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甲冑(かっちゅう)とは

甲冑はその時代によって、美術的要素の高い甲冑もあれば、その逆、戦闘を重視し、機動性を追求した甲冑もありました。甲冑の歴史を見ていくと当時の暮らしや政治に必ず通じるものがあります。この記事ではそんな甲冑の進化を時系列でご紹介していきます。

甲冑

 

甲冑のはじまり、はにわも着ていた桂甲(けいこう)

群馬県から出土した埴輪(はにわ)が身に着けていたものが桂甲(けいこう)と呼ばれる甲冑です。この埴輪は古墳時代後期のものとされており、細い鉄板を何枚も繋ぎ合せて作られた甲(こう)と言う鎧に、頬当てのある兜、腕には籠手(こて)、足に臑(すね)当てを身に着けています。この埴輪からは奈良時代の甲冑の様式をうかがうことが出来ます。

戦い方の変化と共に、甲冑も姿かたちを変える。「大鎧(おおよろい)」の登場

平安時代から続いた徒歩での戦いから、馬と弓を使った騎馬戦に戦いは変化して行きます。それに合わせて、甲冑も変化していきます。その甲冑の姿形こそ、純日本的な大鎧の形です。

大鎧は草摺り(くさずり)部分が前後左右四つに分かれているのが特長です。正面は弓やの弦が引っ掛からないような施しがしてあります。
大鎧は外見が大雑把な造りでしたが、一つ一つの飾りつけが大きかったこともあり、豪壮な印象が特徴的です。

●草摺り(くさずり):腰~大腿部にかけて釣り下がっている防具。草を分けて歩く際にぶつかる部分という意味でこの名がついた。分かれている枚数によって甲冑の時代を判別できる。

 兜の種類にも時代ごとの流行があった

兜には形状によって名前が付けられています。左から「頭形兜(ずなり かぶと)」「筋兜(すじ かぶと)」「星兜’(ほし かぶと)」
大鎧が登場した平安時代中期には星兜が主流だったと言われています。

兜 種類

甲冑は武将たちの「晴れ着」へと変化?

鎌倉時代になると甲冑は戦闘用というよりも武将たちの晴れ着のようなものとして扱われていたこともあり、この時代に発達していた染色技術を甲冑造に取り込んだことが大きく見た目が変わった要因でした。

「色」を得ることで、甲冑はより豊かに

その染色技術とは紫裾濃(むらさきすそご)と呼ばれる紫色の濃さを代えて編み込む技法。この技法によって色彩豊かな甲冑へと生まれ変わりました。このほか、甲冑の威し(おどし)の網目が細やかになり、兜の飾りつけも小さくなるなどの変化が見られます。

また兜の吹き替えし部分に魔除けの色でもあった赤色を使ったのも当時の甲冑の特徴です。

兜 吹き替えし

兜の左右に付いているのが吹き替えし。顔に刀が当たることを防ぐために付けられた。

調金技術を使った、「美しい」甲冑の誕生

鎌倉時代末期になると彫金技術の発達に伴って袖や草摺りに豪華な金物を配した美術工芸的な甲冑が造られるようになります。甲冑に使われた金物は青銅の塊を削りくずしという技法で削って文様を表現しました。そしてその文様に金メッキを施しきらびやかな甲冑に仕上げます。

甲冑 調金

こちらは現代の甲冑の前立てと大袖の装飾。この時生まれた装飾は現代にも受け継がれています。

鎌倉時代のメッキ

●当時のメッキは鍍金と呼ばれ、水銀に混ぜた金を青銅に塗って水銀を蒸発させる古代から残る技法でした。
この頃金箔を使った技術もあるにはあったのですが、金箔は主に木材や紙に金色を出すために用いられ、金箔を使った技術は建造物や屏風などに使われていました。

南北朝時代の甲冑は兜の飾りつけはさらに小さく細かくなります。この頃の甲冑は美術工芸品としての頂点を極めたのです。
ですが、これ以降の甲冑は戦闘使用の機動力や着心地を求める方向へと進化していったため、美術工芸的要素は無くなっていきます。

機動力を備えた甲冑、「胴丸(どうまる)」が登場

「胴丸(どうまる)」は、徒歩で戦闘を行う下級の兵士が身に着けていた甲冑です。戦国時代に登場する「当世具足」はこの胴丸から進化したものと言われています。正面にあった弦走韋(つるばしり)が省略される、草摺りが四間から八間に分かれ、より足さばきの良い物へと変わるなど、以前よりも動きやすさを重視した形状になりました。

草摺り 種類

草摺りは四間や八間のほかに、六間、七間のものもある。

時代は戦国時代へ。戦国武将が使った甲冑、「当世具足(とうせい ぐそく)」

室町時代後期から当世具足(とうせいぐそく)が主に使われるようになります。
体の各部分を細かく防護したり、着心地や機動性を重視した工夫がなされていきました。また装飾でいえば美的に美しい物を、というよりかは敵を威嚇するのに適した甲冑づくりが主な目的とされました。

甲冑の性能をさらに高めた、新しい防具

左/喉輪(のどわ) 右/佩楯(はいだて)

またこの他にも、草摺りの下に着ることでより下半身の”すきま”を無くすことのできる「佩楯(はいだて)」と、
首を守るため、顎のすぐ下に付ける「喉輪(のどわ)」も新たに作られ、用いられるようになりました。

またこの他にも体の各部分をより細かく防護することのできるように、様々な武具が充実しました。これらの防具は小具足と呼ばれます。

着心地と機動性を考えた二枚胴

例えばこの二枚胴は、前後の胴を別々にすることで、上半身の窮屈さを軽減するものです。左側に蝶番を付けて、右で結んで着用します。

甲冑 種類

一際目を惹く存在、「立物(たちもの)」の種類

また、大河ドラマなどで、武将ごとに、鳥や獅子の形や、文字の形をした兜が用いられていますが、この兜の鉢(頭を覆う部分)に取り付けられた装飾を立物(たちもの)と呼びます。
取り付ける位置によって名称があり、左のように側面に付いている物を「脇(わき)立て」、右のように中央の額部分についているものを「前(まえ)立て」と言います。またこの他にも後頭部にとりつける「後(うしろ)立て」があります。

立物 種類

左/「脇(わき)立て」 右/「前(まえ)立て」

立物は、兜に取り付け相手を威嚇したり、自らの威厳を象徴する以外にも、個人の標識としての意味もあったそうです。
戦いの激しかった戦国時代、様々な意味を込めた多種多様な意匠の甲冑が生み出されました。

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