バンフットとは、球体もしくは球体を少し潰したような形で作られた家具の脚のことです。バンは英語で「丸いパン」のことを指し、まるでハンバーガーに使用されるような丸みを帯びたパンの形に似ていることからその名が付きました。
球体の潰れ具合や形状の違いによってボールフットやチューリップバンフットなど異なる名称で呼ばれることがありますが、ここではそうした丸い形状でできた脚を「バンフット」と総称してご紹介していきたいと思います。
大変歴史のある脚のデザインですが、その人気や需要は衰えることなく現代でも「家具の脚の定番」として愛され続けています。
バンフットの特徴
バンフットは丸みのある滑らかなシルエットを持つところに特徴があり、そうした曲線美からは柔らかさや華やかさが漂います。
このような美しい曲線は、木工旋盤という機械に固定した木材を高速回転させて刃物を当てながら削ることで作られ、木材の回転速度・彫りの深さや角度によって様々な形を生み出すことができます。
また見た目の美しさだけでなく、椅子やオットマンのような軽い家具からソファやキャビネットといった重さのある家具まで、どんな家具もしっかりと支えることができ安定力抜群です。使われる素材はオーク・メープル・チェリー・クルミなど多種多様にあります。
製造された国よって醸し出す雰囲気も異なり、例えばイギリス製のものはシックな重厚感が漂い、フランス製のものは優雅な華やかさが感じられます。
バンフットの種類
先述の通りバンフットには様々な種類のデザインがありますが、主なスタイルを4つをご紹介します。
球体スタイル
綺麗な円を描いた球体スタイルは、インパクトのあるデザインで尚且つ空間に柔らかさや可愛らしさを与えます。
楕円形スタイル
球体を潰したような楕円形スタイルは、落ち着きと安定感を感じさせ、シンプルがゆえにその曲線美を際立たせます。
チューリップ形スタイル
優雅なくびれが印象的なチューリップ型スタイル。下部が上部よりも細くなっていることが多く、スタイリッシュに脚元を飾ります。
彫り装飾スタイル
彫刻で表面に模様を施したスタイルもあり、脚だけでなく家具全体をより華やかに豪華に飾るデザインです。
バンフットの歴史
主にイギリスやフランスのアンティーク家具で見られるバンフットですが、誕生したのは17世紀頃だと考えられています。
当時ジェームズ1世が王位についていたイギリスでは、オーク材を使って重厚感と上品な華やかさを持つジャコビアン様式で家具が作られていました。ジャコビアン様式といえば「ボビンターニングレッグ」というデザインが誕生した時代でもありますが、挽物細工が盛んであったこの時代の後期頃にバンフットは生まれたとされています。
その後カロリアン様式、そしてウィリアム&メアリー様式へと時代が移り変わると、家具の素材はウォルナット材が主流となっていきます。イギリスを共同統治していたウィリアム&メアリーはオランダの家具作りの影響を強く受けており、象嵌や寄木細工などの装飾技術に磨きをかけた優美で繊細な家具を数多く作り出していきました。そうした家具の脚部分に取り入れられた綺麗な球体のバンフットは「ウィリアム&メアリーバンフット」と呼ばれ人気を博します。
こうしてバンフットの流行はイギリスを中心に18世紀頃まで続き、19世紀になるとチューリップ形のバンフットが登場したり、長い時間をかけながらリバイバルされたり、時代によって様々な変化を遂げていきます。
もちろん日本でもバンフットの家具はたくさん作られ、例えば和と洋を織り交ぜたデザインが特徴の老舗家具メーカー「松本民芸家具」でも見ることができます。
今日まで世界中で大切に受け継がれてきたバンフットは、現代でもなおその伝統的な造りで家具をしっかりと支えながら、脚元に美しさと華やかさを添えてくれます。
バンフットのあるインテリア
クラシカル感あふれるアンティークのバンフット家具を現代のインテリアに取り入れれば、空間にグッと深みを与えることができます。
小振りでシンプルなバンフットはコロンとした可愛らしい雰囲気を演出できたり、大振りのサイズであれば貫禄ある重厚感を味わえたりと、多彩にあるデザインによって個性豊かな表情を楽しむことができるのでインテリアの幅も広がりますね。