杉とは、ヒノキ科スギ亜科スギ属の常緑針葉樹のことです。
本州〜九州を中心に広く分布している日本の固有種で、日本だけにしか生育していません。
日本に住んでいれば見かける機会も多く、私たちにとって馴染み深い木ですよね。
太古の昔から自力で群生し、人工的な植林も積極的に行われ、現在では国内植林面積が最も多い樹種となりました。
杉と聞いてパッと思い浮かべるのは、あの気持ちいいほどに空に向かって真っ直ぐ伸びた樹木の姿。
その特有の形や性質を活かし、家具・建築・土木・船・下駄・酒樽などの材料として使用されたり、神社の神木として拝められたり、「屋久杉」のように天然記念物になったり、様々な用途で重宝されてきました。
杉の学名は「Cryptomeria japonica(クリプトメリア・ジャポニア)」といい「日本の隠された宝」という意味を持ちます。
学名通り、遥か昔から私たちの生活を豊かにし支えてきてくれた、まさに日本を代表する国民的樹種といえますね。
そんな日本人にとって深い繋がりのある杉の特徴や魅力を詳しく見ていきましょう!
杉の種類
杉は1属1種のためオンリーワンの樹種ですが、育つ場所によって「表杉」「裏杉」の2つに分けることができます。
また、生きている杉とは別に、地中に埋もれ続けた「神代杉」という杉が家具材に用いられることもあります。
それでは基本的な杉の特徴と、表杉・裏杉・神代杉それぞれの特徴をご紹介していきます!
杉
地面に対して垂直に真っ直ぐ成長し、大きいものでは樹高60m、幹の太さは5mほどにもなる個体もあります。
杉は比較的成長が早い上、平均で500年余り生きる長寿の木です。中でも「縄文杉」と呼ばれる杉は日本一の長寿の木と言われていて、樹齢2170〜7200年と推定されています。
辺材は白色、心材は赤みがかった褐色で、時折黒みを帯びたものもありますが赤味を帯びたものの方が美しいとされています。
辺材と心材の色味の境目は明瞭です。
木目は鮮明な線で通直に描かれ、節があるものも多く見受けられます。
油分が少なく軽軟な性質を持ち、樹木からは清々しい爽やかな香りがします。
表杉
太平洋側に生息している杉のことです。
幹は細く、枝は水平方向に伸び、葉は広いのが特徴です。
代表的なのは「吉野杉」「日光杉」「山武杉」「三河杉」「日田杉」「屋久杉」などです。
裏杉
日本海側に生息している杉で、雪に強いです。
一番低い太枝は積雪によって垂れ下がり、その接地した所から発根します。上方へと枝を伸ばし、葉は小さく狭いのが特徴です。
代表的なのは「秋田杉」「金山杉」「智頭杉」「若桜杉」「小国杉」などです。
神代杉
木材の種類に「埋もれ木」というものがあります。災害などにより地中に埋没した樹木が、長い年月をかけて腐敗することなく炭化していく過程で発掘された木のことを指しますが、中でも1000年以上埋もれていたものは「神代木」と呼ばれています。
その樹種が杉であるものを「神代杉」といい、主に秋田県と山形県にまたがる鳥海山麓で産出されます。
色は黒味を帯びた暗褐色で独特の深みがあり、木目はきめ細やか。そして磨くと光沢が生まれるという美しい見た目から、家具や工芸品・和太鼓などにも使用されてます。数が少ないためとても希少な材です。
杉の魅力
木目と香りを楽しめる
はっきりとした直線的な木目、自然味あふれる表情豊かな節には、ナチュラルな美しさがあり目を惹きます。特に「笹杢」「鶉杢」などの希少な杢目を持つものや節の無いものは、装飾的価値が高いとして昔から珍重されてきました。
柔らかい木質がゆえに傷が付きやすくもありますが、それも味と捉えればより一層愛着も湧くことでしょう。
経年変化により色味は濃くなっていき、味わいを深めたその姿も大変魅力的です。
さらに杉が放つ爽やかな香りも魅力の1つです。その香り成分には抗菌・防虫作用がある他、人の脳(前頭葉)を刺激することで、身体をリラックスさせたり、免疫抗体を増加させたり、質の良い睡眠に導いたりと様々な効果があることがわかっています。
利便性が良く、心地よい材
軽軟な木質に加え、真っ直ぐな形をしているため扱いやすく加工もしやすいです。
軽量な杉材を使用した家具は運びやすく使いやすいといった利点もあります。
また木の中に空気をたくさん含んでいるため、手で触れた時に温かみを感じることができます。
そのためフローリングや家具・内装材など普段から体に触れる機会の多いものの材料に用いられることが多いです。
杉には調湿作用もあるので、四季で変化する室内湿度を常に調整し、心地良い快適空間をつくってくれます。
取り入れやすい
日本一の植林面積を誇り、木材の中では比較的安価であるため取り入れやすい木材です。
ただし「一番安いのも杉、一番高いのも杉」という言葉があるように、吉野杉や屋久杉などの高級なブランド材は例外となります。
それ以外の杉でも「何百年という高樹齢でしっかりと乾燥させた杉材」と「樹齢50年ほどで乾燥も不十分な杉材」を比べれば、前者は耐久性が高いというメリットがあり、後者はコストを抑えられるというメリットがあります。このように、品質や価格に高低差が生じるのも大きな特徴の1つです。
杉でつくられた家具のご紹介
杉を使ったアンティーク家具・ヴィンテージ家具
縄文時代から木材として利用されてきた杉は家具材としての歴史も長く、アンティークやヴィンテージ時代の和製家具も数多く残っています。シンプルなデザインが多く、杉の木目を存分に楽しむことができます。
総杉材の家具ももちろんありますが、柔らかい木質を活かして棚板・底板・背板など一部分だけに使われることも多く、杉材の様々な活躍の仕方を見ることができます。
杉を使った現代のブランド家具
「広葉樹と比べると強度が‥」「節があると見た目が‥」と杉材にマイナスのイメージを持たれている方もいるかもしれません。
確かに広葉樹に比べれば強度や耐久性は劣ってしまうかもしれませんが、硬い杉であれば法隆寺などの歴史的建造物に使用されるくらい丈夫な木材であり、杉材特有の優れた所は先述のようにたくさんあります。
日本固有種ということもあり、杉材の家具は和室との相性が抜群ですが、鉄脚などと組み合わせたモダンなデザインのものも人気があり、ワークデスクやカフェのテーブルなど、そのナチュラルな風合いも相まって様々な空間に馴染むことができます。