こんにちは!ラフジュ工房店長の岩間守です。
今回取り上げるのは、
というお叱りについてです。
商品の到着からしばらく経ったある日、ふと横を通ったときに僅かに手前に傾いているのに気付いた、ということでご連絡くださいました。
実際のところ、傾きについてはお客様のおっしゃる通りでした。
ただ、リペア職人・工房上長・出荷スタッフなど複数人で確認をした上で、ご使用上問題ないと自信をもって送り出した商品だったので、そのことをご説明。
その上で、調整用にフェルトなどのスペーサーをお送りすることもできます、とご提案させていただいたのですが、
と、ご納得いただけないまま終わってしまったのです。
実はこの傾き(歪み)、使用上問題のあるようなレベルのものは稀ですが、軽微なものなら、特に古い木製家具にはよくある現象です。
ラフジュ工房で販売している家具の中にも、多少なりとも傾き(歪み)が見られるものはあります。
件の戸棚も、当店としては十分に販売基準を満たす商品だったものの、そのお客様にとっては「ご使用上問題ない」と我々が判断した軽微な傾き(歪み)も許容できないもので、それが商品、ひいてはラフジュ工房への不信感に繋がってしまったのでした。
今回はこの一件を踏まえ、木製家具の傾き(歪み)について当店が考えるところを、店長ブログにしてみました。
と疑問に思われた方は、ぜひこのままお付き合いください。
傾き(歪み)は古い家具あるある?安全面は大丈夫なの?
それではまずは、古い家具なら軽い傾き(歪み)はよくある現象なんですよ、というところを掘り下げていきたいと思います。
大前提としてご理解いただきたいのが、全てオートメーションの工業製品ならばいざ知らず、人の手によって一つ一つ作られる木製品においては、ミリ単位の誤差はどうしてもあるものなんだ、ということ。
それに加えて、木製品には反りや収縮など、木だからこその特有の経年変化があります。
ですから、たとえ前のオーナー様がどれだけ大切に使われていた家具だとしても、長い年月の中で少しずつ傾き(歪み)が生じてくるのは仕方のないこと、とお考えいただきたいんです。
それは決してモノが悪いだとか、欠陥品だとかいうことではなく、木製家具がゆえの自然現象なのです。
傾き(歪み)というと、なんとなく言葉のイメージ的に致命的な欠点と思いがちですが、全部が全部そうではありません。
程度の軽い傾き(歪み)に関しては、安全上、使用上、強度上、問題ないと自信をもって断言します。
また、これは当店でのお話にはなりますが、リペアすることを前提として販売している商品に、万が一快適にお使いいただけないような傾き(歪み)があった場合には、可能な限り直るようしっかりリペアを行っています。
という方は、当店の高品質リペアについてこちらの記事でもご紹介していますので、ぜひ併せて読んでみてくださいね。
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ラフジュ店長が疑問にお答え!「綺麗で使いやすい高品質リペア済」商品について
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床と壁の角度がピッタリ90°であると仮定した場合、0.3°の家具の傾き(歪み)は、高さ900mmの家具で5mm・高さ1800mmの家具で10mmの隙間になって表れます。
分かりやすくするためにちょっと大袈裟にしてみましたが、図にするとこんなイメージですね。
ただ!詳しくはこの後お話しますが、仮に当店でのチェック時に問題なしと判断して出荷した商品であっても、置き場所の床が水平ではなかった場合などには、当然ながら傾き(歪み)具合も変わります。
そういった場合には、お客様ご自身で微調整を行っていただけるように、家具の脚に貼るフェルトなどのスペーサーをお送りすることもあります。
フェルトなどのスペーサーというと、
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、数ミリほどの傾き(歪み)であれば、それだけでも気にならなくなるんですよ。
原因は家具だけにあらず。床って実は水平じゃないんです
さて、木製の家具、特に古い家具の場合には軽い傾き(歪み)はよくあることで、軽微なものならご使用上問題ないのだ、ということはお分かりいただけたかと思います。
しかし、家具自体の傾き(歪み)は軽いものであっても、もしも設置場所の床が傾いていたらどうでしょう。
皆さんは今までに、届いた家具をいざお部屋に置いてみたらガタガタしたり、左右の扉が真っ直ぐになっていなかったり、はたまた、扉の開け閉めがスムーズにできない…なんて経験をされたことはありませんか?
もちろん、家具そのものの不具合であるケースも考えられますので、一概に全てがそうと言い切ることはできないのですが、設置場所の床に原因がある場合も多いんです。
ご新築やリフォーム直後のお家でも、床は完全に水平ではありません。
どんなお家でも、ほんのちょっとの床の傾きがあります。
専門用語で、床の高さをレベルと言ったりするのですが、このレベルがほんの少し違うだけでも家具本体は傾いて(歪んで)しまうので、グラついたり、扉同士の高さがズレて干渉してしまったり、ということが起きるんです。
家具の傾き(歪み)が床に起因するものなのか、あるいは家具そのものに原因があるのかを見極めるには、家具を別の場所に置いてみる必要があります。
本当に家具自体が曲がったり安定していないのであれば、置き場所を変えてみたとしても、何も変化は見られないはず。
というわけで、傾き(歪み)の原因が必ずしも家具にない場合もありますので、当店の家具に限らず、他店で家具をお買い求めいただく際にも、安全に設置が可能かどうか、事前にご確認のうえご判断いただくことをおすすめします。
不安な方は、転倒防止金具を活用するのがおすすめです
ところで、家具そのものに傾き(歪み)がある場合でも、床の方に傾き(歪み)がある場合でも、
と思われた方、きっといらっしゃいますよね。
不安になってしまうそのお気持ち、私もよく分かります。
しかし、こう言うと元も子もないかもしれませんが、ひとたび大きな地震が起これば傾き(歪み)のあるなしはほとんど関係ありません。
傾き(歪み)があろうとなかろうと、家具が固定されていない以上は倒れる可能性があるのです。
ですから、地震による家具の転倒が心配ということであれば、傾き(歪み)はフェルトなどのスペーサーで調整していただいた上で、家具本体を壁や天井に固定するというのが最も効果が高く、確実です。
東京消防庁のデータによれば、近年発生した最大震度6弱~7の地震でケガをした原因を調べた結果、約30%~50%が家具類の転倒や落下、移動によるものだったそうです。
また、2011年の東日本大震災の発生時状況をもとに、都内における階層別の家具類の転倒・落下・移動発生割合を調査したデータでは、1階または2階が約16%なのに対し、11階以上が約47%と、高層階になればなるほど割合が多くなっていることが分かりました。
特に、上下段が分割できる仕様の食器棚などは、上段が倒れてくる可能性もあります。
必ず連結金具やジョイントボルト等で、上下を固定するようにしましょう。
幸いなことに今は、家具を壁に固定するための金具も数多く販売されています。
L型金具やベルト式、ワイヤー式など、さまざまなタイプがホームセンターなどで市販されていますので、壁面の状態に応じて金具を選んでみてください。
最後に
今回の店長ブログでは、家具の傾き(歪み)について取り上げてみました。
当店の家具をご検討いただいてるお客様の中には、中古や古い家具を買うのに慣れていないという方もいらっしゃるはず。
しつこいようですが、木製家具の傾き(歪み)は程度の差こそされ、古い家具ならばよくあることです。
ですからもしこの記事を読んで、
と思われた方は、当店で販売している家具ではご満足いただけないかもしれませんので、ぜひ事前にご相談ください!
懸念される点をお問い合わせいただけたら、担当のカスタマーサポートスタッフがしっかりお調べします。
この店長ブログが、皆さんにとってより良い家具と出会うための一つの判断基準になれば幸いです。