シェーカー家具とは、18~19世紀にかけてアメリカの北東部で活動していた、キリスト教プロテスタントの一派「シェーカー教徒」が生み出した家具のこと。機能性を追求した質素な造形とデザインが特徴的で、直線を多用した禁欲的なその意匠は、「シェーカー様式」とも呼ばれています。時代が進むにつれ、シェーカー教そのものは20世紀半ばに衰退してしまいますが、シェーカー家具のシンプルでミニマルなデザインが、のちの近代家具をリードする先駆的存在として後世の建築家やデザイナーに多大な影響を与えました。
シェーカー家具の特徴
シェーカー教団の生活道具がルーツ
シェーカー家具の最大の特徴は、機能性を重視した、シンプルで素朴なデザインです。シェーカー家具は文字通り、シェーカー教徒が作ったことに由来しています。シェーカー教は、勤勉で質素倹約を信条とし、家具作りも含め、衣食住すべてにおいて自給自足の共同生活を送っていました。機能的な造形を残しただけの極めて質素な作りのシェーカー家具には、そんな暮らしの中に息づいたシェーカー教の信条が反映されているのです。
種類
シェーカー家具の種類は数百にものぼるとされ、椅子やテーブルに始まり、車輪付きベッド、デスク、スツールなどのメジャーな家具のほか、カップボードやキャビネット、チェストといった収納家具などがあります。
そのほかにも、ペグと呼ばれる掛け具や壁に掛けられる収納家具、さらにコモードや時計も製作するなど、幅広いバリエーションと高い技術力を持ち合わせていたことがわかります。
シェーカー家具の歴史
シェーカー家具は、その名の通りアメリカの北東部で活動していたシェーカー教徒の暮らしの中で生み出されてきた家具。18世紀の後半に誕生し、その後19世紀にかけて発展していきます。シェーカー家具の歴史は、大きく3つのスタイルに分けられ、頑丈で機能的な「初期シェーカー家具」、黄金期を支えた「古典期シェーカー家具」、そして後年の「ヴィクトリアン・シェーカー家具」に分類されます。
「初期シェーカー家具」は、工具も知識も経験もない未熟な状態から始まったこともあり、外部から持ち寄った家具を模倣して作られていました。のちに教団の発展や増加と共に、技術とデザイン性も発達していくことになりますが、初期の作品は松やカエデ材といった硬い木が使われ、加工が荒かったり、武骨なデザインだったりと粗野な作りでした。
「古典期シェーカー家具」は、19世紀初頭から半ばまでに発展したスタイル。いわゆる黄金期を支えたスタイルで、今でも熱烈なファンを抱えています。装飾は必要最小限にとどめられ、より洗練されたものに。軽量化や繊細さを強調するために各パーツの小型化が巧妙に行なわれているのが特徴です。
「ヴィクトリアン・シェーカー家具」は、19世紀後半から登場してきたスタイル。当時、世界的に流行していたヴィクトリア様式の装飾が、シェーカー家具にも取り入れられるようになりました。クルミ材が多く使われ、ベッドや机などには濃い着色が施されています。また、複雑な加工や挽物(ロクロ細工)なども施されているのが特徴的です。古典期に比べると、デザインの方向性が変わった時期でもありました。
シェーカー家具をルーツにした家具たち
シェーカー家具の代名詞ともいえる「ラダーバックチェア」は、はしごをモチーフにしたミニマルなデザインが不動の人気を誇っています。
海外のラダーバックチェア
ミッドセンチュリー期に活躍した著名デザイナーが手掛けたアイテムには、シェーカー家具のデザインを取り入れた作品も多数見られます。ヴィンテージ品はもちろん、リプロダクト製品や復刻版など、数多くリリースされています。
また、デンマークの巨匠デザイナー、ボーエ・モーエンセンが手掛けた「J39 Shaker Chair」は、シェーカー家具にインスピレーションを受けた作品です。
もともとは、一般市民のために安価で良質な家具を作ってほしいとのリクエストに応えた作品で、シェーカー家具のミニマリズム的要素が反映されています。
日本のラダーバックチェア
また、日本の民芸家具にもラダーバックチェアの特徴を取り入れたアイテムがあります。日本の住宅に取り入れやすいサイズ感と質感で、定番のダイニングチェアとなっています。