ロッキングチェアとは、椅子の脚の下に弓状に反った部材が付いた椅子のことです。前後に揺れる構造を持ち「揺り椅子」とも呼ばれています。リラックス性を重視した設計が特徴です。
ロッキングチェアの特徴
ロッキングチェアは通常の椅子と異なり、脚部にカーブした状の脚が取り付けられているのが特徴です。腰かけたときにかかる重力で、椅子全体が前後に揺れる仕組みになっています。ゆりかごのような心地よい揺れを生みだすため、リラックスしてくつろぐことが可能です。
座面や背もたれにも注目してみましょう。ロッキングチェアの背もたれは高く、座面は広くなっており、体をすっぽりと預けられるような形状が多く見られます。長時間の使用でも快適に過ごせる点も、通常の椅子とは異なるポイントです。
ロッキングチェアの歴史
本項では、ロッキングチェアの歴史を解説します。
ロッキングチェアの起源
ロッキングチェアの明確な起源は定かではありませんが、18世紀初頭に北アメリカで誕生したとされています。イギリスで使われていた「ウィンザーチェア」にカーブした板を取り付けたことがはじまりとされ、当初は庭先や玄関でくつろぐための屋外用の椅子として使われていました。
登場した当初、ロッキングチェアはアメリカでは人気を博しましたが、礼儀作法を重んじるヨーロッパでは「姿勢がよくない」「背もたれを使うのは恰好が悪い」など不評で、人気がありませんでした。
ロッキングチェアの転換期
しかし19世紀半ばに、ドイツの家具職人ミヒャエル・トーネット(1796-1871年)が発表したロッキングチェアが人気を博します。木材を蒸して加工する曲木技術を開発し、現在に伝わるような優美なロッキングチェアが生まれたのです。
ロッキングチェアのイメージを刷新し、瞬く間にイギリスやフランスでも大変な人気を博しました。イギリス・ヴィクトリア時代には上流階級の間でも評判を呼び、室内用として改良が重ねられました。
20世紀に入ると、ロッキングチェアは実用性に加え、家庭でのくつろぎ空間の象徴として広く普及するようになります。折りたたみ式のデザインや金属・プラスチックなどを使ったデザインなど幅広く生み出され、世界中で親しまれる家具となったのです。
ロッキングチェアの種類
ロッキングチェアは、製作された国や時代によってさまざまなデザインが生み出されました。定番の木製ロッキングチェアやラグジュアリーな布地が使われたデザイン、装飾性にこだわったデザインが存在します。順番に見ていきましょう。
イギリスアンティークのロッキングチェア
イギリスアンティークのロッキングチェアは、アーコールの作品が世界中で人気を集めています。あたたかみのある木材とダイナミックな曲線美が特徴です。どっしりとした存在感がありながら、シンプルなデザインなのでお部屋のテイストを選びません。くつろげて、どんなお部屋にも合わせやすいデザイン。これこそが世紀を超えて愛される理由でしょう。
北欧ヴィンテージのロッキングチェア
北欧ヴィンテージのロッキングチェアは、シンプルで機能的、かつぬくもりあるデザインが特徴です。天然素材とすっきりとしたラインが調和し、北欧らしいやわらかな雰囲気があります。
ミッドセンチュリーテイストのロッキングチェア
ミッドセンチュリー風のロッキングチェアは、シンプルながらユニークなデザインが特徴です。プラスチックと木材を組み合わせた革新的なスタイルや、ポップなカラー、滑らかなラインなど、コンテンポラリーさが特色です。
和製アンティークのロッキングチェア
和製アンティークのロッキングチェアは、日本の伝統と西洋の文化が融合した和洋折衷デザインが特徴です。和の落ち着いた風合いを保ちつつ、心地よい揺れを感じられます。日本のロッキングチェアで有名なのは、例えば松本民芸家具があります。ダークブラウンの色味と艶やかな木肌、アームやスポーク部分に曲線的な装飾を用いるなど、和室にも洋室にも合うデザインが特色です。
現代のロッキングチェア
ロッキングチェアは現在も世界中で製作されています。現代のライフスタイルに合わせた洗練されたデザインが特徴ですが、リラックスを重要視している点は変わりません。
近年のロッキングチェアは、リビングやベッドルームだけでなく、ホテルのテラスやロビーなどでも使われています。新しい素材を使ったりや異素材と組み合わせたり、ソファのようにクッションが入ったものなど、一層くつろげるような工夫が見られます。