薬箪笥とは、医師や薬屋が使用していた収納家具で、小さな引き出しがたくさん並んだ箪笥を言います。その名の通り、薬や漢方薬を種類ごとに分けて収納するためのもので、中国から伝えられた家具の一つです。当時は医師が使い勝手の良いように特注で作られたものが多く、決まった形が無いのも特徴です。現在ではインテリアとしても人気があります。
薬箪笥の特徴
薬箪笥は他の箪笥と比較すると数倍は引き出しの数が多く、ものによっては100個以上の引き出しがあるものも存在します。引き出しの多さから百味箪笥とも呼ばれています。小さな引き出しが多数ならんでいますが、引き出しの大きさや幅などに決まりはなく、医師や薬屋が使いやすいようにそれぞれ特注で仕立てられていました。持ち運べるほどの大きさのものから、壁一面を覆うほどの大きなサイズの物までさまざまです。
現在は洋風のキャビネットに活躍の場を奪われ、薬箪笥の生産はほとんどされていません。しかしながら、小さな引き出しがびっしりと並んだ佇まいは人を惹きつけるものがあり、小物の収入やインテリアアイテムとして注目されています。
「桐」について、以下でも解説しています。こちらもぜひご覧ください。
素材・装飾
薬箪笥の多くは材質が伸縮しにくく湿気にも強い桐材を使用しています。珍しいものだと、欅、ナラ、ニレ、杉などを使用しているものもあります。漆塗りで仕上げた高級感のあるものもあり、オーナーの好みが反映されていることが良く分かります。
また、引手の種類も時代ごとに異なります。古い薬箪笥は引手が丸環や小ぶりの摘みが多く、大正・昭和以降のものはラベルを入れられるものや洋風のデザインである事が多いです。
薬箪笥の種類
薬箪笥の形状は医師や薬屋がオーダーで作っているものがほとんどのため、様々なデザインがあります。安定感のある横長のものや、かなり高さのあるものまで多種多様です。部分的に引き出しが横長になっているものなどもあり、用途に分けて使っていたことがうかがい知れます。部屋の片隅に置きやすい小ぶりなデザインのものから壁を覆うほどの大容量のものまであり、欲しいサイズを探しやすいのも特徴です。
また、箪笥の脇に竿を通せる仕組みがものも。必要に応じて移動していたこともあったことが分かります。小ぶりのものの中には背負って持ち運べる携帯用のデザインのものもあり、あらゆるシーンで薬が必要とされていたことが見て取れます。