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茶碗とは

今の時代で「茶碗」といえば、食卓で手に取る「ご飯茶碗」が一般的ですよね。 でも、本来茶碗というのはお茶を飲むための器でした。時代が経つにつれ陶磁器の総称となり、ご飯茶碗も含めた多くの意味を持つようになったといわれています。

茶道具としての「茶碗」の特長とは?

  • 茶道における茶器は形も色合いも上品で目立ち過ぎないことが求められる。
  • 質感や重さなど使うことで伝わる感覚や口当たり・飲み当たりの心地良さが重要視される。
  • 茶道においての茶碗は、「客人においしくお茶を召し上がっていただくための茶道具の1つに過ぎない」と、捉えられている。

これら3つの事柄を念頭に、今回は茶道具における茶碗の価値やその役割について、詳しく紹介していきます。

茶碗の価値を決めた、「一楽二萩三唐津」、「一井戸二楽三唐津」とは?

タイトルの言葉の意味をご存知でしょうか? 実は、どちらも茶碗の評価を表す言葉です。

「一楽二萩三唐津」

「楽」は京都の楽焼で、「萩」は山口の萩焼、「唐津」は佐賀の唐津焼であり、「井戸」は井戸茶碗のとこを意味します。
前につく数字は、その評価順位。つまり「一楽二萩三唐津」であれば、楽焼の評価が最も高いということです。

「一井戸二楽三唐津」

一方、「一井戸二楽三唐津」の場合には、井戸茶碗が最も優れている、ということになります。

一般的なのは前者ですが、井戸茶碗を評価する声も多く、このあたりは個々の好みというか、価値観により変わってくるようです。
では、それぞれの茶碗の特徴をご紹介します。

楽焼(京都)

抹茶茶碗 楽焼

 

400年以上続く「楽家」という窯元が作る茶碗であり、もともと茶人として有名な利休が、自身の流派に合う茶碗づくりを、こちらの家元にお願いしたのが始まり、といわれています。

侘茶(わびちゃ)の精神が体現された、楽焼の特徴

利休の茶道である侘茶(わびちゃ)の精神は、豪華絢爛とは真逆の“わび”の精神で、シンプルを重んじるというもの。
楽焼はまさにその精神が反映された茶碗といえます。

楽焼の種類は釉薬で分けられる

釉薬の色は「赤楽」「黒楽」「白楽」といった3種類が基本ですが、どのタイプも図柄などはほとんど描かれず、とにかく質素という印象です。
特に黒楽に関しては、ほとんどの作品が黒一色で、素地の土色も見えないほど厚く釉薬が掛けられています。

多くの窯元が存在する楽焼。有名作家も

楽焼の祖である楽家がやはり有名な窯元になりますが、それ意外の窯元が作った作品ももちろんあり、有名な作家も数多くいます。

楽入窯(吉村楽入)や松楽窯(昭楽)、玉水焼(玉水弥兵衛)や桂窯、和楽、小川長楽などです。
千家十職でもある楽家の当主名は楽吉左衞門で、現在の当主は十五代目にあたり、工房の隣に美術館を併設し、代々の当主が製作してきた作品を展示しています。 なお楽家では、隠居後に名前が送られ、作品はそちらの名前で紹介されることが多いので、あわせて紹介しておきます。

まず、初代長次郎の妻の祖父である、田中宗慶(そうけい)。その子供である庄左衛門・宗味(そうみ)。
その後は、ニ代吉左衛門・常慶、三代道入、四代一入、五代宗入、六代左入、七代長入、八代得入、九代了入、十代旦入(たんにゅう)、十一代慶入、十二代弘入(こうにゅう)、十三代惺入(せいにゅう)、十四代覚入と続きます。

【萩焼(山口)】

萩焼 茶碗

京焼と同じく、400年の歴史を誇る焼き物です。粒子の粗い土を使って作るのが特徴の萩焼は、釉薬の表面に無数の細かなヒビ(貫入)があり、そこから水分や湿気が浸透していく、という特徴を持ちます。

萩焼の特徴と言えばこれ。「萩の七変化」

萩焼 特徴

上記で紹介したように、粒子の粗い土を使っている萩焼は、注いだお茶が茶碗自体に染み込み、使い始めの頃には表面にまで出てくることもあります。
聞いただけでは「使いづらい茶碗なのでは?」とお思いでしょうが、これこそが「萩の七化け」とも呼ばれる現象です。

萩焼は茶碗に茶の成分が浸透していき、早ければ数か月で器表面の色合いが変わっていきます。
これが年数を追うごとに何とも趣きのある色合いに変化していくため、器を「育てている」と言っても過言ではありません。ファンにとってはたまらない萩焼き特有の特徴です。

萩焼の主な釉薬は2種類

形は井戸型が多く至ってシンプルで、素材である土の風合いを活かした図柄など描かれていないものがほとんどです。釉薬には無色透明の釉薬で素地の枇杷色を活かすことが出来る枇杷釉、またこってりとした不透明の白濁色で、藁灰を主成分とした白萩釉がある。

井戸型とは?

●口が大きく開いた朝顔のような形の茶碗のこと。朝鮮半島から伝来した形状といわれています。萩焼には朝鮮半島の影響を受けた形のものが多くみられる。

人間国宝も。萩焼の有名作家

三輪休雪、坂田泥華、坂高麗左衛門、坂倉新兵衛、田原陶兵衛、坂田泥華、吉賀大眉などが有名です。

【唐津焼(佐賀)】

歴史は古く、平安時代とも室町時代ともいわれていて、豊臣秀吉との関係性も持つほどです。江戸時代に最盛を誇り、現在でも70を超える窯元が佐賀県・唐津市に点在しています。

素材の特長を活かして作られる唐津焼

おおらかな作風のものが多く、枇杷(びわ)色とも称され褐色や、緑がかった茶褐色の素地に白化粧土(白色の泥)を塗ったり、無色透明や白濁色の釉薬をかけて作られます。これら素材の組合せによって、多彩な表現が可能です。若い作家が積極的に作品を作り出している点も特徴と言えます。

唐津焼は技法の種類が多彩

褐色の素地に鉄釉で素朴な絵を描いた絵唐津(えがらつ)、「象嵌」のように、彫り跡に白化粧土を塗って掻き落とした柄が美しい三島(みしま)、素朴でありながらも、褐色の素地と釉薬の重なりが奥深い表情の粉引(こひき)があります。その他にも斑唐津(まだらからつ)、黒唐津(くろからつ)、朝鮮唐津(ちょうせんがらつ)、などがあります。

松井康成 茶碗

松井康成の粉引茶碗。こちらは唐津焼ではありませんが粉引の技法を使っています。
器表面には粉引の特徴であるホツや貫入が見られます。

唐津焼の人間国宝・有名作家

中里無庵(人間国宝)、中里太郎右衛門、西岡小十など。

【井戸茶碗】

李朝時代(1392~1910年)の朝鮮で、ごくふつうの焼き物として使われていた茶碗(朝鮮茶碗という)を、利休が抹茶茶碗に適していると感じ、使い始めたのが始まりだといわれています。そのため皮肉として“失敗作”と評する人も。
ただ、伝来後は日本でも多く作られ、骨董品の価値としては、特に朝鮮から伝わってきた年代物の品はかなり価値があり、中には国宝級の逸品もあるほどです。

そぎ落とされた美しさ、井戸茶碗の特徴とは

素材の土色をそのまま活かしたと色合いが印象的です。
高台は竹の節のような形をしており、釉薬が鮫肌状に飛び散っているのが特徴です。 この細工は「梅花皮(カイラギ)」と呼ばれ、井戸茶碗を判断する際の1つの指標になります。

形によって様々な種類がある井戸茶碗

形によって区別され、それぞれ井戸、古(小)井戸、青井戸、井戸脇(わき)、小貫入(こがんにゅう)と分類されています。
ですが違いは曖昧で、かなりの専門家でないとはっきりとした区別はできない、というのが正直なところです。

国宝に選ばれる作品を残した井戸茶碗の有名作家

喜左衛門(国宝)、細川(重要文化財)、筒井筒(つついづつ)などが挙げられます。
ただそもそもふつうの焼き物ですから、作家は不明であり、作品銘が記されています。 もちろん、日本の有名な作家が作った名品も数多く見られます。

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