長持とは、長方形の木箱にかぶせ蓋を備えた、衣類や調度品、寝具などを収納する家具を言います。主に江戸時代に使われ、武家を中心にひろまりやがて庶民宅でも使用されるようになりました。明治以降は箪笥が主流になり、長持が使われることはあまりなくなったようです。
長持の特徴
長持の一般的な大きさは、長さが8尺5寸(約174cm)前後で、幅・高さはそれぞれ2尺5寸(約75cm)程度であり、錠を備えたかぶせ蓋を付けた大きな箱といった風体です。内部に仕切りなどはなく、自由にものをしまうことができます。ものによっては、下部に引き出しを備えた設計のものもあります。また、両側に竿を通すための金具を付けているのも長持の特徴の一つ。移動する際には、この金具に竿を通して二人で持ち運ぶようにできています。江戸時代は嫁入り道具として無くてはならない家具でした。
素材・装飾など
長持は桐や欅、楠、栗といった木材で作られています。シンプルなデザインのものから、金物をあしらい重厚感のあるデザインのものまで、様々なタイプの長持があります。特に上等なものは、漆塗りで仕上げられていたり、家紋が入れられることもあったようです。また、金具遣いが凝ったものも多く、当時のインテリア収納としても一役買っていたことが伺えます。
長持の歴史
長持の歴史は、江戸時代までさかのぼります。室町時代以前は櫃と呼ばれる大型の木箱に衣類などをしまっていました。江戸時代に入ると木綿が普及したため寝具が大きくなったこと、調度品、衣類などが増えたことにより櫃では収まりきらなくなってきました。そこで誕生したのが長持です。それまでの収納家具と比較して大容量の長持は、まずは武家が使い始め、次第に庶民にも浸透していきました。江戸時代の嫁入り道具の一つとして重要な家具でもありました。
しかし、明治時代に入ると引き出しを備えた箪笥が衣類収納のメインへと移っていき、長持は次第に使われることが減っていきます。よって、長持の制作時代は江戸時代が中心であり、現在は骨董品としての価値を持つアイテムになっています。
長持の種類
長持には大きく二種類あります。まずは床に置いて使う一般的な長持、そして車輪のついた車長持です。車長持は、必要に応じて移動ができる長持です。特に火事が多かった江戸時代に長持を引いて避難する、といった風景が見られました。しかし、江戸の密集した町で火事が起こると車長持を引く人でごった返しになり危険だったため、江戸・大阪・京都では車長持を作ること、持つことを禁じるようになりました。一方、地方では車長持は作られ続けていたようです。
他の国のボックス収納
長持のような収納家具は他国でも作られていました。例えば、朝鮮の家具であるバンダジは長持と似ており、仕切りの無い大きな箱型をしています。フランスのコファーやイタリアのカッソーネも同様の仕様です。朝鮮のバンダジは装飾も日本の長持と似ていますが、金物を多くあしらったデザインをしています。フランスのコファーも木目を活かした見た目が特徴的。金物の装飾をしているものはほとんどない代わりに、彫刻などをあしらっていることもあります。一方で、イタリアのカッソーネはかなり細かな彫刻や美しい絵画を施した装飾があり、飛びぬけて豪華な印象です。それというのもカッソーネは婚礼家具として使われていたので、華やかなデザインに作られていたという話です。