アカンサス模様とは、アカンサスという植物の葉をモチーフにした装飾模様のことです。
紀元前5世紀の古代ギリシャで誕生してから現在まで大切に受け継がれ、ヨーロッパの中では最も歴史のある代表的な模様といえます。
アカンサスの特徴
ギリシャの国花でもあるアカンサスはギリシャ語で「トゲ」を意味し、花にトゲがあることからそう名付けられました。
葉はギザギザとした深い切れ込みのある特徴的な形をしていて、日本でも「ハアザミ」の名で知られている植物です。
文様としては、葉先が尖ったギリシャ風の「アカンサス・スピノサス」と、葉先の丸いローマ風の「アカンサス・モリス」の2種類に分けることができますが、どちらも様々な時代の様式に合わせて意匠を変えながら、発展を遂げてきました。
アカンサス模様の種類
では実際に模様にはどのような種類があるのか、代表的なものを見ていきましょう。
コリント様式のアカンサス模様
古代ギリシャのコリント様式にて、柱頭にアカンサスの装飾が用いられたのが始まりといわれています。
繊細かつ華麗に彫られたアカンサスの装飾は美しく、日本でも重要文化財である「明治生命館」などに取り入れられています。
ルネサンス様式のアカンサス模様
イタリアで生まれたルネサンス様式では古典的なアカンサス模様が多用されていきます。
またアカンサスのような植物・人・動物などが融合した「グロテスク文様」という装飾が誕生したのもこの頃で、幻想的な独特の雰囲気を醸し出しました。イギリスではバルボスレッグによくアカンサスの模様が彫られ、家具をゴージャスに彩りました。
バロック様式のアカンサス模様
豪華で煌びやかなバロック様式では、象嵌・寄木細工・金属などの装飾技術を駆使しながらよりエレガントなアカンサス模様を表現していきました。
フランスの著名な家具職人アンドレ=シャルル・ブールの作品や、当時絶頂期だったヴェルサイユ宮殿の中でもそうした意匠が数多く見られます。
ロココ様式のアカンサス模様
フランスで生まれたロココ様式では、貴婦人が好むような曲線を活かした優雅で繊細なデザインが流行しました。
C字形の美しい曲線で描かれたアカンサス模様は、当時を代表する「ロカイユ(岩や貝などをモチーフにした曲線的な装飾)」や「スクロール文様(ゼンマイのように先端が渦を巻いている文様)」と一緒に使用され、華やかさを演出していきます。
ウィリアム・モリスがデザインしたアカンサス模様
19世紀を代表するイギリスの芸術家ウィリアム・モリスは、アカンサスをモチーフに自然の生命力と躍動を感じさせる模様を数多く生み出しました。
現代でも世界中で愛され続けるモリスのアカンサス模様は、壁紙・ファブリック・カーテンと、様々な場で見ることができます。
アカンサス模様の歴史
先述のように紀元前5世紀の古代ギリシャを起源とし、各国でデザインに磨きがかけられていきました。
アカンサスという植物は強い生命力を持ち、当時の薬や防腐剤の原料にもなっていました。そうした不死や再生の象徴的存在だったことも、古代から人々に愛されてきた理由のひとつといえるでしょう。
アカンサス模様はビザンティン・ロマネスク・ゴシックなどの建築様式にも受け継がれ、ルネサンス期に復興した後は、19世紀のゴシック・リバイバルの中、ウィリアム・モリスによって愛好されたことで更なる盛り上がりを見せます。
現代でも支持され続けているアカンサス模様は、建築物だけでなく内装・家具・工芸品・食器・雑貨・紙幣・賞状の縁などの様々な装飾に用いられ、身近な存在としても楽しむことができます。
様々な所で見られるアカンサス模様の実例
実際のアカンサス模様の使用例をいくつかご紹介していきます。