文机(ふみづくえ)は、主に書道や書物の筆記などで使うための家具を指します。床に座って使用することを前提に設計されているため、低めでコンパクトなサイズ感が特徴です。奈良時代に原型となる机があらわれ、昭和中期まで勉強机の定番品として親しまれてきました。座って使うことから「座机」とも呼ばれます。
文机の特徴
文机の最大の特徴は、床座スタイルに適した低い高さです。座布団や畳の上で使うことを想定して設計されています。サイズは大小さまざまあるものの、横幅が約60~90cm、高さが約30~50cm程度のものが一般的です。
また文机のデザインによっては、天板の下は引き出しや収納スペースが備わっていたり、天板の端が反り返った「筆返し」と呼ばれる、筆が転がり落ちるのを防ぐための機能がついてたりするものも見られます。
文机の装飾
シンプルで機能的な文机が多い一方で、細部に装飾が施された豪華な文机も存在します。特に明治時代から昭和初期にかけて製造された文机には、漆塗りや蒔絵など日本独特の伝統技法が用いられているものが多く見られます。文机は、実用的な家具としてだけでなく工芸品としても評価されているのです。
文机の歴史
本項では、文机の歴史について解説します。
起源と発展
文机の歴史は古く、奈良時代までさかのぼります。当時は、物を置く台を総じて「机(つくえ)」と呼んでいました。のちにお寺などで筆記に用いられるようになったなると「文机(ふみづくえ、ふみつくえ)」と呼ばれるようになります。
平安時代に入ると、貴族たちが書物を読んだり和歌を詠んだりする際に用いるようになり、文机は上流階級の象徴的な存在となりました。鎌倉時代以降は、僧侶の間でも広く使われるようになり、機能性と美しさが追求されました。
江戸時代になると、文机は武家や町人のあいだでも普及しはじめます。寺子屋や私塾が増えると、子どもたちが読み書きを学ぶ際に文机が使われました。文机は、学習机としての役割も担うようになっていったのです。
明治時代~昭和時代
明治時代になると、西洋文化の影響で椅子やテーブルが日本に伝わりはじめます。しかし西洋家具は高価だったため、庶民の間では文机が依然として使われ続けました。
昭和期に入っても、多くの家庭で子どもたちの勉強机として文机が置かれるのが一般的でした。しかし戦後に西洋式のデスクが普及すると、文机は徐々にその地位を失っていきました。
現代における評価
現在、文机が使われるシーンは少なくなっているものの、機能性や使い勝手の良さが依然として評価されています。
例えば、軽量かつコンパクトなサイズ感を活かしたケースです。和室の勉強机だけでなく、作業台や物置台など幅広く活用されています。また最近ではリビングのテーブルに使うケースも増え、文机の用途は単なる勉強机に留まりません。
ちなみにアンティーク家具市場でも、文机は注目度の高い家具として知られています。日本ならではの風情あるデザインや質の良さが評価されています。古民家風インテリアや和モダン、レトロテイストのインテリアなどに幅広くマッチするため、デザイン性で文机を愛用する人も多く見られます。