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ラタン(籐)とは


ラタン(籐)とは、ヤシ科に属する植物の総称であり、その茎の部分を加工した天然素材の名称でもあります。
インドネシアを中心に、東南アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息しているため、日本には自生していません。
しかしラタンは日本では籐(とう)と呼ばれ、古い時代から私たちの暮らしに慣れ親しんできました。
天然素材ならではの質感や風合いがどこか懐かしく、ほっこり心落ち着く人も多いのではないでしょうか。

ラタン(籐)の特徴

素材と製法


ラタンに分類される植物は200種以上ありますが、その中で資材として利用されるのは30種類ほどです。
色・形・太さ・硬さなど多種多様なラタンですが、大別して「太いものは家具の構造材」「細いものは巻いたり編んだりする材」の2つに分けられます。
ラタン家具は曲線美を活かしたデザインを特徴としていますが、構造材となるラタンは蒸気や火熱を利用して曲げやすくし、型に合わせて各部材を作っていきます。それを骨組みとして組み立てたフレームに、割籐と呼ばれる細い籐を巻いたり編んだりしてラタン家具は仕上げられていきます。
機械化が進む現代になっても、こうした工程は職人の手仕事によって1つ1つ丁寧につくられていきます。

個性豊かな美しさ


天然素材であるラタンは1つとして同じ素材はありません。
一般的にラタンは表皮を剥いで見た目を均一に見せることが多いのですが、あえて表皮を残すことでアンティーク感を演出したり、また染色を施してデザイン性を高めることもあります。
ラタンの編み方にも様々な種類があり、その違いによって見せる表情も大きく変わってきます。
素材・加工法・表現法を駆使して、テイストがアジアンやヨーロピアン、もしくは和風だったりと変幻自在に姿を変え、個性豊かな家具はつくられていきます。
そして使い込むほどに、色味や質感に味わい深さが出てくるという天然素材ならではの大きな魅力も持っています。

丈夫・しなやか・軽い


ラタンという植物はツル状に長く伸びる上、成長が早く生命力が強いため「最長にして最強の繊維を持つ植物」として知られています。
このことから、非常に丈夫な素材であることがわかります。
丈夫な性質を持ちながら、さらにしなやかさも持ち合わせているため曲げ加工に適しています。
木製家具ではなかなか難しいような曲線美を活かしたデザインや、複雑で繊細な編み込みの加工もしやすく、表現力が豊かであることも大きな魅力です。
またラタンは繊維質であるため他の家具材に比べるととても軽量で、大きめの家具でも扱いやすいといえます。

優れた調湿性・通気性


ラタン内部にある無数の導管の働きで、多湿な場所では湿気を吸収し、乾燥した場所では放湿させます。
加えてラタン家具は編み込んでつくられるため、通気性に優れています。夏は蒸れることなくサラッとし、冬は暖房の暖かな空気を通し温もりを感じることができます。
そうした理由から、お風呂場や洗面所などの水回りでラタン製の籠や家具を見かけたことがあるという人も多いはず。
ただし水回りで使用する際はカビが発生しないようしっかり水気を拭き取ったり、換気したり、十分に乾かすことが重要となってきます。
そうした環境が整っていれば、四季を問わずいつでも快適な空間を作ってくれる万能な素材となります。

ラタンの家具に使われている材料


ラタンに分類される植物には多くの種類がありますが、中でも最高級といわれているのが「セガ」です。
日本では「ラタン=セガ」と言ってもいいほどポピュラーな材。
硬くて丈夫な性質で、ホーロー質というガラスのような表面を持つことで象牙に似た美しい艶を放ちます。通気性や調湿性に富み、サラサラとした手触りが心地良いのも特徴です。
他にも、重硬かつしなやかな性質を活かしてよくフレーム材として使用される「トヒチ」や、太く強靱でホーロー質の美しい見た目を持った「マナウ」などがあります。それぞれ、職人によって用途に合った適材を見極められ使用されています。


また、ラタンを家具の材料とする為には加工が施されます。
家具のフレーム等に使われる構造材を「丸籐」、巻いたり編んだりする細い材を「割籐」といいます。
「丸籐」は表皮が付いており、硬くて丈夫な性質を持ちます。
一方、その丸籐の芯と皮の部分を分けて加工した材を「割籐」といい、こちらは柔軟で曲げやすいのが特徴です。
また、割籐の中でも加工後の部位によって「芯籐」「皮籐(ピール)」と呼び名がついています。

編み方の種類


編み方には様々な種類があり、その多様さはラタンが如何に性質としてもデザインとしても柔軟性に長けているかを物語っています。
椅子であれば座面・背もたれ・肘置き、それぞれに適した編み方があり、デザイン性も加味しながら丈夫で美しい椅子がつくり上げられていくのです。
編み方の具体的な例を挙げると「カゴメ編み」「四ツ目編み」「目積編み」などがあります。

ラタンの歴史


ラタンの歴史はとても古く、紀元前4000年前のエジプトでラタンのスツールが使われていたことがわかっています。
ヨーロッパでは14世紀頃に貴族の間でラタン家具の人気が高まり、細やかに編まれた豪華な椅子などがつくられていきました。
日本での使用は1000年以上前からだといわれていて、当時は籠・弓・柄巻などの戦闘武器や建築材料に使用されていましたが、江戸時代頃になると敷物・枕・タバコ入れといった生活用品が作られるようになります。
明治時代に入ると中国から籐家具の製造技術が伝来します。文明開化により異国の文化が取り入れられていく中で、籐家具も新しい生活スタイルの1つとして確立していきました。
現在では後継者不足の問題が叫ばれていますが、ラタンの需要性は今も衰えることなく、多分野で活躍し続ける重要な存在となっています。

お手入れについて


天然素材であるラタンは直射日光が苦手です。直射日光や温風が常に当たる場所には置かないようにしましょう。
また極度な湿気や乾燥も嫌うため、濡れた場合にはきちんと乾かし、乾燥が気になる時期には固く絞った布で拭いたりすることが必要となります。
もし汚れたりシミが付着した時には、固く絞った布で優しく水拭きして落とします。その際も最後はしっかり乾かすことを忘れずに。
またささくれが出てきた際には、怪我防止のためささくれの部分をハサミや爪切りで除去してください。
普段のお手入れでは、布で乾拭きしたり、掃除機やブラシでゴミとホコリを取り除けば問題ありません。
使用できないほど破れてしまった場合にはペーパーコードのように張り替えも可能ですよ。
要所要所でお手入れを気にかけながら、劣化ではなく、経年変化として味わいを増す姿をじっくりと楽しんでいきたいですね。

天然ラタン・人工ラタンの違い



人工ラタンとは、ポリ塩化ビニル・ポリエチレン・ポリプロピレンなどを用いて作るラタンを模した人工素材のことです。
編み込み技法などで生まれる繊細な美しいデザイン、表現力の高さは両者共通しています。
違う点は、天然ラタンの場合は個々に違った自然素材の風合いがあるのに対して、人工ラタンは質や見た目に均一性があることです。
中には自然素材の見た目に近づけるため、あえて色ムラを表現したものもあります。
またどちらも軽量ではありますが、人工ラタンはプラスチック製のものが多く、より軽量であるといえます。
さらに、天然ラタンはお手入れやメンテナンスが必要ですが、防水・紫外線カット機能が備わった人工ラタンはメンテナンスが比較的簡単であるという点に違いがあります。人工ラタンで耐候性に優れたものであれば屋外家具としての使用も可能です。
耐久性に関しては、それぞれ適した環境下での使用であれば両者とも永く使用することができます。ただ天然ラタンは経年変化を楽しむことができる点に大きな違いがありますね。
両者の特徴を踏まえた上で、自分に合った家具をしっかり見極めていきたいですね。

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