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硯箱(すずりばこ)とは

硯箱(すずりばこ)とはその名の通り、墨を入れておく「硯」、文字を書くための「筆」、墨汁を継ぎ足すための「墨」、墨を研ぐための水およびその「水」を入れておく「容器」、 その他、「小刀」「錐(キリ)」など、毛筆で字を書く際に必要な各種書道具を収めた箱の総称です。
硯箱には現行品もありますが、ここでは骨董品としての硯箱をご紹介していきます。

骨董硯箱の、2つのタイプ

■平硯箱

蓋が深めで、本体を覆うように作られたものが多く、吹き仕上げのシンプルなものから蒔絵や螺鈿が施された豪華なものまで様々です。また、平硯箱がお重のように何段にも重なったものを、「重硯箱」と呼びます。

■引き出し付き硯箱

天板に横開きの蓋が付き、下には引き出しが複数個付いているものが多いです。
また、天板に持ち運び用の取っ手が付いている物もあります。


また意匠箪笥のような大きな金具が付いている物もあります。
こちらは持ち運びができる小箪笥のような佇まいが特徴的です。

硯箱の中には、それぞれの道具を配置する際には、分かりやすいように凹みのような落し込み加工を施したり、筆が転がらないような仕切り板をはめ込んだものもあります。

素材と装飾

漆仕上げは硯箱の中で最もポピュラー

木材をベースとした漆器が一般的であり、装飾も同じく、蒔絵や色鮮やかな貝殻をはめ込む「螺鈿(らでん)」などが施された作品が多く見られ、 作家においても蒔絵師、漆工家などが多くの硯箱を現在に残しています。

「蒔絵」や「螺鈿」について詳しく知りたい方は「漆器」についての記事も併せてご覧ください。

漆器」のRAFUJU MAG 辞典ページはこちら

フタに装飾を施した彫刻装飾

漆仕上げをせずに、素材の木地を活かしたような作品や、「鎌倉彫り」のような彫刻装飾で仕上げた作品もあります。

ケヤキなど高級素材も。硯箱の木材の種類

欅(けやき)、黒柿(くろかき)、ローズ、オーク、カリン、紫檀といったいわゆる高級な木が使われているのも特徴です。
またその場合には、漆塗りの中でも木目を見せる「拭き漆」によって仕上げられているものが多く見られます。

日本人にとっての硯箱とは?

日本における歴史や由来は、筆と墨を使って文字を書くことが一般的となった、奈良時代が起源とされています。
平安・室町・江戸と時代が進むにつれ、その形状や装飾などが進化すると共に、 他の骨董品と同じく、美術品としての価値も高めていきます。特に、貴族、武家といった上流階級の間で好まれたようです。
現在も書道具として生産・使用されており、国宝レベルの骨董品から現代の日用品として安価に手に入るものまで様々な硯箱があります。

『源氏物語』や『枕草子』にも登場した硯箱

平安時代に書かれた『源氏物語』や『枕草子』の一節に硯箱(文中では「御硯」と表現)が登場することからも、これらの作品を書く際にその手元には硯箱があったこと。また、当時文字を書く人にとって、硯箱が一般的であったことが想像できます。

なお、同じく毛筆で字を書く文化を持つ中国や朝鮮といったアジアの他国では、日本のように硯を箱に収めるという文化はなかったようで、硯箱は蒔絵と同様、 漆器における日本独自のものと言えます。

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