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船箪笥とは

船箪笥とは、江戸時代に商船で使われていた貴重品を保管する箪笥を指します。職人たちの匠の技を凝縮した小ぶりの箪笥で、箪笥の王様とも評されます。船の上で使われるため非常に堅牢であることが特徴で、同時に商人の財力を示すように贅沢で緻密なつくりをしています。

船箪笥の特徴

船箪笥は重厚感があるデザインですが、意外にも水に浮く特性があります。船箪笥の外側に欅などの堅牢な木材を使い内側には水に浮く桐材を使用しています。また、それだけではなく非常に精巧なつくりで気密性が高いため、水に沈まない、水に浸かっても中が濡れないといった特性があります。船が沈んだ際でも船箪笥が浮くよう工夫されているのです。船箪笥の中には商人の命ともいえる金銭や帳面、印鑑などの大切なものがしまわれていたため、船が沈んでも船箪笥は沈めない、という商人の強い思いが表されています。
また、船箪笥は盗難対策もしっかりとしていました。簡単に箪笥の中のものを盗まれることの無いよう、緻密なからくりが仕掛けられていたのです。例えば、すべての引き出しを出し切らないと取り出せない隠し収納や、引き出しと見せかけてけんどんになっているものなど、一目では開き方の分からないからくりが使われていました。その他にも、二重底や二重引き出しなどを組み合わせて奥に隠しスペースを設けることで、盗難防止の工夫をしていたというわけです。

素材・装飾など

船箪笥の多くは、外側を欅、内側を桐で構成しています。外側には漆が幾重にも塗り重ねられ、船の上でも水に強く、頑丈なつくりになっています。他には栗や総桐のデザインもあったようです。
デザインも華やかなものが多く、金物などで豪華に装飾をしています。これは、取引先に見せる目的もあったようで、豪華なつくりであれば信用も得やすかったから、と考えられます。

また、前項で取り上げた多彩なからくりも船場箪笥ならでは。一見すると仕組みが分からない引き出しや、幾重にも重ねられた箱、引き出しの奥に隠された隠し収納など、様々な見どころがあります。

船箪笥の種類

船箪笥にはいくつかの種類があり、用途によって使い分けられていました。それぞれの特徴をご紹介いたします。

懸硯(かけすずり)

上部に持ち手の付いた手提げ金庫のような役割の船箪笥です。中には貴重品が納められ、商談の際には持ち運びされていたこともあったようです。前面の扉は片開きで、その中にはいくつかの引き出しが備え付けられています。

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帳箱(ちょうばこ)

懸硯と同じく貴重品をしまっていた箪笥です。懸硯より一回りほど大きく、小ぶりな帳場箪笥といった雰囲気です。船の上でもぐらつかないよう高さは低め。全面を金具で覆うことで重量を増しており、そう簡単には動かせない特徴があります。

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半櫃(はんがい)

懸硯、帳箱とは全く異なる役割をしていた船箪笥が半櫃です。この箪笥の中には、船乗りの衣類が収納されていました。船箪笥の中では最も大型で横に長いデザインで、扉を外すと衣類をしまいやすい横幅いっぱいの引き出しが備えられています。

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船箪笥の歴史

船箪笥の歴史は江戸時代にまで遡ります。江戸時代の主な流通は海運業が担っていました。当時は陸路の通運が整っておらず、物流の主権は船が主力となっていました。商船が長い船旅の中で港へ立ち寄りそこで商売をする、という商いのスタイルが定着しており、まさに海運業前半期と言えるでしょう。
そこで必要になったのが、大切な金銭、帳簿、船往来手形といった貴重品を保管できるアイテムです。これらを安全に保管するために生み出されたのが船箪笥ということです。
特に日本海側を物質を積んで運んでいた北前船は大金が動くこともあり、クオリティの高い船箪笥を持つことができました。
しかし、海難事故が相次いで起こったため、明治18年「和船禁止令」が発令されました。同じくして陸路が整備されていったことにより、商船は次第に廃れていきました。商船の衰退は同時に船箪笥の衰退を指すことになります。
それでも、船箪笥は当時の姿のまま今でも現存しています。これは船箪笥が非常に緻密で堅牢に作られていたというなによりの証といえるでしょう。

船箪笥と帳場箪笥の違い

船箪笥と似たものに帳場箪笥がありますが、この二つにはどのような違いがあるのでしょうか。
船箪笥も帳場箪笥も貴重品をしまう箪笥という共通の目的がありますが、帳場箪笥は船箪笥と比べて大型のものが多いのが特徴です。船箪笥ほどの複雑さはないものの、帳場箪笥も隠し収納を設けていることがあり、同じ貴重品を保管する箪笥ならではの工夫がされています。
一方、船箪笥は水に浮くように作られているのに対し、帳場箪笥にはそのような機能はありません。また、水の侵入を避けるために船箪笥は非常に緻密に設計されていますが、帳場箪笥にはそこまでの気密性はないことも大きな違いと言えるでしょう。

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