こんにちは!ラフジュ工房店長の岩間守です。
さて、今回の店長ブログで取り上げるのは家具の「ワックスがけ」についてです。
当店でご購入いただいた家具についてのお問い合わせで、ちょこちょこいただくのがワックスがけの要不要について。
先に答えを言ってしまうと、実は家具のワックスに関しては、そこまで気を使わなくても大丈夫なことがほとんどなんです。
(よっぽど水のかかるような場所に置いてあるとなれば、話は別ですが。)
しかも、これは中古の家具に限った話ではなく、アンティークやヴィンテージの家具にも言えること。
私はラフジュ工房の店長として、数々のアンティーク家具を修理し、自宅でも長年アンティーク家具を使っています。
もちろん、アンティーク家具をボロボロの状態からリペアする際にはワックスなどを使いますが、一度リペアが済んだアンティーク家具はそれ以上メンテナンスしません。
それでも、状態が変わらないことを身をもって経験しています。
イギリスなど、現地で使われているアンティーク家具にしてもそう。
ほとんど手入れされていないにもかかわらず、100年もの年月を生き残っていますよね。
というわけで!今回は家具のワックスメンテナンスについて、ワックスが必要なのはどんな家具なのか?
また、おすすめのお手入れ方法やワックスに関するよくある疑問を、分かりやすく解説していきたいと思います。
【全部読む暇のない方へ。この記事の要点ざっくりまとめ】
① 家具のワックスがけは基本不要!必要なのは水回りの家具、水拭きする家具ぐらい
② ワックスよりももっと大切なことは、直射日光・エアコンの風・過度な湿気を避けること
③ ワックスの要不要は、家具の元々の仕上げ方でチェック
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・蜜蠟ワックス仕上げの家具の場合→同じ蜜蝋ワックス系で
・オイルフィニッシュの家具の場合→同じオイル系か蜜蝋ワックス系で
・ペイントの家具の場合→基本的にお手入れなしでOK
・ウレタン・ラッカー塗装・カシュー塗り・漆塗りの家具の場合→ワックスせずとも問題なし
④ メンテナンスの手順は、ワックスとオイルで少し違う
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《蜜蝋ワックスでお手入れする方法》
・家具の表面をウエスで乾拭きして、ホコリや汚れを落とす
・ハケ(または新たなウエス)に蜜蝋ワックスを取って、塗っていく
※Point※ 塗膜があるものは薄ーく、木地のものは木目に沿って厚めに塗る!
・新たなウエスを使って、余分な蜜蝋ワックスを拭き取る
・縦横くまなく、磨くようにしっかり拭き上げる
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《オイルでお手入れする方法》
・家具の表面をウエスで乾拭きして、ホコリや汚れを落とす
・新たなウエスにオイルを取り、木目に沿ってまんべんなく塗る
※Point※ 塗膜があるものは薄ーく、木地のものは木目に沿って厚めに塗る!
・そのまま20〜30分ほど放置して、オイルを馴染ませる
・新たなウエスを使って、オイルをくまなく磨き上げる
・半日〜1日ほど乾燥させる(使用するオイルによって乾燥時間が変わる)
そのワックス、本当に必要ですか?
塗るのは水回りの家具、水拭きするダイニングテーブルやキッチンカウンター、キャビネットのみでOK
冒頭でもお話ししたとおり、ワックスでのお手入れを必要とする家具は一部のみ。
また、アンティークやビンテージの家具に関しても、水拭きするダイニングテーブルやキッチンカウンター、水まわりで使う家具ならばいざ知らず、収納家具など多くの家具はワックス不要です。
と思われている方が多いのですが、ワックスを塗っても塗らなくても、正直なところコンディションはそれほど変わりません。
「メンテナンスが好き!」という方以外は、基本的にお手入れせずとも大丈夫なんです。
しかしながら、ネット上では実に多くの家具店や木製家具好きの方が、「ワックスは塗らなければならないもの」という前提でお話されていますよね。
今回この記事を書くにあたって、なぜこんなにも「木製家具にはメンテナンスが必要」という常識ができてしまったのかな?と考えてみました。
考えてみた結果、おそらく毎日水拭きする木製テーブルや床などと混同してしまっている方が多いのでは?という結論に至りました。
上述の通り、水拭きを要するなど頻繁に摩擦が起こる家具であれば、摩擦によってだんだんとワックスが落ちてくるため、塗り直しによるお手入れが有効です。
また本革のソファなど、座るときに擦れてオイルが落ちてしまうレザー家具についても、オイルメンテナンスが必要と言えます。
ただ!そうではない家具たちについては、ほったらかしでもワックスが完全に落ちてしまうことはありません。
すなわち、基本的にお手入れは必要ないというわけなんです。
木製家具は直射日光とエアコンの風、過度な湿気を避けることが一番大切!
では、木製家具をきれいに長持ちさせるには一体何が必要なのか。
木製家具を直射日光やエアコンの風が当たる場所に置いてしまうと、木が乾燥して割れたり、変形したりする原因となります。
そして家具の一部が変形すると、扉や引き出しが開けにくくなったり、脚がガタついたり…と、よくないことばかり。
さらに、木製家具を日常使いせず倉庫などに保管しておく場合、湿気の多い場所だとカビや変形が生じる可能性大です。
ジメジメとした空間はキクイムシにとって居心地の良い環境ですので、虫食いの被害にあう恐れもあります。
ですから、木製家具を置く場所は直射日光・エアコンの風・過度な湿気を避ける!
これだけはどうか、頭の片隅にとどめておいていただけたら嬉しいです。
木製家具のメンテナンス。必要な準備は?
それでは、ワックスがけの要不要がざっくりお分かりいただけたところで、ここからは実際のお手入れ方法についてご説明していきたいと思います。
まずは、お手入れに必要なワックスの準備から。
蜜蝋ワックス仕上げの家具の場合
お手入れしたい家具が蜜蝋ワックス仕上げだった場合には、同じ蜜蝋ワックス系の材料でメンテナンスしましょう。
蜜蝋ワックスというと、ブライワックス・ジャックポールワックス・シェラックワックスなど様々ありますが、基本的にはこれらの中ならどれを選んでも問題ありません。
というのも、私もこれまでに蜜蝋ワックスを何種類か試しましたが、どれを使っても結果はほとんど変わりませんでした。
蜜蝋ワックスはメーカーによって差が出にくく、職人によっては靴用の蜜蝋ワックスを家具メンテナンスに使うこともあるほどなんです。
ですから、蜜蝋ワックスを選ぶ際はコスパや匂いなど、単純な好みで選んで全く問題ありません。
オイルフィニッシュの家具の場合
また、お手入れしたい家具がオイルフィニッシュの場合には、同じオイル系か蜜蝋ワックス系が良いでしょう。
オイルは、オスモオイルやビボスオイル、ワトコオイルなどが有名ですね。
ただ、オイル系塗料は匂いがきつめで、乾燥時間が長いものがほとんど。
そのため、よほどこだわりがなければ蜜蝋ワックスを使うのがおすすめです。
強いて言うなら、蜜蝋ワックスの方がほんの少しツヤが増すかも、というくらいです。
蜜蝋ワックス系であれば匂いが少なく、乾燥時間が短いため、室内でもストレスなくパパッとお手入れできますよ。
ペイントの家具の場合
ペイントが施されている家具については、蜜蝋ワックスやオイルフィニッシュより更にしっかりした塗膜が形成されているため、水回りの家具やダイニングテーブルでも、基本的にお手入れなしで大丈夫です。
ただ、ペイントのアンティーク家具に蜜蝋ワックスを塗ると、木肌がよりしっとりとしてアンティーク感が増すという特徴もあります。
色付きのペイントなら、さらに味が出る場合もあります。
ウレタン・ラッカー塗装・カシュー塗り・漆塗りの家具の場合
そして、ウレタン塗装やラッカー塗装・カシュー塗り・漆塗りが施されている家具。
ホコリや汚れが気になった時など、優しく乾拭きしてあげるだけでOK。
それだけでも、十分きれいな状態が保てます。
もし水拭きが必要な場合には、かたく絞った布で拭きましょう。
木製家具のメンテナンス。具体的な手順は?
さて、続いては実際の手順をご紹介していきます!
蜜蝋ワックスとオイルフィニッシュ、それぞれのお手入れ方法を簡単にまとめてみました。
蜜蝋ワックスでお手入れする方法
【準備するもの】
・お好みの蜜蝋ワックス
・ハケ
・ウエス(毛羽立ちのない柔らかくい布。乾いた状態。Tシャツの端切れなど) 2枚
もしくは、
・お好みの蜜蝋ワックス
・ウエス(毛羽立ちのない柔らかい布。乾いた状態。Tシャツの端切れなど) 3枚
【手順】
① 家具の表面をウエスで乾拭きして、ホコリや汚れを落とす
② ハケ(または新たなウエス)に蜜蝋ワックスを取って、塗っていく
※Point※ 塗膜があるものは薄ーく、木地のものは木目に沿って厚めに塗る!
③ 新たなウエスを使って、余分な蜜蝋ワックスを拭き取る
④ 縦横くまなく、磨くようにしっかりと拭き上げる
なぜなら、時間をおくとワックスが固まってしまう場合があり、最後に頑張って拭いてもワックスが多少残ってしまうからです。
その結果、ツヤが出ずイマイチの仕上がりになってしまいます。
また、蜜蝋ワックスは最後の拭き上げが足りないと、表面がベタついたり、物を置いた際に色移りするなんてことも。
拭き上げるときは、ベタつかずサラサラの状態になるまで丁寧に磨きましょう。
オイルでお手入れする方法
【準備するもの】
・お好みのオイル
・ウエス(毛羽立ちのない柔らかい布。乾いた状態。Tシャツの端切れなど) 3枚
【手順】
① 家具の表面をウエスで乾拭きして、ホコリや汚れを落とす
② 新たなウエスにオイルを取り、木目に沿ってまんべんなく塗る
※Point※ 塗膜があるものは薄ーく、木地のものは木目に沿って厚めに塗る!
③ そのまま20〜30分ほど放置して、オイルを馴染ませる
④ 新たなウエスを使って、オイルをくまなく磨き上げる
⑤ 半日〜1日ほど乾燥させる(使用するオイルによって乾燥時間が変わります)
オイルフィニッシュは、塗布後乾燥中の家具に物を乗せたり触ったりすると、触れた箇所にオイルが付いてしまいます。
乾燥が終わるまでは、絶対に触れないように注意しましょう。
なお、オイルでお手入れした後はウエスの捨て方に要注意です!
オイルを多く含んだウエスをそのまま放置すると、オイル成分が酸化して自然発火を起こす危険があります。
そのため、処分する際は必ずウエスを水に浸し、ビニール袋などに入れて、密封してから捨てるようにしてくださいね。
木製家具のメンテナンス。よくある質問
それでは最後に、木製家具のワックスでのお手入れについて、よくある質問にお答えして締めたいと思います。
Q.着色剤入りのワックス。色の選び方は?
ブライワックスなどの蜜蝋ワックスは多様なカラーがありますので、
と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そんなときまず間違いないのは、現状に近い色のワックス、もしくは着色剤が入っていないワックスですね。
でも正直なところ、ワックスの色選びにそこまで神経質になる必要はないんですよ。
というのも、家具に元々の塗膜が残っている場合、たとえ上から違う色のワックスを塗ってみたところで、家具がその色に変わってしまうことはないのです。
例えば仮に、
なんて、現状とほど遠い色のワックスを選んだとします。
しかし、一度しっかり元の塗装を落としでもしない限りは、思ったような変化は得られません。
なんとなく、理屈はお分かりいただけたでしょうか?(笑)
Q.家具の元の仕上げが分からない!どんなワックスを使えばいい?
また、家具の元々の仕上げ方法が分からないという場合。
この場合も、基本は家具の色に近い蜜蝋ワックスを塗っていただくか、もしも小キズを目立たなくさせたいのなら、濃い色のワックスを塗っていただくのがおすすめです。
ちなみに、当店でよく使っているのはブライワックスの「ジャコビアン」というカラー。
一度ワックスを塗ったら、5年ほどは乾拭きのみで問題ありません。
ここで、
と思われた方。
オイル系(オスモオイル、ワトコオイル、ビボスオイルなど)でメンテナンスする場合、家具に塗膜が残っているとオイルがうまく木肌に浸透できず、ベタつきの残る原因になってしまうんです。
そのため、迷ったら蜜蝋ワックスをお選びいただくのが無難です。
大事なのは、やはり直射日光とエアコンの風・過度な湿気を避けること。
ワックスよりも何よりも、これが最重要・最優先なのです。
Q.家具の傷や汚れを消すにはどうすればいい?
家具は家財道具ですから、使ってこそ。
とはいえ、長年の使用でキズや汚れが目立つようになってくると、やはり気になる方もいらっしゃるかと思います。
先ほどもお話しましたが、そんなときには家具の色味と近い色の着色剤入りワックスを塗るか、濃いめのワックスを塗ることでダメージを周りに馴染ませることができます。
あるいは、ステイン塗料(着色剤)と無色の蜜蝋ワックスを部分塗りしてもOK。
家具のキズや汚れ消しの方法として、はじめにやすりがけをする方法がよく紹介されていますが、当店としてはおすすめしていません。
特に素人の方の場合、やすりがけをするとその部分を周りと完全に揃えることは非常に難しく、かえって悪目立ちさせてしまうことになりかねないためです。
なお、ウレタン塗装やラッカー塗装、カシュー塗り・漆塗りなどの家具の場合、もし誤って大きなキズをつけてしまったら、残念ながらセルフメンテナンスでの修復は難しいです。
なんとかしようとした結果、余計に悪化させてしまった…なんてことになったら、それこそどうしようもありません。
ご自身での修復は控えていただくのが無難です。
Q.家具を艶やかに仕上げたい!おすすめのワックスは?
家具を艶やかに仕上げたい場合、極論蜜蝋ワックスであれば、どれを使っていただいてもOKです。
それでも強いておすすめを挙げるとすれば、やはりブライワックスでしょうか。
Q家具のツヤを抑えて仕上げたい!おすすめのワックスは?
では逆に、ツヤを抑えて仕上げたい場合はどんなワックスを使えば良いのか。
実はワックスの中にも、ツヤが出にくいタイプのものがあるんです。
何を隠そうそれもブライワックスなのですが、お選びいただきたいのは「トルエンフリー」タイプのもの。
トルエンフリータイプはニオイが少なく、ワックス特有のツヤも控えめなのが特徴です。
オリジナル同様ネット通販でも簡単に手に入りますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
最後に
さて、今回は家具のワックスがけについてお話させていただきました。
特にアンティークの家具については、「ワックスでお手入れするほどキレイになる」と思われがちです。
が、基本的にはワックスを塗らなくても、家具のコンディションは変わりません。
それよりも大切なのは、直射日光やエアコンの風、保管時の過度な湿気を避けることです。
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当にこれだけのことで、これから先も何十年とお気に入りの家具を使い続けていけるのです。
そしてもし、自分ではどうしようもない傷・汚れがついてしまったら、当店ラフジュ工房にお任せください。
他店で購入されたアンティーク家具や、昔から家にある思い出の家具などなど、どんな木製家具でも大歓迎です。