アンティークのチェストが欲しいと思っても、初めて買うにはちょっと高いかな、と購入に踏み切るか迷ってしまいませんか?
それなら、中古やアウトレット品として販売されている激安のアンティークチェストを買って、自分で修復してみようか、もしくは家に眠っている古い和箪笥を掘り出してみようか、など、セルフリペアに挑戦したいと考えている方もいるかもしれません。
激安のアンティークチェストや中古のタンスでも、きちんとセルフリペアできれば、低価格で自分好みのアンティークチェストを手に入れることができます。ただ、格安で販売されているアンティークチェストの中には、作りが粗いものや状態が極端に悪いものなどもあるため、DIY初心者の方や高い実用性を追求する方には、あまりおすすめできません。
それでもやっぱり激安のアンティークチェストを自分でリペアして使いたいという方へ、この記事では、弊社の知識と経験をフル活用して、購入からリペアまで手順やコツをご紹介します!低価格のアンティークチェストの中でもリペアしやすいチェストを選ぶ方法や、作りの良し悪しを見極める方法、リペア手順までたっぷりとお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
リペア方法は、職人が実際に行っている内容ですので、少しハードルが高いと思われるかもしれませんが、手順通りに実践すれば外観も使いやすさもハイクオリティのアンティークチェストに仕上がります。理想の完成イメージを思い描きながら、丁寧に進めてみてくださいね。
Contents
- 1 激安のアンティークタンスを購入する際のチェックポイント4つ
- 2 激安のアンティークチェストが美しく蘇る!リペアに必要な道具リスト
- 3 格安のアンティークチェスが見違える!アンティーク家具屋が実践するリペア方法
- 3.1 中古のアンティークチェストを水洗いして汚れを除去する
- 3.2 アンティークチェストのリペアが必要な部分を確認する
- 3.3 そのまま使う部分を傷つけないようにアンティークチェストを分解
- 3.4 アンティークチェストの傷んだ部分を取り替えながら修復
- 3.5 アンティークチェストの接合部分は念入りにチェック
- 3.6 アンティークチェストの軽い虫食いや節穴は、木工補修用ねんどで補修
- 3.7 アンティークらしさを残しつつ、表面の気になる汚れを削り取る
- 3.8 必要に応じてアンティークチェストの強度を高めるリメイクを行う
- 3.9 アンティークチェストの可動部の動きをスムーズに整える
- 3.10 アンティークチェストの金具など金属のサビを落とし、ゆるみを直す
- 3.11 アンティークチェストの木工リペアが一通り完了したら、着色・ワックスで仕上げる
- 4 最後に
激安のアンティークタンスを購入する際のチェックポイント4つ
まずは、激安のアンティークチェストの中から、リペアしやすい商品を見分けるためのチェックポイントをご紹介します。はじめは良し悪しの感覚が掴みづらいかもしれませんが、いくつかアンティークチェストやタンスを見比べて触っているうちに、違いがわかってくるはずです。お手持ちのアンティークタンスをリペアしたいという場合も、リペアに向いているタンスかどうか、まずは確認してみてくださいね。
激安アンティークチェストの中でも華奢な作りのものは避ける
1つ目のチェックポイントは、アンティークチェストの作りについて。斜め45度くらいからチェストやタンス本体を押してみて、全体がフニャッと歪むもの、華奢さや安っぽさが感じられるものは、リペア候補から避けてください。薄い材料でできていたり、作りが粗い可能性が高いです。良質な作りのチェストは、構造がしっかりとしているため押しても歪まずガシっとしています。見た目にも明らかに厚い材が使われているチェストだと、作りの質が高く、修復もしやすいのでおすすめです。
ただ、北欧スタイルやミッドセンチュリースタイルのチェストなど、そもそも線の細いデザインのチェストは例外です。そういったものは、他のチェックポイントで判断してみてください。
軽すぎる激安アンティークチェストは避ける
2つ目はアンティークチェストの重さについて。小ぶりなものであれば、チェスト全体を持ち上げてみて、感覚的に軽すぎないか確認してみましょう。大きなサイズの場合は、片方を地面に着けたまま、もう片方を持ち上げてみて判断してください。また、全体だけでなく引き出しも出し入れしてみて、大きさに対して軽すぎないか確認してみましょう。
激安アンティークチェストの中でも、引き出しレールがボロボロのものは避ける
引き出しを完全にチェストから取り出して、本体側に付いている引き出しレールを確認してください。レール部分の状態が悪い場合、新材でレールを作って交換する必要があり、作る際にレールの厚みや幅をミリ単位で調整しなければなりません。この作業は、木工機械がないと理想通りに仕上げるのは難しいので、選ぶ段階でボロボロのものは避けた方が無難です。
また、レールだけでなく引き出し側に問題がある場合もあります。引き出し本体のレールと接している部分がレールと磨耗している場合、こちらも細かな調整が必要となるため、DIYだと根本的な改善が難しいです。
そもそもレールが傷んでいるということは、使用頻度も高く使い込まれていた証拠でもあります。他の部分も傷んでいる可能性が大きいため、いくらデザインが気に入っていたとしても避けた方がいいでしょう。
アンティークチェストの引き出しはどんな状態か確認
最後に引き出し自体の状態も確認しておきましょう。引き出し内は基本的に傷んでいるものが多いので、リペアの際にできればすべて新材で取り替えるのがおすすめです。しかし、そこまで傷みがひどくない場合や、労力をかけたくない場合は、表面をランダムサンダーで削る、もしくは、引き出し内を丁寧に洗う、といった手順でリペアを進めます。どんな風に手を加えるかイメージしながら、傷み具合が問題ない範囲のアンティークチェストを探してみてください。
激安のアンティークチェストが美しく蘇る!リペアに必要な道具リスト
それでは早速、アンティークチェストのリペアするための道具やパーツなどを用意しましょう。チェストの状態にもよりますが、主に必要な道具は以下のとおりです。
アンティークチェストを水洗いするのに必要な道具
- たわし
- ホース
- タオル
アンティークチェストを補修する道具や工具類
- 補修用の木材(補修範囲によって必要な量を用意してください)
- 木工補修用ねんど(虫穴や節穴、ビス頭を隠すために使用します)
- ヤスリ
- サンダー(なければヤスリで代用してください)
- カンナ
- ノコギリ
- ドリルドライバー
- スリムビス
- ダボ、ダボ用穴あけドリル
- 接着剤(木工用ボンド)
- メジャー、定規など
- 真鍮製サビ落としブラシ
- シリコンスプレー(塗布すると引き出しの開閉がスムーズになります)
アンティークチェストを着色して仕上げるための道具・材料
- ワシン ポアーステイン(着色剤)
- ブライワックス(ワックス剤)
- 塗装用ハケ
- ワックス塗布用のウエス(不要な布)
格安のアンティークチェスが見違える!アンティーク家具屋が実践するリペア方法
それではいよいよ、弊社で行っているアンティークチェストのリペア手順をご紹介します。きれいに使いやすく仕上げるためにも、チェストの傷みをしっかり確認しながら、地道に作業を進めてみてくださいね。
中古のアンティークチェストを水洗いして汚れを除去する
まずは、購入したアンティークチェストを丁寧に水洗いします。激安品やアウトレット品のアンティークチェストは、ホコリや汚れが付着している場合が多いので、引き出しなど取り外せる部分はすべて本体から外して、ホースで水を掛けながら、たわしで汚れをこすり落とします。水洗いできる環境でない方は、雑巾などを使ってできる限り丁寧に全体を水拭きしてください。隅々まで水洗いできたら、タオルなどでざっと全体を拭き、風通しの良い日陰で十分に乾燥させます。
アンティークチェストのリペアが必要な部分を確認する
アンティークチェストが乾いたら、落ちていない汚れや虫食い、隙間、歪み、ぐらつき、金具の緩み、強度不足などリペアが必要なところを把握していきます。まずは隅々までしっかりと目で見て確認し、ぐらつきや強度面は軽く叩いたり揺らしたり少し負荷をかけながらチェックしていきましょう。
アンティークチェストの状態をチェックしながら、どこまで古い材を残して、どこを新しく修復するのかを判断していきます。中古のアンティークチェストは、作りも状態もすべて1点ずつ異なるので、はっきりとしたアドバイスをすることが難しいですが、リペアするかの判断基準は”実際に使うのにどうか”ということ。例えば、引き出しに洋服をしまうなら、前板だけ古い材を使って洋服と触れる部分は新材で作り直したり、チェストの上にテレビを載せるなら天板は厚めの板に取り替えるなど、使うシーンを想像するとどうするべきかアイデアが浮かんでくるはずです。この判断が完成時の見た目はもちろん、今後の実用面にも深く関わってきますので、丁寧に時間をかけて行ってください。
そのまま使う部分を傷つけないようにアンティークチェストを分解
アンティークチェストをどうリペアするか決まったら、いよいよ修復作業に入ります。全体的に状態が悪い場合は、本体を分解しながらリペアしていきます。
リペアするにあたって、アンティークチェストの元々の魅力を活かすため、傷んでいない部分はできる限りそのまま使うのがおすすめです。分解作業では、再利用する部材が傷つかないように、当て木をしながらトンカチで叩いていきましょう。
アンティークチェストをばらす際、どれがどこの部材かわかるようにマスキングテープなどで印をつけておいてください。後ほど組み立て直す時に作業がしやすくなります。
アンティークチェストの傷んだ部分を取り替えながら修復
アンティークチェストの傷や歪み、隙間、汚れ、虫食いなど状態が悪い部分を切り離し、用意した新材や古材で交換するパーツを作って、取り替えていきます。傷みの程度や範囲に応じて、板材をまるごと交換したり、部分的に切り取って新材を継ぎ足したり、ポイント的に埋め木をして傷みを補修してきます。
アンティークチェストの接合部分は念入りにチェック
リペアする際、接合部分(ほぞ)にゆるみがあると、全体がゆがんでしまいます。一度全体を分解したタイミングで、新しい材と交換したり、削ったりしながら、しっかりと接合できるよう形を整えます。
アンティークチェストの軽い虫食いや節穴は、木工補修用ねんどで補修
虫食い穴で程度が軽いものは、殺虫スプレーを穴に吹き込み、木工補修用ねんどで穴を塞いでください。引き出しの中は特に念入りにチェックし、できる限り新材と交換しておく方が安心です。節穴などもねんどで埋めるときれいに仕上がります。
アンティークらしさを残しつつ、表面の気になる汚れを削り取る
アンティークチェストの表面の汚れが気になる場合は、サンダーかヤスリをかけ、表面を削って整えます。お好みに応じて、ある程度の傷は残したままにしておくとアンティークらしい味わいが残ります。
必要に応じてアンティークチェストの強度を高めるリメイクを行う
天板や棚板などに強度が不足している場合は、補強材を付け加えるか、厚みのある材料に取り替えるなどして補強してください。特に和製アンティークのタンスは、上に物を載せる想定で作られていないため、家具の上に物を載せて使うなら補強が必要です。厚みのある天板を上から取り付けると楽に強度アップできますよ。
アンティークチェストの可動部の動きをスムーズに整える
引き出しや扉などを動かした際に引っかかりを感じる場合は、木が変形して開閉の動きを妨げていると考えられます。開閉する際に擦れてしまっている部分をカンナやヤスリで少しずつ削って調整してください。最後にシリコンスプレーを塗布すると、より滑りが良くなります。
アンティークチェストの金具など金属のサビを落とし、ゆるみを直す
引き手など金具のサビがひどい場合は、真鍮製のサビ落としブラシを使って、サビを除去します。また、金具がゆるんでしまっている箇所はしっかりと固定し直します。
アンティークチェストの木工リペアが一通り完了したら、着色・ワックスで仕上げる
全体の木工修理が終わったら、元々の木材と補修した部分が馴染むよう着色して、ワックスで仕上げます。
まずは表面のホコリなどをきれいに取り除いてから、お好みの色のポアーステイン(着色剤)をハケで塗り、1~2分置いてからウエス(不要な布)で一気に拭きあげて余分な塗装を拭き取ります。着色は、2~3回重ね塗りするとムラなくキレイに仕上がります。
着色が終わったら表面を保護するためのブライワックスを塗ります。ウエスを使って木材にすり込むように塗り、ツヤが出るまでしっかりと拭きあげます。最後に乾拭きして仕上げてください。
引き手など細かな金具類もワックスを塗ってツヤが出るまで磨いてください。これでアンティークチェストのリペアは完了です。
最後に
中古やアウトレット品として販売されている激安のアンティークチェストでも、手間を惜しまずにきちんとリペアすれば、見た目にも美しく実用的な収納家具に生まれ変わることがわかりましたね。
セルフリペアは、家具への愛着や修復の達成感が大いに感じられる貴重な体験です。ただ、アンティーク家具のリペアはDIYの中でも難易度の高い作業ですので、大変そうだなと感じた方は、ぜひプロの手でリペアされたアンティークチェストも検討候補に加えてみてくださいね。