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ニレ (エルム)

ニレ(楡)とは、ニレ科ニレ属の総称で広葉樹に属しています。別名「エルム」とも呼ばれています。
どちらの名前も初めて聞いたという人もいるかもしれませんが、中国・朝鮮・シベリアを産地にしている他、日本でも北海道・本州・四国・九州と広く生息している樹木なので、もしかすると知らずに一度は見たことがあるかもしれませんね。
樹種によって樹高は30mを超し、伸びやかに枝を広げた美しい樹形、開花・新緑・紅葉も楽しめることから街路樹としてもよく利用され、プラタナス・ボダイジュ・マロニエと共に「世界四大街路樹」の1つとして数えられています。
立木だけでなく木材としてもとても優れていて、建材・家具材・楽器材など幅広い分野で活躍しています。
ニレとは一体どのような木材なのか‥ニレの種類や魅力について詳しく見ていきましょう!

ニレの種類

日本には「ハルニレ」「アキニレ」「オヒョウ」の3種類が分布しています。
海外にも見た目や性質がよく似た近樹種が生育していて、特にヨーロッパ産のニレ属植物「ヨーロピアンエルム」とアメリカ産のニレ属植物「アメリカンエルム」が家具材として有名です。
早速、それぞれの特徴をご紹介していきます!

ハルニレ

「ニレ」というと一般的には「ハルニレ」のことを指し、木材として主に使用される種もこちらとなります。
漢字で書くと「春楡」と書き、春に花を咲かせることからこのような呼ばれ方をしています。
海外では中国・朝鮮半島に、日本では特に北海道や東北地方などの寒冷地で多く育ちます。
樹高は25〜35m、直径は2mほどで日本のニレ属の中では一番大きく、見た目が同科の欅(ケヤキ)によく似ています。
辺材は黄白色、心材は淡褐色で境目が明瞭に分かれており、木目は通直、希少な杢目があるものは化粧的価値が高くなります。
程よい重硬さ、割れにくい性質を持っているため木材として扱いやすく、粘りがあることから曲木に適しています。
主に家具材・器具材・車両材・臼や杵の材などに使われています。

アキニレ

「秋楡」とも書き、秋の始まりに花を咲かせて実を付けることにちなんでこの名が付けられました。
中国・朝鮮半島・インドシナ半島・台湾に分布し、日本では主に西日本を中心に分布しています。
樹高は大きくても15m、直径は1mに満たず、ハルニレに比べると小振りといえます。
こちらも欅の姿に似ていますが、とても硬く強靭な性質を持つため「イシゲヤキ」とも呼ばれています。
木目ははっきりと力強く描かれ、挽物細工・車両・器具・薪炭などの材として使用されます。

オヒョウ

樹高は30m、直径1mほどの大きさで、中国・朝鮮半島・シベリア・日本の山地に分布しています。
ハルニレと同様の用途で使用されますが、家具材としてはオヒョウの方がより上質とされています。
重硬な木質、温かな手触り、絹のように滑らかな木目をした優しい印象の材で、1950年代にはイギリスなどに大量輸出していた歴史もあります。
樹皮は非常に強靭で、アイヌ民族が樹皮の繊維で衣類を織ってきたことでも有名な樹木です。

ヨーロピアンエルム

ヨーロッパのほぼ全域に分布し、現地の人にとっては街中でよく見かける親しみ深い木です。
樹高40m、直径1m以上の大きさまで成長します。
辺材も心材も淡黄褐色で、心材に向かって色はやや濃くなりますが色調は全体的に同じです。
瘤杢(コブモク)という珍しい杢目があるものは高価な材として重宝されます。
馬車の車輪材に使用されるほどの丈夫さを持ち、曲げの加工には非常に適していて、家具材以外にもフローリング材・内装材などに用いられます。

アメリカンエルム

アメリカ中央部〜南部を産地とし、樹高20〜30m、直径は約1mほどです。
北米に育つニレ類は立枯病の影響で壊滅的な被害を受けました。
辺材は黄白色、心材は灰色を帯びた淡褐色で、中には赤みを帯びた色味のものも。
辺心材の境目がはっきりと分かれていて、程よい強度と硬さを持っています。
基本的には通直で明瞭な木目をしていますが、中には木目の回り方が周期的に逆方向になって縞模様を描く「交錯木理」が見られるものもあります。
こちらもやはり曲木家具に適した材で、他にもスポーツ器具や船舶などでも使われています。

ニレの魅力

曲げ加工がしやすい

曲げ加工に適することで、家具のデザイン性を高めることができます。
中でも椅子づくりに多用されてきた材であり、有名なところでいえば、イギリスの伝統的な曲木技術を用いた「ウィンザーチェア」で使われてきました。イギリスの代表的老舗家具メーカー「アーコール」では、高温の水蒸気で木を曲げる技術を得意としていますが、そこでの主要材もエルム材です。
歴史ある伝統的な曲げ加工の技術は今も色褪せることなく受け継がれ、家具の可能性を広げ続けています。

ナチュラルな美しい木目

柾目では流れるように真っ直ぐ走る木目が、板目では波を打つような曲線を描いた木目が見られ、その美しく品のある木目はニレ材の大きな魅力となっています。
木目は明瞭に浮かび上がりますが、色味は淡く落ち着いた黄褐色のため優しい印象があり、天然木ならではの素朴な風合いを感じさせます。
国産のニレはアメリカ産に比べると細かい木目をしている傾向があり、欅の化粧材の代わりとして使われることもあります。
そして経年変化によって色味は濃褐色へと変化していき、ナチュラル感にプラスして重厚な趣も漂わせます。特徴的だった木目も徐々に濃く深く刻まれていき、より一層存在感を際立たせます。

ニレでつくられた家具のご紹介

ニレを使ったアンティーク家具・ヴィンテージ家具

オーク材が主流であった16世紀頃から使われてきた歴史ある木材で、ヨーロピアンエルムはアンティーク家具の材料として有名です。
ニレは古くから庶民の家具材に多く取り入れられ、当時の生活や文化を感じさせるような実用的な家具が現代にも多く残っています。
また「アーコールチェア」では欠かせない材であり、シンプルかつ良質な家具を数えきれないほど輩出してきました。
日本においては、車箪笥・水屋箪笥・階段箪笥など当時の生活の必需品だった様々な和箪笥に使用されたり、婚礼家具の材料として使用されたりしてきました。
時を経てさらに味わい深さを増したノスタルジックな家具は、特に和風・和モダン・大正ロマン・古民家などのスタイルと相性抜群です。


⇒ラフジュ工房のアーコール(ERCOL)の家具はこちら

ニレを使った現代の家具

現代でも家具材として活躍し続けるニレは、切削加工にはあまり向かない性質であるためシンプルなデザインのものが多く見られますが、その分ニレ材の美しい木目を堪能することができます。
木材の中でも大きな木の部類に入るので、面積のある一枚板を切り出すことができるのも魅力の1つ。
ナチュラルで落ち着いた見た目をしているので他の家具やインテリアとも組み合わせやすく、多様な空間づくりを楽しめます。そしてほっこりと温かみのある家庭的な雰囲気を演出してくれます。

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