お買い物こちら

キーワード検索

アンティーク辞典アンティーク辞典

螺鈿( ラデン)

螺鈿とは主に漆工芸で使われる装飾技法の一つです。
名前にある「螺」は螺旋状の貝殻を「鈿」は金属や貝で飾ることを意味しており、夜光貝や蝶貝などの貝殻を装飾に用いるのが特徴です。
海に行った時に内側が虹色に輝いている貝殻を見たことがあるかと思いますが、螺鈿はその真珠層という光沢を帯びた部分を使用した装飾で、その高級感あふれる芸術性の高い見た目は世界中で高く評価されています。
ギリシャ・ペルシアを発祥に、シルクロードを通って中国へ渡り、そして日本へ伝えられたのは奈良時代のこと。
それから漆と出会うことで大きな発展を遂げ日本の伝統工芸となりました。
お隣の国・韓国にとっても螺鈿は伝統工芸であり、韓国の詩文や童話をモチーフにした文様、縁起物である吉祥文様など国特有の文化が螺鈿で表現され、国によって違った魅力を感じることができるのも面白いですよね。
時代を超え今も尚人気の衰えない螺鈿は、いつの時代もその息をのむほどの美しさで人々の生活に華やかさと優雅さを与えてくれました。
そんな歴史ある煌びやかな螺鈿の世界を詳しくご紹介していきます!

螺鈿の種類

螺鈿に使用される貝には夜光貝・蝶貝・青貝・アワビ・アコガイなど色々な種類があり、貝の他にも珊瑚や琥珀・亀の甲羅・金属・宝石などといったものが使用されることがあります。
技法としては、「厚貝法」と「薄貝法」の大きな2つに分けられます。そのほか蒔貝法・割貝法・色貝法・浮彫法など数十種類もの技法が存在し、その様々な技術を駆使して美しい螺鈿細工はつくられていきます。
それでは、柱となる技法「厚貝法」と「薄貝法」について詳しく見ていきましょう!

厚貝法

厚貝法とは厚さ1〜2mmまで削った貝を使用した螺鈿の技法です。
まずは曲線を帯びた貝を平らにするため3cm程にカットし、厚さが2mm程になるまでヤスリで削り文様を切り出します。
そして掘り込んだ木地の部分に切り出した文様をはめ込んだり、下地に埋め込んだりする方法です。
厚みのある厚貝は貝自身の持つ色味がしっかりと表現できるため、内側から放たれているような深みと重みのある柔らかな光沢が出ます。貝一つ一つの存在感も際立ちインパクトのある仕上がりが楽しめます。
歴史で見ると薄貝法より厚貝法の方が古く、紀元前3500年には古代エジプトで厚貝細工の装飾が行われていたと考えられています。
奈良時代に日本へ伝来して以降、平安時代には蒔絵と併用し独自に発展していきました。

薄貝法

薄貝法とは厚さ0.1mm以下になるまで薄く削った貝を使用した螺鈿の技法です。
機械で真珠層を削り、摩擦で貝が焼けぬよう水で冷やしながらヤスリで極限まで薄く摺っていきます。
昔は機械が無かったため、貝を数日間煮て真珠層を薄く剥いでいくという方法が取られていました。今でも使われることのある伝統的な方法です。
そうした薄貝は透けて見えるほど薄いため、刃物で簡単に切り出すことができ極めて繊細なデザインをつくることも可能です。
また薄さや透け感を活かし、貝の裏側に金箔や金属粉を付けたり、色漆を塗ったりする「伏彩色(もしくは色底螺鈿)」という技法を併用することが多いです。
薄貝は厚みがないので表面の色味の反射が強く青みを感じやすくなります。そのため薄貝は別名「青貝」とも呼ばれます。
薄貝法の起源としては13世紀以降の中国・元で見られ始めたといわれています。

有名な螺鈿

琉球漆器

14世紀頃の琉球王朝時代から沖縄県でつくられている漆器で、加飾技法が多種多様なところが特徴といえますが、その中に螺鈿も含まれます。
沖縄県の県花「デイゴ」や「シタマキ」「センダン」など沖縄ならではの暖かい気候で育った木々が木材となり、絵柄も「ハイビスカス」「ユウナ」「ゴーヤ」「龍」など沖縄特有の自然や文化をイメージしたデザインが施されたりします。

長崎漆器

1587年頃に長崎でつくられ始めた漆器。螺鈿を取り入れた長崎漆器は「長崎螺鈿」とも呼ばれ大量に輸出されました。
19世紀以降は前述した「伏彩色」が発展し、貿易が盛んであった場所ということもあり海外の作風や技法の影響を受け、絵画のような芸術を感じる表現が特徴の螺鈿作品がたくさん生み出されました。
蒔絵漆器に比べると手が伸ばしやすい価格で、尚且つ見た目も美しい螺鈿家具は人気を博しました。

高岡漆器

1609年に富山県高岡市でつくられ始めた漆器で、代表的な技法に「青貝塗」「勇助塗」があります。
「青貝塗」は薄貝法のような技法を指し、「勇助塗」は石井勇助という人物が編み出した唐風の意匠に錆絵や箔絵を描き、薄貝・箔絵・玉石などを施す総合技法のことをいいます。
薄貝の特徴を巧みに活かし、錆絵や色漆などと組み合わせて高岡独自の繊細華麗な螺鈿漆器をつくり上げました。

螺鈿の魅力

宝石のような輝き

なんといっても最大の魅力は、貝が放つ宝石のような美しい輝きです。
光の当たり方や見る角度によって、オーロラのように常に表情が変わり続けるその姿には目も心も奪われます。
真珠層の厚いものは深い色合いを堪能することができ、薄くスライスしたものは一層一層異なった色彩が出てくるため鮮やかな色合いを楽しむことができます。
貝片を薄く研ぐ作業は、加減によって色味や光沢の出方が変わってくる繊細でシビアなものとなりますが、螺鈿職人の高い技術によってその貝の魅力は最大限に引き出されていきます。
貝の種類によって持っている性質も魅力も全く異なるため “素材は何を使いどのような技法を施していくか” が肝となり、それぞれの作品に螺鈿職人のこだわりと技を感じ取ることができます。
自然物である貝を使用しているので、1つとして同じものがないという点も大きな魅力ですよね。

螺鈿でつくられた家具のご紹介

螺鈿を使ったアンティーク家具

正倉院宝物には螺鈿紫檀五弦琵琶などを中心に螺鈿であしらった品々がたくさん収められており、聖武天皇・光明皇后に大切に愛されていたことがわかります。
平安時代に漆地螺鈿が主流になると、貴族の家具などに螺鈿技術が用いられるようになり、硯箱(すずりばこ)や唐櫃(からびつ)といった身近なものに取り入れられました。
安土桃山時代に入ると、南蛮漆器として螺鈿の箪笥や小物などがたくさんつくられ欧米へ輸出されます。欧米では華美な高級品として人気がありましたが、その後の鎖国によって日本向けの螺鈿家具がたくさんつくられるようになっていきました。

螺鈿を使ったヴィンテージ家具

テーブル・椅子・棚・箪笥・机といった螺鈿家具はヴィンテージの時代にもつくられ、今もたくさん残っています。
螺鈿が施されていることはもとより、家具自体が洋風のデザインのものは異国情緒あふれる雰囲気を醸し出し、アジアンテイストのお部屋に非常にマッチします。


⇒ラフジュ工房のヴィンテージ家具はこちら

螺鈿を使った現代の家具

煌びやかで高級品といわれる螺鈿家具に、何となく近寄り難いイメージを持つ人も多くいるかと思いますが、日常で使えるような家具や小物もたくさん存在します。
全面に螺鈿をあしらったものや、ワンポイントで螺鈿の存在感を光らせるもの、描かれるデザインの種類も本当に幅広いので、自分の好みやお部屋の雰囲気に合わせて選ぶことができます。
どのような空間に置いても、螺鈿の美しい輝きは上品さと華やかさをもたらしてくれます。
家具だけでなくお箸・グラス・アクセサリー・スマホケースなどといった小物にも用いられたり、漆工芸品という枠を超えた様々なアートの世界で使われたりと、現代では多様な場でより身近な存在として楽しむことができます。

お買い物はこちら