庄内箪笥とは、山形県の酒田市、鶴岡市を中心とした庄内地方で作られていた箪笥を指します。酒田市で作られたものと鶴岡市で作られたものでは、異なる特徴を持っています。酒田市で作られていた箪笥の多くは、船箪笥や帳場箪笥であるのに対し、鶴岡市では漆塗りの衣装箪笥を作っていました。
庄内箪笥の特徴
庄内箪笥とひとくくりにされていますが、前述した通り酒田市産の箪笥と鶴岡市産の箪笥では大きく特徴が異なります。それぞれについて解説しています。
酒田箪笥
酒田市で作られていた箪笥は、酒田箪笥とも呼ばれています。作っていた種類は、船箪笥、帳場箪笥がメインであり、錠前金具が文様のあるデザインになっています。また、引き手部分には角型のものが用いられていることがあるのも特徴的です。鶴岡市産の箪笥と比較すると、木目を感じられる仕上がりです。
素材には欅材を使用しているものが多く、船箪笥、帳場箪笥ならではの豪華なつくりにも注目です。
鶴岡箪笥
鶴岡市産の箪笥も酒田箪笥と同様に、鶴岡箪笥と区別して呼ばれています。主に衣装箪笥を生産しており、黒漆塗りで仕上げられているのが特徴です。また、飾り金具は立体的になっており、引き手は丸みを帯びたデザインです。衣装箪笥ということもあり内側に桐を使った設計のものが多くあるのも、鶴岡箪笥ならではの特徴の一つです。
庄内箪笥の種類
庄内箪笥の知工箪笥
酒田市で多く産出された箪笥です。知工とは商船の経理、事務を担当した役職を指します。その知工が使用していた箪笥が知工箪笥です。書類や文具をしまう他、事務机としても使用されていました。机の役割も兼ねていたため、装飾は控えめ、高さは低めにできています。
庄内箪笥の船箪笥
酒田市で多く産出された箪笥です。船箪笥とは商船で貴重品や衣類を保管する箪笥を指します。重厚感のあるデザインながら、水に浮くという特性を持っています。また、多少濡れても中の物まで浸透しない緻密なつくりをしています。
庄内箪笥の帳場箪笥
酒田市で多く産出された箪笥です。船箪笥と同じく金銭や貴重品を管理する箪笥ですが、特に水に強いなどの特性はありません。帳場、つまり会計をする場所に置く箪笥であり、人の目につくもののため豪華なつくりをしているものが多い特徴があります。
庄内箪笥の衣装箪笥
鶴岡市で多く産出された箪笥です。内側に桐材を用いているものが多く、衣類をカビや虫から守る働きがあります。また、鶴岡箪笥は黒漆塗りが特徴。他の茶系の箪笥と比較すると高級感があるのもポイントです。
庄内箪笥の歴史
庄内箪笥は江戸時代後期から作られるようになり、明治30年から大正期にかけて全盛期を迎えた家具です。庄内地方は北前船の寄港地として栄えていました。商船が立ち寄ったことで、船箪笥を良く作られるようになったという経緯があります。また、寄港地であったため商売道具として帳場箪笥も多く生み出されました。
明治中期に入ると庶民の生活が豊かになり、衣装を入れる箪笥が必要不可欠になっていきます。そこで船箪笥や帳場箪笥に代わって、衣装箪笥を作るようになりました。
船箪笥や帳場箪笥といった精巧なつくりの箪笥を作ってきた庄内地方の箪笥は、主な生産物が衣装箪笥になってもその技術を活かしたアイテムが多く、今なお人気のあるブランドとなっています。