カブリオールレッグとは、S字形の湾曲をもつ西洋家具の脚のことです。日本では「猫脚(ねこあし)」の名で親しまれています。山羊やライオンなどの四足哺乳類動物の脚を真似たデザインが特徴です。カブリオールレッグは、17世紀末から18世紀にかけてフランスで登場し、欧州で流行したのち世界的に広まりました。軽量であること、優美さ・軽快さの演出に適した形式であることから、現在でも西洋家具における定番のスタイルとして浸透しています。
カブリオールレッグ(猫脚)の特徴
カブリオールレッグの最大の特徴は、S字に湾曲した形状です。カブリオールレッグは2つの部位によって構成され、脚の付け根から中央部にかけてを「膝」、足先を「フット(足先)」と呼びます。
膝の付け根には「アカンサス」や「貝殻」といった動植物の模様が彫刻が施され、家具が置かれる空間に女性的な華やかさをもたらしました。
また強度があるのもカブリオールレッグの特色です。繊細な見た目ながらも力学的に優れた設計がなされています。装飾性に富み、軽量であることから、現代でもあらゆる家具に用いられています。
カブリオールレッグ(猫脚)の種類
カブリオールレッグには、さまざまな種類のデザインが生み出されました。本項では「膝」と「フット(足先)」にわけて、それぞれ解説します。
「膝」のデザイン
「膝」の部分には、古代ローマに由来する動植物の彫刻があしらわれているのが特徴です。代表的なデザインには、以下の3つがあります。
- 貝殻
- アカンサス
- 渦巻き
上から下にかけて曲線的かつ流れるように描かれているのが特色です。脚の付け根に彫刻を施すことで、家具のデザインをより華やかな印象にさせました。
フット(足先)のデザイン
「フット(足先)」の部分には、動物の足先や渦巻きなどの彫刻がなされています。代表的なモチーフは以下の通りです。
- 四つ足哺乳類動物の「蹄(ひづめ)」
- 渦巻きがある「フレンチカブリオレ」
- イギリス・クイーンアン朝時代に流行したシンプルな「クイーンアンカブリオレ」
- 幸せをつかむ縁起の良いモチーフとして、龍が玉をつかむ姿を表した「クロウ&ボール」
- ゴルフクラブにちなんだ洗練されたデザイン「クラブフット」
カブリオールレッグのフットは、国や地域ごとにさまざまなデザインが生み出されてきました。時代によっては華美であったり、装飾性が少なくシンプルになったりと、社会情勢が反映されているのも特徴です。
カブリオールレッグ(猫脚)の歴史
起源
カブリオールレッグのはっきりとした起源は定かではありません。しかし、紀元前の古代エジプトの壁画にはカブリオールレッグに近い家具が描かれており、紀元前の時代から存在していたことがわかっています。当時は、動物の身体をそのまま模したスタイルが一般的だったようです。
フランスの貴族文化で栄えた
カブリオールレッグが様式として確立されたのは、18世紀半ばのことです。曲線的で優雅な装飾を好んだフランス・ルイ15世時代のスタイル「ロココ様式」によって完成されました。
優雅で機能的なカブリオールレッグは、ロココ様式の代表的なモチーフとして欧州全土で大流行します。意匠を凝らしたカブリオールレッグは、権力や経済力のステータスとしても見られ、腕のある家具職人を多数生み出しました。
18世紀後半に起きた産業革命の影響で、貴族文化は弱体化するものの、カブリオールレッグは継続されます。19世紀のフランスでは「アールヌーヴォー様式」、イギリスでは「ヴィクトリアン様式」など、ヨーロッパ諸国で受け継がれました。
ロココ様式の登場から数百年経過した現在でも、西洋家具の定番スタイルとして世界中で用いられています。

「ロココ様式」について、以下でも解説しています。こちらもぜひご覧ください。
日本のカブリオールレッグ
フランスのロココ様式で確立されたカブリオールレッグ。日本のブランドにもカブリオールレッグを使った家具が見られます。代表的なブランドを2つ紹介します。
松永工房「CONTINUE(カンティーニュ)」
松永工房は静岡県の家具メーカーです。エレガンスをテーマにした「CONTINUE(カンティーニュ)」シリーズでは、美しいS字カーブが見事なカブリオールレッグを使った家具が見られます。クラシックな意匠をうまく取り込みつつも、現代の生活スタイルに合わせ、シンプルなデザインが特徴です。
カリモク・ドマーニの「ルイ」
日本を代表する家具メーカー・カリモク家具では、過去にロココ様式をイメージしたコレクション「ルイ」シリーズを展開していました。優雅なS字カーブに美しい彫刻など、ロココ様式の意匠をしっかりと反映したデザインです。現在は残念ながら生産終了となってしまいましたが、アンティーク家具店や中古市場では流通していることがあります。