RAFUJU MAG

ANTIQUEFURNITURE RAFUJU STUDIO MAGAZINE

住まいを育てる

京都府南部。
真新しいマンション群が立ち並ぶ通り。
お目当ての建物が目の前にあるのに、なんと入り口が見つけられず途方に暮れていると、大きく手を振る人影が。
小柄でショートヘア、カーキ色のシャツとズボンに身を包み、
軽快な足取りで取材班を迎えに来てくださったO様。
私たちがなぜか見逃していた入り口から、マンションの中庭を通ってご自宅まで案内して下さいました。
3年程前に、衝動買いのように購入を決めたというマンション。セキュリティもしっかりしていて、素敵な共用の中庭もある理想的な現代の住まいのように見えますが、「(内装が)安っぽかったのよ」とおっしゃるので、驚いてしまいました。
阪神淡路大震災を体験しているO様。
ご主人の仕事柄、転勤が多いこともあり、
「壊れるものはええわ」とずっと思っていたそう。
つまり、家具や器、もしかしたら住まいですらも、
何かあったときに壊れてしまうものには、あえて"こだわらない主義"で来たお2人。
予期せず「自分たちの家」を持つことになり、まずは実用面で改善したい部分に手を入れることから始めたところ、いつの間にか「反動のようにこだわって」いたそうです。

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きれいな淡いグリーンの壁紙も、ご自身で選ばれたもの

はじめに気になったのが「安っぽかった」という壁紙。
ここまで変えるつもりはなかったそうですが、3ヶ月かけて、気づいてみればほぼ全てを張り替えていたそうです。
次に変えたのは照明。
O様のお宅にお邪魔すると、まず目に入る様々な照明は、O様宅の特徴的な存在でもあります。
全部で25点ほどもあるというアンティークの照明は、デザインも作られた国も様々。

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どの部屋にも、それぞれの雰囲気にあった照明がしつらえてあります

ダウンライトだとどうしてもイメージと違うので、
好みに合う照明を探すうち、海外からアンティーク風ランプを取り寄せるまでに。
その後、アンティーク「風」ではなく、本物のアンティークを求めるようになるまで時間はかからなかったそうです。

リビングルームの左手奥には、重厚感溢れるコーナーがあります。
そこに置かれているのは、ご自身でデザインされたというナラ材のサイドボード。
アンティークの器やガラスが並ぶその隣には、同じくナラ材のテレビ台が。
ラフジュ工房でお求めいただいた、「和製アンティークのサイドテーブル」です。
すぐ上の壁に掛けられた振り子時計と共に、時間が止まったかのような一角を作りだしています。

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重厚なナラ材が作りだす、統一感ある空間

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20年かけて探したという、主張しすぎないテレビ台。
華美になりすぎない程度の彫りが施されています

「素材が同じだと統一感がでるんですね。偶然ですか?」と聞いた私に
「ちゃんと探したんですよ!」と笑いながら答えてくださいました。
素材だけでなく、デザイン、大きさなどすべての面で理想のテレビ台を探すのになんと20年もかかったのだとか。
「よくある、テレビが中心、っていうの嫌じゃないですか。」
どこか「ひっそりと」したテレビ台を探していたところ、やっと出会ったのがこちら。
天板の縁には模様が彫り込まれていますが、とくに扉や引き出しはなく、いたってシンプルなつくり。
横板が1枚だけ渡されていているのが、飾り棚にもなってちょうど良いのだとか。

アンティークの家具に関して、この、"引き出しがない"ということが、O様には外せない条件なのだそうです。
「アンティークの家具の引出しを開けたときのにおいが、どうしてもカビ臭く感じられて。ガラスなら、洗えるし気にならないんですけどね。」
そんな理由もあって、こんなにアンティークのものが溢れるお宅でも、ほとんどがガラス製のランプやピューター(錫を主成分とする合金)製の食器類であったりします。
また、ヨーロッパテイストのものが多い中で、椅子は座り心地を重視して日本製を選んでいるそう。
「程よい和洋折衷を目指しているんです」と、ここもうまくバランスをとっているようです。

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アンティークとの初めての出会いは、このガラスの壺なのだとか

たくさんあるアンティークの中でもお気に入りなのが、ラフジュ工房の「イギリスアンティークの壁掛けシェード(壁掛け照明)」
もともとガスランプだったというこちらの照明は、電気がまだ通されていません。
配線をどのようにするか現在検討中だそうですが、眺めているだけでも嬉しいそう。
「ガスランプは、灯りが柔らかいのよ」と教えてくださいました。

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先がすぼまっている形が珍しいのだそうです

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ローゼットと呼ばれる土台も、ランプに合わせて木製を購入されたそう

もう一つ、ラフジュ工房でご購入いただいたものに、和製アンティークの「木製丸盆」があります。
「立ち火鉢」の蓋をするように収まっていたのですが、そのサイズ感と言い、色や木目の相性と言い、全てがぴったりで、もともとセットだったのではないかと思わせるほど。

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立ち火鉢にお盆を載せて。違和感なく使いこなされています

「インターネットで買って、色が違った、というような残念な体験はないですか?」という質問には、意外にもさらっとした答えが返ってきました。
「仕方ないよね」
「パソコンの画面によっても(見え方が)違うもんね」
ただ、インターネットで家具を買う時に失敗しないためのコツはあるそうで、なんと、写真を原寸大に引き伸ばして、置いてみたいと思う空間に収めて見るのだとか。
小物のランプから、先ほどのサイドテーブルも、すべてそのようにした"審査"を通って採用されたものばかり。
新築のマンションに、重厚感のあるアンティークの照明や小物が難なく収まっているのは、
この手間を惜しまず吟味するO様の姿勢の賜物のようです。

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こちらは改装真っ最中だった当時の写真。
家具も実寸に沿ってマスキングテープを貼って、サイズ感を確かめたのだそう

全体を通して、とことんこだわって選び、手をかけていらっしゃるのですが、それでいてアンティークと現代家具、洋物と和物など、柔軟に、バランスよく取り入れられているのは、住み心地や実用性を一番に大切にされているからのようです。

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こちらもラフジュ工房でお求めくださったイギリスビンテージ、ホーロー製のブレッド缶。
キッチンツールがぴったり収まります

「壊れるものはええわ」と思っていた時代から、衝動買いした住まいをきっかけに、思わぬアンティークとの出会いがあり、
そして気づけば3年という年月をかけて、とことん手をかけて育てた家に、今では「愛着を感じる」そうです。
そして、家を育てるプロセス自体が「楽しいよ~」と私たちにもお勧めしてくれたほど。
人生、どんな出会いが待っているか分かりません。
出会ってしまったら、楽しんで、そして大切にしたいと思いました。

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O様とカメラマン大村、アシスタントの沖川


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ラフジュ工房 もりたより

アンティークのはじまりが照明、というO様。ガスランプの灯りの特別感など、好きなものにとことん向き合って深められた知識やセンスが、お部屋の端々から感じられます。 ご購入時の工夫として考えられた、写真を原寸大に引き伸ばして置いてみるなど、手間はかかれど失敗知らずなアイデアも脱帽です。 だからこそ、お部屋はもちろん、家電や他の家具ともしっくりと調和していて見ているこちらも気持ちがいいほどですね。 Oさまが目指されている"程よい和洋折衷"は、一つのジャンルにとらわれず、好きなものをより良い状態でお部屋にレイアウトできるので、現代のお家にこそおすすめのテーマだと感じます。

【アンティークのにおいについて】
O様がご心配されていた、引き出しを開けたときのにおいについてですが、あくまでも古いお品物ですので新品家具とは異なるアンティーク家具独特のニオイは多少ございます。また、仕上げの際に使用しておりますワックスのニオイがお届け後にも残っておりそちらが気になられる際には、お部屋の換気など送風していただきますと、だんだんと周囲のにおいに馴染んでいきますのでご安心くださいませ。

筆者のご紹介

吉沢朋

「物買って来る 自分買って来る」 大好きな京都の陶工・河井寛次郎の言葉です。 家具との出会いについて伺うと、家具ひとつが使い手の価値観をいとも簡単に明らかにしてしまうので驚くほどでした。
アンティーク家具と、そこから育ったストーリーは、私にとってワクワクするものばかり。
きっと、読む人の暮らしも楽しく豊かにするヒントが隠れているはずです。

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