ミルクガラスとは乳濁材を加えて作られたガラスのことで、食器・ランプシェード・花瓶・装飾品など様々な製品の素材に使用されています。色味はまさにミルクを溶かし入れたような乳白色で、材質はとても丈夫です。誕生したのは16世紀頃ととても古く、その長い歴史の中でアメリカを中心に欧米で大流行しました。特にアメリカンヴィンテージ品には熱狂的なコレクターがたくさんいるほど世界中で根強い人気を誇っています。
ミルクガラスの特徴
特徴その1. 温かみのある優しい乳白色
ほんのり透け感のある白く濁ったような乳白色からは優しく柔らかい雰囲気が漂います。これはガラス成分に触れると不透明な粒子を形成する「乳濁材」が、透明なガラスに混ぜられることで生まれる色合いです。乳白色の他にも様々なカラーバリエーションがあり、いずれの色も少し白を混ぜたような柔らかい色味をしています。
そうした色合いに加え、厚みのあるぽってりとしたフォルムもまた大きな魅力となっており、温かみと味わいを感じる佇まいはレトロ感たっぷりです。
特徴その2. 滑らかで個性豊かな表情
ミルクガラスの表面を撫でるとツルツルとした心地よい肌触りにうっとりする方も多いのではないでしょうか。ガラスは元々ツルツルしていますが、乳濁材を加える製造法によって表面がより滑らかな状態になります。表面が滑らかだと汚れが落としやすく、お手入れが楽になるのも嬉しいポイントです。その反面一つ一つ手作業で作られるため個体差があり、筋・斑点・練りムラ・シワなどがよく見られます。そうした部分は欠陥ではなく味と捉えられ、趣や温もりを感じる理由の一つとなっています。
特徴その3. 熱に強く割れにくい
ミルクガラスはホウ素が添加されているので熱膨張率が低く、熱に強い性質といえます。また温度変化にも比較的強いので割れにくく保温性にも優れています。そんな丈夫な造りのため、スタッキング仕様のテーブルウェアもたくさんあり実用性抜群です。
しかし極端に激しい温度変化、電子レンジやオーブンの使用によって破損することもあり、特にヴィンテージ品は経年によって繊細になっているので扱い方には注意が必要です。
ミルクガラスの歴史
ミルクガラスは16世紀頃のフランス・ヴェネチアで初めて作られたといわれています。きっかけは、中国の磁器のような白くて硬い素材を作り出そうと、ガラスを代用し乳白化剤を混ぜ込んで新たな技術開発を試みたことでした。そうしてできた乳白色ガラスは当時「ラッティモ」「模造磁器」などと呼ばれ、ミルクガラスという名称は比較的新しく付けられたものと考えられています。そしてこの頃からすでに、白色だけでなく青・黄・ピンク・黒など様々なカラーバリエーションが展開されていました。
時は進み1900年頃になるとアメリカで広く製造されるようになり、中でも1940〜1970年代は黄金期として特に人気を集めました。メーカーやブランドによって作り出されるミルクグラスの特徴は様々で、装飾のないシンプルなデザインであったり、ポップなペイントが施されたり、エレガントな形状に作られたり、エンボス加工で華やかな模様を施したりと、個性豊かなミルクガラス製品が次々と生み出されました。代表的なブランドとしてはアンカーホッキング社の「ファイヤーキング」が挙げられ、一般家庭やレストランなどで使用する定番の食器として、またアドバタイジング(企業広告)のアイテムとして愛用されました。
しかし1980年代になると生産コストの高騰やプラスチック産業の台頭を理由にミルクガラスの製造は衰退し、ファイヤーキングも1986年に生産を終了します。生産終了後も人気は続き、当時のデッドストックや中古品がヴィンテージとして高値で取引されるようになっていきました。そして長い時を経て2011年に、アンカーホッキング社は日本とパートナーシップを組み「Fire-King Japan(ファイヤーキング ジャパン)」を設立。当時のファイヤーキングアイテムの風合いを再現した商品が、職人によるハンドメイドで復刻されました。本物のヴィンテージ品も復刻品も、それぞれでしか味わえない独自の魅力を放ち、ファイヤーキングだけでなく他メーカーのヴィンテージ品もまた、今を生きる多くの人の心を魅了し続けています。
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ミルクガラスの代表的ブランド
先述した「ファイヤーキング」を筆頭に、優れたミルクガラス製品を生み出してきたメーカー・ブランドがたくさんあります。特に代表的なブランドを8つご紹介します。
ファイヤーキング
アンカーホッキング社が1941年に販売したブランド。耐熱性マグカップが最も生産量の多いポピュラーなアイテムで、中でも人気が高いのは「Jade-ite(ジェダイ)」という翡翠色のシリーズです。他にもキャラクターが描かれたポップなものやアドバタイジングのものなど豊富なシリーズがあります。
パイレックス
1915年設立のイギリスガラス製造メーカー「コーニング社」で生まれた耐熱ガラスブランド。ビビットカラー・ドット柄・花柄など華やかなデザインに特徴を持つ「オールドパイレックス」のシリーズが人気です。その他「スノーフレイク」「クレイジーデイジー」などのシリーズも有名です。
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ヘーゼルアトラス
ヘーゼル社とアトラスグラス社が1902年に合併してできたヘーゼルアトラス社のブランド。代表的なアイテムには、動物や子供のイラストがプリントされた「チャイルドシリーズ」、ストライプ柄の「キャンディストライプ」、段を重ねたような「モダントーン」などがあります。
フェデラル
1900年創業の老舗ガラスメーカー「フェデラル社」のブランド。ライバル的存在だったファイヤーキングと酷似したデザインであるもののフェデラル社の頭文字「F」の刻印で見分けることができます。マクドナルド・航空会社・プロスポーツチーム・ディズニーなど数多くの有名大手企業のアドバタイジングマグを手掛けました。
マッキー&ジャネット
「マッキー」は前身である会社を1853年に立ち上げ、1908年に「マッキーグラスカンパニー」と社名変更し、オパールガラスやマッキー独特の黄色味がかった翡翠カラーアイテムによってガラスウェアの世界で有名になっていきました。1931年には「ローレル」という多彩なカラーラインナップのディナーウェアシリーズが販売されました。
一方「ジャネット」は1898年創業の大手グラスカンパニーで、ミルクガラスの製造は1932年に始まりました。実は「Jadite(ジェダイ)」の名付け親で、ジェダイのキッチンウェアは長年に渡って作られ続けました。印象的なブルーカラーの「デルファイトシリーズ」も人気を博します。
両者はライバル関係でしたが、1961年にジャネット社がマッキー社を買い取り、生産を終える1983年まで共にカラーガラス・ミルクガラスの製品を製造し続けました。
グラスベイク
先ほど触れた「マッキーグラスカンパニー」で1917年に誕生した耐熱ガラスブランドです。他社同様たくさんのアドバタイジングマグを製造し、中でもリプトン社の販促アイテムで容量がたっぷり入る「リプトンスープマグ」などが人気です。その後サッチャーグラスマニュファクチュアリングカンパニー、その次にジャネット社へと経営母体は変わっていきますが、グラスベイクのブランドは継承され続け1983年まで生産を行いました。
ファイヤーキング ジャパン
アンカーホッキング社から正規にライセンスを取得した日本のミルクガラス製造会社。忠実な復刻品だけでなくヴィンテージにはない新たなモデルも作られています。新品にこだわりたい方、ファイヤーキングの雰囲気をリーズナブルに味わいたい方などに高い支持を得ています。
ミルクガラスと似ているガラス
オパールガラス
ミルクガラスと同様に乳白色で半透明のガラスですが、オパールガラスの方が透明度が高い印象で、光に当たると宝石のように七色に輝きます。透明なガラスにリン化合物や酸化アルミニウムなどを加えるという製法で作られ、食器・ランプ・雑貨・装飾品などに様々な用途に使用されています。
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ウランガラス
その名の通りウランを混ぜたガラスのことを指します。使用されるウランはごく微量なので人体への影響はないとされています。黄緑がかった色味を特徴としていますが、ミルクガラスのような乳白色のものから透明度の高いものまで様々あり、いずれもブラックライトに当てると発光する性質を持ちます。
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ミルクガラスのあるインテリア
カラーもデザインも豊富なミルクガラスは、レトロ・ポップ・ミッドセンチュリー・アメリカンダイナーなど様々なテイストにマッチします。実用も展示も楽しめ、その愛らしい姿でほっこりと心和ませてくれる優れたアイテムです。