飾に新風を吹き込みました。そして19年にはコットがトゥールーズ館の「黄金の間」の改装を手掛けるなどしてレジャンス様式を代表しました。

「絵画」

絵画の世界では、ジャン=アントワーヌ・ヴァトーが、「シテール島の巡礼」で貴族の日常や感情を繊細甘美に描いた「雅宴画(フェート・ギャラント)」を発表しました。このヴァト―が何度もその絵画に登場させた女性用の宮廷室内着である「ヴァトー・プリーツ」が流行したのもこのころです。

ロココ様式の完成形。ルイ15世様式期

1723年にルイ15世がついに成人すると、ロココ様式は最盛期へと向かいます。
貴族達はサロンの快適性を求め、居室の公私が区別されました。ボフランが35年からパリのスービーズ館の「冬の間」等を手がけてロココ装飾の典型を成し、外観は簡素で古典的、内部は華麗なロココ式邸宅を数多く手掛けます。建築様式に曲線や左右非対称のデザインが増えていきました。

ルイ15世 チェア

才色兼備、ポンパドゥール夫人が発展させたサロン文化

1745年、王の公式愛妾となったポンパドゥール夫人は、セーヴル窯を起こし、官能的な「牧歌画(パストラル)」の創始者ブーシェらと共に磁器や舞台等にロココを広め「ポンパドゥール様式」の名も生むなど、才色兼備な女性でした。自ら服飾デザインをするなどして活躍し、ルイ15世同様、サロンの主宰として文化的な影響力をもちました。

女性に愛されたサロン家具の数々

その影響もあってか、サロンの中心は知性を持ち合わせた美しい女性でした。そのため、当時の女性の趣向に合わせて、家具の小型化やパステルカラーの色合い、また曲線を多用した感覚に訴えるデザインが進んだと言われています。こうしてロココ様式は女性的な発展を遂げて行きました。サロンにはブートワールと言う女性専用の個室が設けられ、そこに化粧用のテーブルや、カナぺ、コモドなど小振りな家具が置かれました。

カナペ(長椅子)

カナペは英名ではセティと呼ばれる長椅子です。当時のカナペには背もたれや座面に白鳥の羽毛を使用したものもあったとか。曲線を多用したつくりとカブリオールレッグがロココ調カナペの特長です。

カナペ ロココ調

シェーズ・ロング(寝椅子)

シェーズ・ロングは寝椅子とも呼ばれ、古くはエジプト時代から使われてきたソファです。脚を伸ばしてくつろぐことができます。ロココ期には優雅な彫刻が施されたものがつくられました。

シェーズロング

ビューロー

ロココ様式期のビューローは特にインテリアとして重要なアイテムだったようです。中が細かく仕切りで分かれたものが多かったようです。

ライティングビューロー

コモード(小箪笥)

コモードは日本でいうところの小箪笥です。ルイ15世期にはチェストも小型のものが好まれました。象嵌を使用したもの、天板が大理石のものなどもありました。

ルイ15世様式 コモド

ルイ15世期にはジェルマンの流麗な金銀細工やメッソニエの多様華麗な家具、白のエナメルで塗装されたキャビネットや金装飾など、ロココ様式はさらに豪華できらびやかに進化して行きました。

各国におけるロココ様式の特徴

ルイ14世時代に既に欧州文化の中心地となっていたフランス生まれのロココ様式は、ほどなくして周辺各国へ波及してゆきます。ドイツやオーストリア、スペイン、ロシア等の宮廷やイギリスやイタリア等の上流社会において、建築や彫刻・家具・陶磁器・絵画・音楽・服飾等が、地域毎の特色を有しながら多様に開花しました。

イタリア

イタリア・ロココは、後期バロックの延長で曲線や花模様等の豊かな装飾が特徴です。木材は明るい色調で寄木や彫刻・金泥・絵・着色が施され、様々な色柄の大理石や鍍金の青銅金物も使われます。

コンソールテーブル 猫脚

イギリス

「クイーン・アン様式」アン女王期(1702-14)・・・機能性重視の比較的シンプルな家具が作られます。このころ、現在のチェスターフィールドの原型であると言われる安楽椅子「ウイングバックチェア」が登場しています。

ウイングバックチェア
「ジョージアン様式」ジョージ1世期(1714-27)・・・劇的豪華な意匠へと変化し、脚先の爪が玉を掴む形のになっている「クロー&ボールフット」意匠等が初期の特徴。

クローアンドボールフット

玉を掴む爪は鳥やライオンの爪が多い。

「チッペンデール様式」ジョージ2世期以降・・・背にリボン装飾が絡む華麗なリボンバックチェア等で知られた名工にちなんでこう呼ばれている。クイーン・アン風、ゴシック風、ロココ風、中国風の4作風に分けられます。

ドイツ

独創性に欠くものの優美さや流麗な線が強調され、宮廷用はフランス、市民用はイギリスやオランダ、南部はオーストリアの影響を受けました。

自由で華麗なロココ期の終焉

ルイ16世期と終焉 18世紀中頃になるとポンペイ等の発掘により欧州に古代ブームが起こり、フランスでも古典的風潮が強まりロココ様式にも影響します。
新世代のスフロらが古典様式の建築を行ない、ガブリエルの改装やルソー兄弟の室内装飾も直線的で理知的な作風に。また、フラゴナールらの後期ロココ絵画も退廃的との非難を受け始めました。

トレンドは再び「古典」様式へ。ルイ16世とマリー・アントワネット妃の時代

1774年からルイ16世とマリー・アントワネット妃の治世となると、古代のエジプトやギリシャ、ローマの主題が流行するなど古典主義的傾向が強まり、15世様式後期を含め「ルイ16世様式」とも呼ばれます。
そして89年、長年の浪費や戦争負担等により王国は革命を招いて崩壊し、宮廷やブルジョワが支えたロココ様式も終焉を迎えることとなりました。

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