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チッペンデール様式とは

チッペンデール様式とは18世紀中期のイギリスにおける家具の様式です。
これは、背にリボン装飾が絡む華麗なリボンバックチェア等で知られた家具師、トーマス・チッペンデール(1718-79)にちなんでいます。ロココ様式を主としてクイーン・アン風、ゴシック風、中国風、ネオクラシズム風、といった5つの様式を持っています。この記事ではチッペンデール様式の家具の紹介と共に、歴史やトーマス・チッペンデールについても触れていきます。

チッペンデール様式の特徴とは?

チッペンデール様式 家具

1.前代のクイーン・アン様式に軽快優美なフランス・ロココを併せた表現を基調としています。

2.工場での量産を導入し、家具を特権階級から一般階層にも広めた、合理性と美しさを備えた様式です。

3.彫刻装飾に適したマホガニー材を上手く家具に取り入れました。またマホガニー材の流行と重なったことも発展を後押ししました。

チッペンデール様式は大きく5つに分けられる

クイーン・アン風、ゴシック風、ロココ風、中国風、ネオクラシズム風
フランス・ロココや中世ゴシック由来のものが多く、その他には中国風のものがあります。

背もたれの種類別、チッペンデール様式のチェア

チッペンデール様式の家具は特に椅子の意匠に特色があり、マホガニー材や開放式の背、花柄を主とした座面生地等を採用した、軽快かつモダンな意匠を展開します。背もたれの意匠は大きく3種に分けられます。なお、椅子の後ろ脚は大半が後ろに反る先細り形で、ゴシック風の場合は垂直の背にゴシックアーチが付きます。

スプラット・バック

スプラットバックチェア

1つ目は透かし彫りの背板がつくスプラット・バック・チェア。
そのうち「リボン・バック」のものが、クイーン・アン様式を継承した流麗な曲線前脚(カブリオール。猫脚)と
玉を掴む爪形脚先(ボール・アンド・クロー)を備えており、デザイン的に最も優れています。

ラダー・バック

ラダーバックチェア

チッペンデール様式のラダー・バック・チェアには麦穂や茎形意匠のある梯子状の横木がつきます

オール・オーバー・バック

中国風(チャイニーズ・チッペンデール)かゴシック風の組格子がつく。脚は直線です。

便利なつくりが特長。チッペンデール様式のテーブル

サパーテーブル

サパーテーブル

天板を垂直に変形させて畳むことができるテーブル。使わない時には天板を垂直に立てて壁際に飾っていたそうです。
天板は丸や長方形以外にも、曲線を使ってデザインされた変形型のものが多く見られます。

バタフライテーブル

こちらも使わない時には天板を折り畳んでおけるテーブルです。

ライティングデスク(書記机)

チッペンデール様式期のライティングビューローは頭部にスワンネックと呼ばれる飾りがついているのが特長です。
また、アダムのデザインによる寄木や鍍金金具等が精緻で壮麗な、初期新古典主義風の傑作的ライティングデスク(書記机)等も残っています。

トーマス・チッペンデールとは何者なのか?

トーマス・チッペンデールは1718年に英国中部の小都市オトリーで家具師の子として生まれました。11歳で母と死別後、近郊で見習い家具師として修業に入り、30年代から創作活動を始めたとみられます。
バロックとロココの過渡期であるフランスのレジャンス(摂政)様式を導入したドールハウス等を手がけ、優れた才能を発揮しました。

●「チッペンデール様式」の”RAFUJU MAG 辞典”関連ページ

ロココ調 チェアレジャンス(摂政)様式とは、フランスで発生した、バロックとロココの過渡期にあたる様式です。
フランス・ロココ様式はチッペンデール様式の土台となっています。レジャンス様式について詳しく知りたいかたは、こちらの記事もいかがでしょうか。

 

ロココ様式」のRAFUJU MAG辞典ページはこちら

その後、20代前半頃にロンドンに出たとみられ、1748年に同地で結婚。翌年に家具生産の中心地区ロングエーカーに居を構え、長男をもうけます。
詳しい経緯は不明ですが、独立してわずかな期間で頭角を現す才能と見識を有したとみられ、
52年以降、毎年工房を拡大させて発展を遂げました。なお、50年代からは大胆自由なロココ様式を導入します。

売れっ子家具デザイナーとなり英国中に名前が広まる

チッペンデール様式 歴史

1755年の火災で工場等が全焼しますが、保険金によりただちに設備や規模を拡充した工場を新設。
そして、その直後に英国初の家具のデザイン書『顧客と家具メーカーのための手引書(The Gentleman and Cabinet-Maker’s Director)』を出版します。
この本は、様々な意匠の家具を美麗な線画で紹介したもので、高級品から一般用までも掲載するという斬新なものでした。そのため、全英の家具師・彫刻師らに用いられ、成功を収めます。
特に62年の第3版は家具・工芸以外の様々な分野の人々からも支持され、チッペンデールの名声を不朽のものとしました。そして、60年には家具師で唯一、芸術協会員に推挙されます。

チッペンデール様式に変わり古典デザインが復活する

様式としては55年から60年頃まで中国風が流行し、50年代からはゴシック様式…といった具合に、その時々の多彩な流行を牽引していきます。
50年代と60年代はイギリス・ロココの最盛期となりますが、チッペンデールはその流れの第一人者として名声を馳せることになりました。

終わりを迎えたチッペンデール様式の時代

しかし、1760年代後半からイタリア帰りの新進建築家、アダムが新古典主義様式をイギリスで展開し始めます。
これによって、チッペンデールのロココ様式は衰退に向かうことになりました。
その後は奇抜さを求めたデザインによって統一性を欠き、グロテスクな傾向を示し始めます。

時代の流れは再び古典主義へ

そして次第にヨーロッパ諸国の古典主義の潮流に抗えなくなります。機敏な実業家チッペンデールはこの状況を察知し、アダムと提携するなどして古典様式の家具製作も手がけますが、もはや流行を牽引することはなく、1779年に61歳で世を去りました。

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