こんにちは!ラフジュ工房店長の岩間守です。
今回のタイトルである、「突き板(ツキイタ)」「合板(ゴウハン)」「無垢材」。
当店他店問わず、家具を購入されたことのある方なら、恐らく一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
当店でもよく、
といったお問い合わせをいただきます。
まず、結論から言ってしまいますね。
このテーマ、本当に「無垢材は無条件で一番良いもの!」と思いこまれている方が多くいらっしゃるので、いつにも増して熱が入ってしまいました(笑)
でも、長年国内・海外の多種多様な家具を見て、触れてきた私としては、「突き板」「合板」は悪いもの!という考え方は、ぜひこれを機会に捨てていただきたいんです。
今回は私が持ちうる限り全ての知識・経験を総動員して、皆さんに3つそれぞれの違いや、突き板・合板の良いところをご説明していきたいと思います。
何となく、突き板・合板は良くないもの…とお考えの方がいらっしゃったら、ぜひこの記事を読んでみてください。
きっと読み終わる頃には、突き板・合板に対するイメージがガラッと変わっているはずですよ!
【全部読む暇のない方へ。この記事の要点ざっくりまとめ】
①「突き板」「合板」「無垢材」の違いとは?
┗突き板⇒木材を薄くスライスした板のことで、合板に貼り付けて使用します。
┗合板⇒原木を薄くはいで作った板を何枚を重ね、貼り合わせることによって一枚の板にしたものです。
┗無垢材⇒丸太を切り出してきて、用途に応じて四角や板状に加工したものを無垢材・無垢板と呼びます。
②突き板家具の歴史
┗古くはエジプト文化時代、ギリシャ・ローマ時代におけるヨーロッパ。
その後、1950年~1970年頃に作られた北欧家具はほとんどが突き板家具。
さらに日本でも、江戸時代に作られた船箪笥に突き板が使用されているものが見られます。
③突き板家具の良いところと悪いところ
┗良いところ⇒割れやひずみ・反りなどの心配が最小限に抑えられる点、比較的軽く取り回しがしやすい点があります。
┗悪いところ⇒深くキズをつけてしまうと修理に手間がかかる点、水分が苦手なため水回りには不向きな点があります。
④突き板家具はどんな人におすすめ?
┗家具はなるべく軽い方がいい、模様替えもよくする!という方
┗美しい木目やデザインの家具に惹かれる!という方
┗割れや反りが出にくい、扱いやすい家具がほしい!という方 におすすめです。
⑤無垢板家具はどんな人におすすめ?
┗木自体が大好きで、割れや反りも無垢材の味として丸ごと受け入れる!という方
┗頻繫に家具を移動させることはないから、重さは気にならない!という方
┗木のためなら冷暖房を我慢できる!という方 におすすめです。
予備知識 突き板と合板、無垢材の違い
さて早速ですが、まずは意外と「よく分からないんだよね」という方が多い、突き板・合板・無垢材の違いについて、簡単にご説明していきますね。
突き板とは?
突き板とは、簡単に言ってしまうと「木材を薄くスライスした板」のことです。
木をスライスしたシート、と考えていただければ分かりやすいかと思います。
スライスされた厚さはものにもよりますが、大体0.2ミリ~0.6ミリほど。
厚さによって、「厚突(アツヅキ)」「薄突(ウスヅキ)」と分けられています。
薄くスライスしてあるため、もちろんそれ一枚では家具を作ることはできません。
でも、下記でご紹介する合板と組み合わせることによって、立派な家具を作ることができるんです。
合板とは?
合板は、原木を薄くはいで作った板を何枚も重ね、貼り合わせることによって一枚の板にしたものです。
合板用の原木には、ラワン材が一般的に多く使われており、国産材ではブナ・ナラなどもよく使われています。
この合板に先ほどの突き板を貼り付けたものが、「突き板合板」と呼ばれるものです。
要するに、合板は突き板の土台のようなものとお考えください。
できあがった突き板合板を、家具本体となる芯材に貼り合わせれば…突き板家具の完成です。
無垢材(無垢板)とは?
そしてもう一つ、無垢材についてもご説明していきます。
木材における「無垢」とは、そのものズバリ、何も加工をしていないそのままの「木」のこと。
丸太を切り出してきて、用途に応じて四角や板状に加工したものが、無垢材・無垢板と呼ばれるものなんです。
そうして作られた家具は無垢板家具と呼ばれ、使い込むほどに味わいを増していく、「一生ものの家具」なんて言われることもありますね。
そんな無垢板家具にも弱点はもちろんあって、例えば割れや反りが出やすい、重いなどのデメリットが挙げられます。
何となく、日本では「無垢材=良いもの」というイメージができ上がってしまっていますが、無垢材だからといって全てにおいて優秀!というわけではありません。
実際、高価なアンティーク家具で突き板が使われているものは、数多くあります。
突き板家具、実は歴史のある家具なんです
突き板の歴史、古くはエジプト文化時代!?
タイトルで驚かれた方がほとんどなのではないかと思いますが、そうなんです。
実は、突き板を他の板類に貼り合わせる技法は、歴史を辿っていくと古くはエジプト文化時代にまで遡るんです。
その当時、いわゆる王や貴族などの指導者階級層であった人々が、自身の所有していた家具や手回り品などに突き板を用いていたと言われており、実際にピラミッドの中からそれらの遺品が発見されています。
またエジプトだけにとどまらず、ギリシャ・ローマ時代におけるヨーロッパでも、王朝の所有していた家具などに突き板貼りが見受けられます。
北欧ヴィンテージ家具にも使われている突き板
時代を遡りすぎて、いまいちイメージがわかないという方、ご安心ください。
古代エジプトに比べれば、比較的最近の話である1950年~1970年頃。
その時代に北欧で作られた家具、「北欧ビンテージ家具」はそのほとんどが突き板家具なんです。
海外のビンテージ・アンティーク家具は当店でも非常に人気がありますが、北欧やそれ以外のヨーロッパ諸国のものには、広く突き板が使用されているんです。
上記のような、海外のビンテージ・アンティーク家具に使われている突き板は0.6ミリ程度、ものによっては1ミリ以上あったりと、比較的厚めなものが多いのですが、突き板が厚いと自然と木目が鮮やかに、また見栄えもよくなるため、パッと見た限りでは気付かない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
北欧以外のヨーロッパ諸国でも、突き板は大活躍!
先ほど、「北欧やそれ以外のヨーロッパ諸国のものには、広く突き板が使用されている」と言いました。
その「それ以外」というのが、イギリスやフランスなどの国々です。
デザインが重要視される上記の国々では、家具の見た目の美しさを追及した結果、突き板を積極的に取り入れるようになったんです。
家具の表面に使われている木材は、いわばその家具の顔とも言える部分。
家具も人間と同じで、第一印象はやっぱり見た目でほぼ決まりますよね(笑)
「この顔(デザイン)、すごく私の好みに合う!」というのは、至極当然のことです。
そんな、第一印象を左右する大事な箇所に使われるということは、それだけ突き板のクオリティが高いという証拠。
余談ではありますが、当店でも現地へ直接買い付けに行ったりしているので、その土地の人たちと話す機会がちょこちょこあります。
彼らと話していて強く感じるのは、良いものを最適な形で仕上げたらたまたまそれが突き板家具だった、もしくは無垢板家具だった、というぐらいの柔軟な感性です。
突き板だから悪いとか、無垢板だから良いなんて考えは、一切ない。
「それぞれにそれぞれの良さがあって、最大限その良さをいかすことができればよし」って、とってもシンプルで素敵な考え方だと思いませんか?
日本の箪笥の最高峰、船箪笥にだって使われています
そして忘れてはいけない、日本の家具にももちろん突き板は使われているんですよ。
その歴史はまたまた古く、江戸時代に作られた船箪笥にも、突き板が使用されているものが見受けられます。
船箪笥とは、船が難破した際にも壊れないように、外側は堅い欅材と鎧のような鉄金具に守られ、中には隠し箱が仕込んであるなど、複雑かつ精巧な造りが非常に魅力的な、日本の箪笥の最高峰の逸品です。
古代エジプトから北欧・さらにはイギリス・フランスときて、日本の職人の技術の結晶ともいえる船箪笥にも突き板が使われているとなれば、皆さんもうちょっと突き板について、知りたくなってきたのではないでしょうか。
ここからは誤解されがちな、突き板あるあるをお伝えしていきますね!
突き板勘違いあるある それ、実は間違いなんです
勘違いその① 経年変化を楽しめない?
突き板家具と無垢板家具の違いとして、よく挙げられる「経年変化」について。
一般的には、突き板家具は経年変化を味わうことはできず、木材の変化も楽しみたい人は無垢板家具を買った方がいい、と言われていますよね。
でもちょっと待ってください。
突き板って、そもそも「木材を薄くスライスした板」のことでしたよね。
スライスしたとはいっても、元々は天然木なんです。
無垢の一枚板でなくとも、十分に本物の木の味わいを感じることはできます。
使用されている木材の種類、また同じ種類でもその木ごとに個性がありますし、突き板の厚さや表面を何で塗装しているか、なんていうところから、経年変化の進み具合はそれぞれ異なってきます。
これって、無垢板家具だって同じですよね?
古今東西、様々な家具を扱ってきた私の経験から、自信をもって言わせていただきます。
「突き板=経年変化がない」という考え方は、実は間違いなんです。
勘違いその② 突き板家具は安い?
お値段については、当店としてもなかなかシビアな問題。
この記事を書くのは、私も若干の抵抗がありました。
が、敢えて言わせていただくとするなら、
なぜなら、突き板は歴史ある技法で、高級ブランド家具として名高いドレクセルやカッシーナ・アルフレックス・ドマーニ、その他世間一般で高級と言われるアンティーク家具にも、広く使われているから。
突き板というと、どうしてもスライスされたその見た目から、安かろう悪かろうなんて思われがちです。
でも、ウォルナット材やマホガニー材などの家具には、「パーケットリー(寄せ木細工)」と呼ばれる直線や円の形に木を寄せて模様を作る技が光る、美しい木目をいかした突き板の家具が本当にたくさんあります。
そしてそれらは、決してお安くはありません(笑)
勘違いその③ 突き板合板だと思ったらプリント合板?
一見すると突き板に見える。
でも、実はそうではないものがあるんです。
それが「プリント合板」。
「プリント」という言葉から、なんとなく皆さん想像がついているかもしれませんが、要するに木目を印刷したプリント紙を、芯材に貼り付けて作ったものがプリント合板です。
プリント合板は安価で、気軽に取り入れることができますが、そこはあくまで印刷。
突き板のように、本物の木目の美しさや素材感を感じることはできません。
また、紙を貼り付けているため湿気などにはめっぽう弱く、経年劣化によって表面のプリント紙が剝がれてきてしまうことも。
ご自宅に取り入れようかとお悩みの方がもしいらっしゃったら、メリット・デメリットをよく理解した上でご検討いただくことを、オススメします。
突き板家具の良いところ・ちょっと残念なところ
突き板家具の良いところ
ここまで読んでいただいた方ならきっと、
と感じてくださっているはず。
そんな方々に向けて、あと少しだけ突き板家具の良さをプッシュさせてください。
【割れやひずみ、反りなどの心配が最小限に抑えられる!】
突き板は薄くスライスしてあるおかげで、無垢材に見られる最大の短所ともいえる、割れや反りなどが極限まで軽減されます。
そもそも、なぜそういった割れや反りが起こってしまうのか?というと、お部屋の冷暖房や湿度の影響によって、木が収縮するからなんです。
でも、だからといって冷暖房を使用しない生活というのは…ちょっと想像してみましたが、私は無理でした(笑)
その点突き板家具は、現代の私たちのライフスタイルに非常に適した、扱いやすい家具と言えます。
【軽くて取り回しがしやすい!】
家具というと、どうしてもその重さが気になるところですが、突き板家具については比較的軽いものが多く、お部屋の模様替えなどの際にも動かしやすい利点があります。
模様替えだけではなく、お引越しをよくされるという方にも、とってもオススメです。
突き板家具のちょっと残念なところ
さて、ここまで散々突き板家具の良いところばかりをお伝えしてきたので、ここはご理解いただきたい、というちょっと残念なところも、正直にお伝えさせていただきます。
【傷つきやすい家具には注意が必要】
使用されている突き板の厚さにもよりますが、うっかり深く傷をつけてしまうと、修理をするのに手間がかかってしまう場合があります。
例えばテーブルなど、日常生活で特に使用頻度の高い家具の場合には、注意が必要と言えるかもしれません。
【水分は苦手】
また、突き板家具は何度もお伝えしているように、薄くスライスした木を貼り合わせて作られた家具です。
そのため、残念ながら水分はちょっと苦手。
例えば、濡れたものを長時間置きっぱなしにしていると、剝がれてきてしまう恐れも。
台所などの水回りには不向きと言えます。
最後に
無垢板家具はこんな方にオススメ
・木自体が大好きで、割れや反りも無垢材の味として、丸ごと受け入れる!という方
・頻繫に家具を移動させることはないから、重さは気にならない!という方
・木のためなら冷暖房を我慢できる!という方
突き板家具はこんな方にオススメ
・家具はなるべく軽い方がいい。模様替えもよくする!という方
・美しい木目やデザインの家具に惹かれる!という方
・割れや反りが出にくい、扱いやすい家具がほしい!という方
と思っていただけていたなら、私もここまで熱く語ってきたかいがあるというものです。
同じ家具とは言っても、無垢板家具と突き板家具、それぞれに良いところとちょっと残念なところがあります。
突き板というだけでチープなイメージを持ってしまったり、逆に無垢材というだけでとても良いものだと思い込んでしまったり…。
なんとなくのイメージでその家具の価値を決めてしまうのは、とってももったいないことだと思うんです。
当店をご利用いただくお客様には、ぜひそれぞれの家具の性質を踏まえた上で、よりご自身の生活に取り入れやすい方を選んでいただけるよう、全力でお手伝いさせていただきます。
家具選びにお困りの際には、どうぞ私共にお任せください!