RAFUJU MAG

ANTIQUEFURNITURE RAFUJU STUDIO MAGAZINE

変幻自在の空間

浜の風をほのかに感じるような、初夏の横浜で、
関内駅から向かうのは《バー・六反(ろくたん)》。
「カレーと書いてあるけど、カレーはない。
餃子が美味。店主が手がけた内装が素晴らしく、また店主はパンデイラ(タンバリンのようなブラジルの打楽器)も手作りする...」
グルメサイトの謎かけのような口コミを気にしつつ、小道を右に左にと進むと、ありました。
《カレー・酒・陶芸》と書かれた味わいのある看板が。
入り口脇の、ギターを抱え気持ちよさそうに歌い上げる陶器の人形が、「楽しい酒場はこっちだよ」とガラスケースの中から誘っているようです。

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手作りの看板

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心踊るようなお店への入口

「失礼いたします~」
扉をそろりと開けると、お昼過ぎの店内は薄暗く、窓からの光が遠くに見えます。
入り口正面には、畳の小上がりがあって、お茶室のような空間になっています。
左に進むと、大きなテーブルが2つ3つ。
その奥の窓際には、陶芸に使うロクロと電気窯らしきものが。
そして左手には台所。酒瓶が並ぶサウンターの奥に、タオルを首にかけて、まさに仕込み中といった出で立ちの六反さまがいらっしゃいました。

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奥の壁に描かれた龍が印象的なカウンター

キョロキョロしてしまう取材班に、「まずお茶でも。」と、お茶を勧めてくださいました。
テーブルの上には、緑の色ガラスにカットの入った涼し気なグラスや、陶芸をされる六反さまの自作の器などが並びます。
このカットグラスもそうなのですが、小物から家具まで、六反さまのバーにはラフジュ工房からご購入いただいたものがたくさんあります。
もともと「昔のもの」がお好きで、ラフジュ工房のウェブサイトも「アンティーク」で検索しているうちたどり着いたのだとか。
「今もよく見るんですけど。これ、使いたいな、とか思いながら。迷っているうちに『あ~、なくなっちゃった』っていう小物もいっぱいありますよ。」

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緑のカットグラス、ティーポットは、どれもラフジュ工房からご購入くださったもの

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緑あふれる店内

そんなご縁でここに集まった小物や家具は、様々な、時にはびっくりするような用途で活躍しています。
例えばイギリスアンティーク、W&Co HOMELANDの「ピューター(錫)製ティーポット」には水を入れて出すそう。
アラジンの魔法のランプのようなポットで出てくるお水。その意外性はお客様にも喜ばれるそうです。
ただの水なのに、ほろ酔い気分になりそうですね。

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アラジンの魔法のランプを開けると...?

他に、銅製とホーロー製の「洗面器」2つと「ホーローケトル」という珍しい3点セットもご購入くださっています。
すぐ目に入ったのはジョウロとして使われている「ホーローケトル」。
容量たっぷりのケトルは、たくさんの観葉植物に水をあげるのにぴったりだそうです。
ホーロー製の洗面器は、入り口付近で蚊取線香入れとして活躍中。
銅製のものは、なんと洗面所の手洗い鉢になっていました。
ラフジュ工房スタッフの視点で取り合わせられた味わいのある3点セットの、特に酸化して赤茶けた銅製の洗面器が、どのように生かされているのか興味があったのですが、洗面器中央に水はけ用の穴が規則正しく開けられていて、まるでその為に作られた容器のよう。
プロ顔負けの仕上げに感心していると「キリでポンポンっと(穴を)開けただけですよ」と事もなげにおっしゃいます。

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銅製の洗面器が、お手製の手洗い鉢に

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蚊取り線香立てとなったホーロー製の洗面器

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手前のホーローケトルは、水やりに活躍するそうです

もともと事務所だったというこのスペースを使うことになったとき、「はじめは陶芸用のアトリエにしようと思っていた」そう。
いくつかの部屋があったのを、壁を取り壊す解体作業からご自身で手がけられるうちに、「お店をすれば日銭が入るな~」と、「なんとなく始めちゃった」のがこちらのバー。
始めはカウンター席のみで営業を始めたので、現在テーブルの置かれているスペースは仕切りによって目隠しされていました。
カウンター席だけでは足りなくなって、仕切りを取り払って広くした際に先述のカットグラスや収納棚などを購入したのがラフジュ工房との出会い。

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ライター吉沢の立っている位置がカウンター席。頭上にあるのが、拡大工事で切り取られた仕切り

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木製の「壁掛け収納棚」。その下には六反さまご自身で描かれた龍が

カウンターの向こうに見える棚は気泡ガラスが入った、木製の「壁掛け収納棚」
ぐい呑やグラスが収まり、キッチンツールがぶら下がっています。
左手の扉は必ず開けておきます。
なぜなら、その扉に引っ掛けて豆電球を吊るすと、ちょうど手元の調理スペースが明るくなるからなのだそう。
目線を右にずらすと、イギリスビンテージの「アーコール ウォールシェルフ」にたくさんのスパイスが並びます。

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スパイスの並ぶアーコールのシェルフ。こちらもラフジュ工房からお求めくださったものの一つ

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うまい具合に豆電球が吊り下げられています。収納棚の気泡ガラスは程よい目隠しになります

キッチンからスタートして、店内をぐるーっと見渡すと、気泡ガラス入りの収納棚は和製、スパイスの並ぶ棚はイギリス製。
アフリカのモシ族のお面が柱に掛かり、その上には特大サイズのタンバリンのような楽器がまるでインテリアのようにぶら下がっています。
異なる国で作られた、異なる用途のものたちが、平然とその場に収まる様子。
どういった基準で選ばれているのか聞いてみると、「見た目ですね」とここもさらりと答えられますが、そう簡単な事ではないのは、言うまでもありません。

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インテリアのようで、用途もあって...

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陶芸にもタンバリンにも興味津々のスタッフ森田

学生時代から陶芸を続けて20年になるという六反さまは、
まず自分でやってみることへの躊躇がないように見受けられます。
例えば、窓に描かれた唐草模様。
「コーティングっていう、(窓枠などに使う)防水用のゴムを使って」ご自分で描かれたとのこと。
建設現場で使うというスプレー缶のような道具を見せてくださいました。
通りに面した磨りガラス一面に描かれたこの模様のお陰で、さりげなく窓際に掛けられたザルや品書きも引立ちます。

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一面に描かれた唐草模様。手前に見えるのはお品書きです

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ご自身で書かれたという屋号

味わいのある土壁も、陶土を混ぜてご自分で塗られたもの。
お店にあるアンティークの家具や小物も、どこか土のにおいを感じさせる内装によく似合っています。
つくる人、使う人、修理する人、そしてまた使う人...とたくさんの人の手を経てきたアンティークだからこそ、手仕上げの空間に肩肘はることなく馴染むことができるようです。

美味しいものを食べるのが好きという六反さま。
自作の器で食事をお出しすることもあるそうです。
「大したものはないですが...」と謙遜されますが、見せてくださった器はどれも料理を美味しく見せてくれそうなものばかり。
「これはアンティークっぽく作ってみました」など、様々なスタイルにためらわず挑戦される姿勢は、この自由自在な空間にもよく表れていると思いました。

変幻自在なもの、もう一つありました。
それは日々のメニュー。きっちり決め込むことをせずに、その時食べたいものをメニューに載せるそうで、口コミの謎もここで溶けました。
ちなみに、訪れた日は看板通り、美味しそうなキーマカレーも用意してありましたよ。

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本日のメニュー。なんだか美味しそう

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六反さまとスタッフ森田

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六反さま作の大皿を持ったライター吉沢と六反さま。
陶土を使って仕上げたという壁の前で

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ラフジュ工房 もりたより

六反様は、"つくれるものは全て造り出す"精神をお持ちの、職人気質な方でした。 不便な箇所や欲しいものがあれば、お気に入りのアイテムを使って、作り直したり生み出したり。 レトロな蚊取り線香立てにしたホーローの洗面器を筆頭に、その発想力によって新しい魅力を得たラフジュ工房のアンティークたちに、私森田も心躍りました。 それは"新鮮な懐かしさ"を感じられる、不思議なスパイスのよう。素材が傷まなければ、お部屋や好きなテイストに合わせて自由にチョイスしてしっかりと使い込んであげることも、古きよきものへの愛なのだと気付かせていただきました。

【リメイクについて】 ラフジュ工房では、ご購入時に穴あけ加工や鉄脚加工などのオーダーもお受けしております。(有料となります)尚、木製家具をメインに対応しておりますので、素材や加工方法によってはお受けできかねるものもございます。まずはお気軽にお電話にてご相談くださいませ。

筆者のご紹介

吉沢朋

「物買って来る 自分買って来る」 大好きな京都の陶工・河井寛次郎の言葉です。 家具との出会いについて伺うと、家具ひとつが使い手の価値観をいとも簡単に明らかにしてしまうので驚くほどでした。
アンティーク家具と、そこから育ったストーリーは、私にとってワクワクするものばかり。
きっと、読む人の暮らしも楽しく豊かにするヒントが隠れているはずです。

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