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コムバックチェア(ボウバックチェア)とは


コムバックチェアは、イギリス発祥の伝統的な木製の椅子「ウィンザーチェア」の一種。背もたれが「櫛(コーム)型」に見えることに由来します。
また、トップ部分である笠木が弓の形状に似ていることから、「ボウバックチェア」とも呼ばれています。
17世紀に確立されたスタイルで、ウィンザーチェアの中でも最も古い形式として知られています。軽くて丈夫、安価に生産ができるなど、その優れた実用性およびデザイン性で世界的に愛用されている椅子です。

「ウィンザーチェア」について、以下でも解説しています。こちらもぜひご覧ください。

⇒RAFUJU MAG 辞典「ウィンザーチェア」のページはこちら

コムバックチェアの特徴


コムバックチェアは、その名の通り櫛(コーム)のような形をした背もたれが特徴的です。笠木と呼ばれる背もたれのトップと、縦に伸びた軸棒が組み合わさって構成されています。なお、これはウィンザーチェアに共通していることではありますが、軸棒や脚部のパーツが厚く作られた座面に直接つなぎ合わせられていることも特徴の一つです。

また、コムバックチェアは現在までに多様な派生デザインが生み出されています。17世紀に登場した「スティックバックチェア」を原形に、19世紀にかけて、フィルドバックチェア、スピンドルバックチェア、ゴールドスミスチェア、エックスバックチェア、ラスバックチェアなどが生まれました。その時代に流行したデザインが反映され、芸術性を凝らした華やかなデザインや、反対に洗練された簡素なデザインが繰り返し登場。コムバックチェアは、長い歴史の中で多様な変化を重ねてきた家具ともいえます。

彫刻等の装飾

コムバックチェアは、ウィンザーチェアの種類の中でも比較的装飾性が低く、豪華な装飾はあまり見られません。しかし、時代によってはコムバックチェアに分類される椅子にも、精巧な彫刻や曲線的な加工などが見られることがあります。コムバックチェアから派生したデザインの一つ、「フィドルバック」には背板にフィドル(バイオリン)のモチーフが取り入れられています。これは当時流行した「クイーンアンチェア」という花瓶のモチーフがデザインされた椅子に影響されて作られたものだとされ、上流階級の間で流行しました。また、円形の彫刻を施したものを「ホイールバック」と呼びます。

更に、19世紀前半に登場した「スピンドルバックチェア」には、軸棒や脚部に糸巻きのようなデザインが施されています。背もたれの笠木には彫刻が施されるなど、エレガントさが意識されました。

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コムバックチェアの種類

コムバックチェアは、シンプルな構造ながら時代の流れや流行によりいくつもの派生デザインが生み出され定番化してきた椅子です。別名ファンバックチェアもしくはボウバックチェアとも呼ばれています。どちらが正しい名前という事は無く、扱うメーカーやブランド、ショップによって様々です。


デザインのバリエーションとしては、背もたれが縦に長く笠木は小さめの「ゴールドスミスチェア」、アーコール社が世に広めた軽量で扱いやすい「スティックバック」、スポークがクロスしているスタイリッシュな「クロスバック」などが存在します。
また、上記で挙げた「フィルドバッグチェア」や「スピンドルチェア」などのように装飾によって名前が変わり様々な呼ばれ方をしています。

コムバックチェアの誕生


コムバックチェアのルーツは、17世紀後半頃のイギリス中南部で誕生したウィンザーチェアにあります。一般庶民にとって家具は大変高価なものだった当時、庶民の彼らは上流階級が使う家具を真似て自ら作りました。そこで生まれたウィンザーチェアの初期デザインが、コムバックチェアだったのです。コムバックチェアは、軽量で丈夫、そのうえ安価で生産できたため、瞬く間に普及し、上流階級にも伝わるほど人気を博します。

世界に影響をもたらしたコムバックチェア

アメリカン・ウィンザーチェア

18世紀前半のアメリカでは、ウィンザーチェアの生産が始まります。18世紀後半になると、欧州に輸出するほどの一大産業にまで発展するように。製造開始したばかりの当初は、イギリス製品を模倣することから始まりましたが、次第に現地事情に合わせたデザインが生み出されます。フープバックとの折衷型や、「ボストンロッカー」と呼ばれたロッキングチェア型を生むなど、アメリカ独自の「アメリカン・ウィンザーチェアの文化が形成されました。

北欧や日本での人気に支えられたウィンザーチェア

先にも触れた通り、20世紀後半のイギリスでは、パイプ椅子等の普及によりコムバックチェアの需要は下がり始めていました。しかしこの一方で、北欧諸国や日本では、イギリスのウィンザー家具が持つ実用性と芸術性が注目され、新たに意匠や製品を創造する「リデザイン」の動きを生み出します。北欧諸国では著名デザイナーによる優れた製品が数多く創作され、今に継承されるデザインがいくつも生み出されました。


また、日本でも1930年代に始まった用の美を尊ぶ「民芸運動」と結びつき、多くの椅子が模造されます。手工芸に優れた日本の家具作りは、技術はもとより品質や価格にも優れ、やがて海外へも輸出されるほどに成長。日本の生活様式はどんどん西洋式になり、一般家庭や店舗に普及していきます。コムバックチェアも例外なく人気を博し、輸出産業が衰えたあとも定番品として存続しました。

イギリスで生まれたコムバックチェアは、こうして歴史の発展とともに西洋諸国だけでなく日本などのアジア圏にも広まり、ライフスタイルに大きな変化をもたらしたのでした。

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