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シェーズロングとは

シェーズロングとは、足を伸ばして座ることや寝ることが出来る、休息用の寝椅子のことを指します。現代ではデイベッド等と同義的な存在として捉えられていますが、比較的小ぶりのものを指します。17世紀初期にフランスで原形が発生し、18世紀以降ヨーロッパ各国で流行したのち、世界的に広まりました。

シェーズロングの特徴


シェーズロングは、華やかなサロン文化に育まれてきた特性上、華麗な外観とくつろぎを追求した安楽性が特徴的です。製作された国や年代によって多少ばらつきがあるものの、脚をのばす、もしくは寝転んでくつろげるよう横長に形成されているのが基本的なスタイルです。さらに、身体を支えるために座面の短辺側に背もたれが、長辺側には肘かけ、そしてクッションが付けられています。ちなみに背もたれの形状には、単純に四角い形やゴンドラ型、上端に反りや巻きを施したデザインがあります。

脚の形状

シェーズロングの脚の形状には、円柱、角柱、猫脚、サーベル型、挽物装飾(ロクロを回して木を加工すること)などがあるほか、脚先にキャスターが付いたものもあります。なお、脚の本数は、4本タイプから8本タイプまであります。

様式と意匠

シェーズロングに用いられた様式には、バロック、ジャコビアン、ウイリアムアンドメアリー、コロニアル、ロココ、クイーンアン、チッペンデール、アダム、新古典主義、折衷主義、復古、アールヌーボー、アールデコ、などがあります。

また、脚部や背もたれ、座面には彫刻が施され、ルネサンスやバロック様式の影響による古典モチーフがあしらわれました。なお、具体的には貝殻、アカンサスの葉、ロゼット(花紋)、唐草、渦巻き、幾何学模様といった意匠が当時は好まれたようです。

装飾と材料

彫刻以外にも、寄木細工(マルケトリー)や象嵌(インレイ)、板貼り(ベニアリング)、金箔貼り(ギルディング)、着色などの装飾も用いられました。

そして材料には、ウォールナット、ビーチ(ブナ)、ローズウッド(紫檀)、マホガニー、オーク(ナラ)といった木材のほか、張地には織物や皮革、籐、藁、羽毛などが使われました。いずれも高級素材をふんだんに使い、贅を凝らした家具となっています。

シェーズロングの歴史

フランスのサロン文化で生まれたシェーズロング

シェーズロングの歴史は、さかのぼること17世紀初期のフランスではじまります。当時、王侯貴族のあいだでは寝台近くでの談話を楽しむ文化がありました。その際、「デイベッド」と呼ばれるベッドとソファの中間のような家具が使われていたのです。

18世紀半ばになると、サロン文化が流行。サロンチェアと呼ばれるサロンに集う客人用の椅子の一つに、このデイベッドを原形にした休息用の寝椅子「シェーズロング」が登場します。ちなみに、シェーズとはフランス語で「肘無し椅子」、ロングは「長い」を意味し、ベッドの役割ではなくサロンチェアのバリエーションの一つとして生み出されたのでした。

「サロンチェア」について、以下でも解説しています。こちらもぜひご覧ください。

⇒RAFUJU MAG 辞典「サロンチェア」のページはこちら

イギリスでのシェーズロング


一方イギリスでは、17世紀半ばにフランスの影響にされデイベッドが使われるように。当初は肘無し椅子を延長した簡素な形状でしたが、17世紀末になるとクッション付きの豪華なデイベッドに変化していきました。

そして18世紀には、海外進出や産業革命により富裕層が増えたことにより、イギリスでもサロン文化が隆盛。サロン家具の需要が増すとともに、上流階級のあいだでシェーズロングの名称も使われ始めたのでした。さらにその後、家具職人チッペンデールや建築家ロバート・アダムによって、家具や内装はイギリス独自のものに発展していきます。フランスのサロン家具に比べると装飾は控えめになりますが、そこにはイギリスの産業革命による新時代の幕開けを主張するような思いも込められていたことでしょう。

やがて19世紀になるとヴィクトリアン様式が台頭。産業革命の影響は続き、上流階級向けだったサロン家具も中流階級にまで広まります。シェーズロングも住宅事情や使用用途にあわせて多様化し、軽量で小型なものが作られました。

現代でも注目され続けるシェーズロング


サロン文化は20世紀初めころまで続き、20世紀半ばになるとほとんど消滅してしまいます。しかし、サロン家具が築き上げた高い技術性や芸術性は計り知れず、後世に多大な影響を与えたのでした。シェーズロングも例外ではなく、ヨーロッパの家具メーカーは古い様式の復刻品を製作したり、新鋭デザイナーによる革新的なデザインを取り入れたシェーズロングが生み出されたりしました。また、同じころ科学技術の発展もめざましく、素材や技術が採用され、かつ安価に製造できるようにもなったことから庶民にも広まります。

このようにして、上流階級が使う高級家具という認識だったシェーズロングは、世界的にかつ多様な文化圏へ普及していったのでした。現在でも、シェーズロングの快適性やデザイン性への人気は高く、インテリアでは定番のアイテムにもなっています。また、近年ではヨーロッパの伝統的な家具としても注目され、その美的感覚に優れた外観が特にアンティーク家具市場では花形的な存在を誇っています。

シェーズロングとカウチの違い

シェーズロングとよく似た家具に、カウチがあります。一見違いがわかりにくい両者ですが、次に紹介する二つに着目すると区別が可能です。

一つは、座面の伸びる方向。シェーズロングは、背もたれに対して前方向に座面が伸びているのに対し、カウチは座面が横に伸びています。そして二つ目は背もたれの位置です。シェーズロングの背もたれは片側の端、つまり座面から見て短辺に付いていることに対し、カウチの背もたれは長辺に付いているという違いあります。ちなみにシェーズロングの長辺側には、背もたれは存在せず、肘かけのみ付けられているのが一般的です。

両者に何故このような違いがあるのかと言えば、そもそも使用用途が異なる点にあります。そもそもシェーズロングは、座る人が脚を前に伸ばしてくつろげるように設計された一人掛けのソファでした。形状によっては二人で座ることもできますが、基本的に一人掛けのため少し座面は短めに作られています。一方、カウチは座面に寝そべることを用途としており、シェーズロングと比較すると座面が広く長くできています。このため二~三人で腰かけて座ることも可能です。どちらもゆったりとした座り心地が特徴ですが、背もたれの位置や形、座面の長さに着目してみると区別ができます。

以下の記事では、シェーズロングやカウチのほかに、類似したソファを紹介しています。もっと知りたい!という方はぜひご覧ください。

⇒「アンティークソファの種類って?正式な名前を知りたい!」のページはこちら

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