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アンティーク家具について

質の高い手仕事。美しい日本の木工品で見る伝統技術とその種類

物が手に入りやすい現代と相反して、手の掛かる物の価値が見直されるような流れも、ここ数年感じます。少し値段が張っても、その「使いやすさ・美しさ」が凝縮された “手仕事” を手に取るひとも増えてきています。
私たち日本人が目にする工芸品の中でも、とりわけ「木」でできたものは、身近な存在ではないでしょうか。今や世界にも誇れる質の高い技術は、長い歴史の中で文化やひとに育てられてきたのです。
今回のRAFUJU MAGでは、日本の木工の柱となる「5種類の伝統技術」について、じっくりお話ししていきますよ。

日本の木工をささえる5つ伝統技術のこと

おしりに必ず “物” がつく、日本の伝統的な木工の名前。定義として、その技術自体のこと、もしくはその技術を使って作られた木工品のことを指しています。

日本の家具の歴史には欠かせない「指物」

指物の伝統工芸
箪笥、棚、抽斗(引き出し)と、いわゆる箱型の木工品には欠かせない「指物(さしもの)」。
何より指物の一番の特徴は、釘を使用していないこと。板同士を差し合わせることで組み立てていきます。そんな理由から板物(いたもの)と呼ばれることもあるようです。釘(鉄)を作るのにお金が掛かったことや、木材自体が非常に堅く釘を使うことが困難だったことなど、指物技術が高度になった背景には、そういった材料面のこともあったのでしょう。
日本でも指物が繁栄したのは、京都、江戸、大阪。茶道や商いの文化とともに広まりましたが、地方や時代によって望まれる指物も異なり、木材や装飾性にもそれぞれの個性が表れています。 また、木の接ぎ方一つにも工夫が凝らされ、機能性はもちろん、美しく見せるための様々な組み方が生み出されました。

木を回転させて削る「挽物」

輪島塗の蒔絵椀
ろくろや旋盤で回転させた木材の表面に鉋(かんな)を当てて形を削り出していく「挽物(ひきもの)」。
“挽く” と言っても、私たちがよく見かける台の上で “挽く” ような平鉋(ひらかんな)ではなく、棒状の “ろくろ鉋” というものを木材に当てて、椀、丸盆、茶托などを作り上げていきます。
挽物製品は職人による分業で作られており、伝統的な木工品の中でも量産が可能となっています。日本を代表する挽物工芸である「漆器」を例に説明すると、まず器の形を作る「木地師」、器の堅牢度を増すために下地を塗る「下地師」、漆を塗る「塗師(ぬし)」、漆で絵を描いた上から金や銀を蒔く「蒔絵師」に分かれて、一つの器を完成させていくのです。
日本の挽物産地には東北や北陸などが挙げられますが、その中でも特に有名なのが漆器作りが盛んな石川県。石川県には3つの漆器産地があり、「木地の山中(加賀市)」「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」と称されています。

職人の技がまっすぐに表れる「刳物」

刳物の刳り鉢
「刳る」というのは彫って窪みを作るということ。つまり「刳物(くりもの)」というのは木を鑿(のみ)や鉈(なた)などの刃物でくり抜いて作る容器などを指します。
日本で最も古く原始的な木工技術であり、大きいもので言えば臼、小さいものであればしゃもじや匙などが挙げられます。主に宮島(広島)、伊勢(奈良)が、日本では有名な産地でしょうか。
手作業でくり抜かなくても、「挽物の技術を使えば良かったのでは…?」と感じるかもしれませんが、当初挽物で作れたのは椀などの小さいもののみで、戦後大型旋盤が普及して初めて、大きな臼や木鉢などが電動旋盤で製作できるようになりました。
削り跡を粗めに残すこともあれば、美しく平らに処理を施したり、または彫りで絵柄を作り出したりと、作品によって様々な趣が表れます。道具と手だけで彫るというシンプルな技法である分、職人の腕がそのまま物に表れるとも言えますね。

なめらかな曲線が美しい「曲物」

曲げわっぱの弁当箱
薄く削った木材を円形や角丸に曲げて作り上げる「曲物(まげもの)」。最近では日用品としてもよく目にするようになった「わっぱ」や「おひつ」なども、この曲物に含まれます。
木を曲げる方法は基本的に2種類で、湯につけてやわらかくして曲げる「湯曲げ」と、鋸で目を入れて曲げる「引曲げ」があります。
ぐるっと囲むように曲げた側面は、樺や桜の皮などで継ぎ目をとじます。産地とされているのは、大館(秋田)、博多(福岡)、木曽(長野)。側面には檜や杉などのしなやかな木材を使いつつ、蓋板と底板には木目の美しい木材を取り入れたりすることもあります。
また、この曲物を大きく分けると白木のものと漆塗りのものがありますが、白木のものは優れた調湿作用でご飯が冷めても美味しく、漆塗りのものは抗菌作用があり防腐効果が期待できる上に、塗り直しの手入れを施せば何十年と使えるメリットがあります。
丈夫で長持ちする「手入れ・修理も可能な「漆器」のはなし」については、こちらでもご紹介していますのでぜひ読んでみてくださいね。

美しく、そして漏れない木のうつわ「結物」

結物の木製おひつ
私たちにも身近な「桶」や「おひつ」を見てみると、側面に短冊状の木片が詰められていますよね。このように木片を円筒に沿って並べ、竹や金属のたが(輪)で締めたものが「結物」です。技法は鎌倉時代に生まれ、酒、醤油などの醸造業を中心に発展し、室町時代から本格的に広まりました。
木材には曲物同様、檜や杉、サワラが使われることが多いのですが、このいい具合にカーブした木片は曲げているわけではなく、結物の形に合わせて湾曲させた鉈(なた)で割っています。”漏れない” 結物一つを完成させるのには、側面が丸くなるように削る技術や、水が漏れないように木を組み合わせる技術など、高度な技術が必要でした。
代表的な産地は宮古(岩手)、木曽。海外でももちろん結物の技術はありますが、強度、美しさを極めているのは日本の結物が誇れるものでしょう。

最後に

時には道具すらも自分で作り、その道具を手に作り上げていく一つひとつの木工品。人の手から生み出されるものは、私たちの想像以上に精巧なものでした。
それぞれの伝統技術と手仕事について、今後また深く取り上げていきたいと思いますので、楽しみにしていてくださいね。

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