唐木(カラキ・トウボク)とは、東南アジアなどの熱帯地方から日本へ輸入された木材の総称です。
奈良時代に中国を経由して輸入されたことから唐木と呼ばれるようになりました。
重硬な材質と美しい見た目を活かし、古くから建材・家具材・仏壇・楽器などで重宝されてきました。
中でも紫檀(シタン)黒檀(コクタン)鉄刀木(タガヤサン)の唐木三大銘木が有名で、いずれも高級木材として名高い銘木ばかりです。
木材の世界では最高峰の1つともいわれる唐木ですが、現在は流通量が大変少なく伐採や輸出入に制限がかけられているものが多いため、貴重な木材とされ希少価値は高まる一方です。
それでは、歴史ある高級木材「唐木」の種類やそれぞれの魅力について迫っていきましょう!
唐木の種類
木材として使用される唐木の種類をいくつかご紹介していきます。
紫檀(シタン)
マメ科ツルサイカチ属・インドカリン属の広葉樹で、西洋では「ローズウッド」と呼ばれています。
ブラジル・中米・東南アジアといった熱帯〜亜熱帯にかけて生息しています。
紫檀はいくつかの種類分けができますが、その中で最高級とされているのが「本紫檀」です。
種類によって見た目に多少の違いはあれど、紫みを帯びた暗褐色と黒紫色が縞模様となって現れる木目や、交錯木理が見られる点、表面を磨くと美しくて滑らかな光沢が生まれる点は共通しています。
非常に重くて硬い強靭な木質という点もよく似ていて、耐久性に優れています。
黒檀(コクタン)
カキノキ科カキノキ属の常緑高木で、アジア〜アフリカにかけて広く分布しています。
黒檀にもいくつか種類がありますが、中でも「セイロン・エボニー(本黒檀・真黒)」が最高級とされていて、心材が漆黒色をしているのが最大の特徴です。
磨けば磨くほど輝きと艶を増していくため「木のダイヤモンド」ともいわれています。
重硬で木目の密度も高く、極めて良質な木材として古来から重宝されてきました。
鉄刀木(タガヤサン)
東南アジア原産のマメ科ジャケツイバラ亜科の広葉樹で、特にビルマ産のものが良質といわれています。
木質が鉄の刀のように硬く頑丈であるため、この名が付けられたとされています。
硬さや乾燥時の狂いやすさの影響で加工は容易とはいえませんが、耐朽性は非常に高いです。
辺材は淡黄白色で主に燃料として使われるのに対して、心材は黒褐色に淡色の細い線が無数に並んだ縞模様をしていて、その美しさから主に装飾的用途に使用されます。
白檀(ビャクダン)
インド・インドネシア・オーストラリアから主に産出され、太平洋諸島にも広く分布したビャクダン科ビャクダン属の熱帯性常緑樹です。
他植物の根に寄生して、栄養を吸い取りながら自らも光合成をするという特殊な生態を持ちます。
独特の甘い香りを放つ香木として有名で、その香り成分によって殺菌や鎮静効果などが期待できます。
木目は白色や黄褐色をしていますが、経年変化によって色味は濃くなっていきます。
木質は硬く緻密で滑らかなであるため加工性に富み、特に彫刻においては最適の木材とされています。
栴檀(センダン)
センダン科センダン属の落葉高木です。
ヒマラヤ山麓を原産とし、中国・台湾・朝鮮半島南部・日本などの暖かな地域に分布しています。
「栴檀は双葉より芳し」ということわざの栴檀は白檀のことを指していて、世間的にも2つはよく混合して認識されてますが、生物学の分類からもわかるように全くの別物です。
重硬で強度があり、加工性も比較的良いとされ、家具・楽器・仏具などに使用されています。
黄褐色の明るめの色味に木目がはっきりと現れ、見た目が似ている欅や桐の模擬材にも用いられます。
花梨(カリン)
東南アジアや熱帯雨林に分布する、マメ科シタン属の広葉樹です。
食用の実を付けるバラ科のカリンとは別種になります。
赤みを帯びた褐色、そして交錯木理や波状の複雑な木目が特徴的で、磨くと美しい光沢が出ます。
その見た目や硬くて丈夫な性質からよく唐木細工に用いられる高級木材です。
別名「インドシタン」「インドカリン」ともいい、紫檀の代用材として使用されることも。
唐木の魅力
重硬で頑丈
唐木と呼ばれる木には様々な種類がありますが、全ての樹種の特徴として共通でいえることは、木でありながら水に沈んでしまうほど重く、釘が一切打てないほど硬く、半永久的といってもいいほどの高い耐久性を持っているということです。
特殊な材質がゆえに加工や乾燥は困難となりがちですが、職人技で根気よく磨き上げられた唐木は、他に類を見ないほど良質で美しい家具へと仕上げられていきます。
個性が光るそれぞれの美しさ
前記では唐木の種類についてご紹介しましたが、樹種によってそれぞれ異なった美しさや魅力を持っているところが面白いですよね。
もともと持つ唐木の木質の良さはもちろんのこと、職人の手によって磨かれたり漆などを塗られることで、艶やかな光沢と滑らかな質感が生まれます。
さらに、珍しい杢目を持ったものや、木の硬さを活かした細やかな彫刻や装飾を施されたものは、唐木家具の芸術性を一層高めます。
溢れ出す高級感と重厚感には唐木独特の趣きが感じられ、古来から世界中で珍重され続けてきた理由がわかります。
唐木でつくられた家具のご紹介
唐木を使ったアンティーク家具
奈良時代に日本へ伝えられた唐木は、安土桃山時代の茶華道の発展と共に使用量も増加していきました。
江戸時代には、当時商業の中心であった大阪にて、釘やネジを使わずに板をさし合わせて組み立てる「大阪唐木指物」が生まれました。現在では「伝統的工芸品」にも認定された有名な木工工芸品です。
日本・中国・アジアにおける唐木のアンティーク家具には、唐木の美しさを際立たせたシンプルなデザインのものが多数ありますが、彫刻や蒔絵・螺鈿などを用いた華美なデザインのものも数多くあります。
表現の仕方によって唐木の表情や印象はガラリと変わり、素材選びや技術・デザインの奥深さを感じます。
唐木を使ったヴィンテージ家具
座卓・飾り棚・箪笥・花台・火鉢といった伝統的な和製ヴィンテージ家具も、唐木が使われることによって、重厚感と風格のある雰囲気が漂います。
アジアンヴィンテージ家具では、目を惹くような凝ったデザインのものが多く見受けられ、その家具をお部屋に置くだけで一気に異国の空間へと連れ出してくれるようです。
お部屋の中のアクセントとなるような、または主役となるような存在感ある家具が今でもたくさん残っています。
唐木を使った現代の家具
歴史ある唐木家具の伝統を受け継ぎながら、ニーズに応えたモダンテイストな家具が生まれたり、現代アートや芸術家と融合した作品がつくられたりと、唐木家具は時代に合わせて進化し続けています。
耐久性のある木材なので、アンティーク・ヴィンテージ時代の家具を自分好みにリメイクして愛用することもできます。
クラシック・レトロ・モダンといった様々なスタイルにマッチしますよ!