RAFUJU MAG

ANTIQUEFURNITURE RAFUJU STUDIO MAGAZINE

独特の魅力をおさらい。和と洋が交差する、松本民芸家具のものづくり

伝統的なものであり、突き詰めたものであり、それが私たちにとって新鮮でもある "民藝"。長きに渡り根を張り続けてきたものが、今でもじんわりと影響を与えているようです。

長野県松本市を訪れた際に出会った「松本民芸家具」。それは洋家具の雰囲気を漂わせる、凛々しい日本の家具でした。西洋の家具を踏襲した民芸家具の産地は日本各地にも存在しますが、その中でも松本は、民芸家具の礎を築いた存在となっています。

以前のRAFUJU MAGでも、「民芸家具の魅力と2大ブランド」についてお届けしましたが、今回はよりさらに、松本民芸家具の「和洋が交差するものづくり」に迫ってみようと思います。

木工の地を繋ぎとめた、「松本民芸家具」のはじまり

松本民芸家具 キャプテンチェア 松本の家具の歴史は、松本民芸家具が誕生するよりずっと昔から続いていました。

松本城が建立された安土桃山時代の頃から、周辺の城下町には家具屋や建具屋を生業にした職人が住んでいたと言われています。全国から質の高い "匠" が集結した地である飛騨(岐阜県)が隣接していたことや、資材を保有する立地条件が備わっていたことが後押ししました。

しかしその流れも、太平洋戦争により途絶える危機を迎えてしまいます。それを食い止めるべく立ち上がり、松本民芸家具の発足者となったのが池田三四郎でした。商業写真家から、右も左も分からぬままの家具界へわざわざ転身したきっかけとなったのは、「民芸運動」を提唱した柳宗悦。

柳氏が激励し、池田氏は松本のものづくりを守っていくことを決意します。戦後の混乱がつづく1948年、まだ残っていた職人たちに声を掛けて「松本民芸家具」をスタートさせました。

イギリスからの模倣で極めた技術

松本民芸家具 長ウィンザーチェア 質の高い和家具を作る技術は持っていたものの、松本の職人にとって、洋家具は未知の世界でした。

そんな洋家具の中でも、池田がとりわけ熱を込めていたのが「椅子」作り。民芸運動を志す仲間に助言をもらいながら、池田はイギリスの ウィンザーチェア を学ぶことにします。富山にいた家具職人である安川慶一の指導のもと、職人は製作を積み重ね、正確な模倣ができるようになっていきました。外観だけでなく、その "庶民の手で育まれる過程" までもが、まるでウィンザーチェアを模倣しているようでした。

松本民芸家具では、現在レギュラー商品だけでも800種類を越える数が存在すると言われています。

手に頼る制作方法と、ものづくりへのこだわり

松本民芸家具 ミヅメザクラ 濃茶と赤褐色で織り成されたグラデーションは、松本民芸家具の特徴の一つであり、洋の色気を感じる要素でもありますよね。

イギリスのウィンザーチェアでは、部分によって木の種類を変えるのが一般的ですが、松本民芸家具では地元で採れる「ミズメザクラ」という木材を使用しています。このミズメザクラは重くて硬く、実は材としての加工も楽ではありませんが、その木目の美しさと構造的な強度から、長く使うものへの活用は適していると言われています。

職人のこだわりは、木材の切り出しから始まっています。たとえば曲線一本でも、技術が発達した現代でさえ、機械では表現しきれないフォルムがあるというのです。一本の丸太から無駄を出さないように、かつ使う人の事をとことん考えて作業を重ねていきます。そして仕上げは、ミズメザクラの風合いを活かすように、塗装は手で刷毛(はけ)を動かし、拭き漆などで刷り込んでいきます。

たとえ形が整った美しいものでも、人の手が感じられるものになって初めて、松本民芸家具から堂々と送り出せるものとなるのでしょう。

模倣から変化へ。「ガマ編椅子」とアメリカンウィンザー

松本民芸家具 ガマ編み椅子 先ほど話した通り、松本民芸家具はイギリスの伝統的なウィンザーチェアを踏襲してきましたが、新たな価値を提唱するきっかけとなったシリーズがある時発表されます。

それが今でも人気のある編み座面の "ガマ編椅子" シリーズ。以前ご紹介したアメリカの シェーカーチェア の話に通じますが、この草編みの座面もシェーカーチェアの特徴の一つ。柳宗悦の監修のもと日本なりのデザインを取り入れ、オリジナル性を表現したことで注目を浴びました。

紛らわしいのですが、"ガマ編み" は中の人が呼び合う通称。材料もガマ草ではなく、実際は「フトイ(太藺)」という草を使った "ラッシ編み" という技法で作られているそうです。このラッシ編みに関しては、池田三四郎の妻キクエが中心となり、手法の研究を重ねて職人に伝授していったと言われています。

松本民芸家具の新たな文化の取り入れは、日本にアメリカンウィンザーが広く知られるきっかけとなったことは間違いないでしょう。

最後に

民芸家具を語るには欠かせない「松本民芸家具」を、まずはおさらいを含めて取り上げてみました。

松本民芸家具は、伝統的な洋家具への敬愛すら感じる模倣から、独自の魅力を見出したリバイバル家具であるように思えます。ブランド設立にいたるまでのルーツや、ものづくりへのこだわりだけでも、まだまだ語りきれませんね...。

今度は家具自体にも、さらにフォーカスを当ててお届けしていきたい思いますので、お楽しみに。

関連記事

筆者のご紹介

茶園みずき

様々な人との出会いに刺激を受け、専門学校卒業後にデザイン事務所へ。グラフィックデザインに限らず、イベント企画など、人と人がつながる場づくりにも精を出す。仕事をしていく中で、ものづくりについてもっと深く知りたいと思うようになり入社。家具の向こうに見えてくる、インテリアのコーディネートをお届けできればと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

RAFUJU MAG とは?

アンティーク家具WEBショップ、ラフジュ工房がお届けする、日々の暮らしを豊かにするお手伝いとしてアンティーク家具やインテリアにまつわる知恵や情報を集めたWEBマガジンです。

CLOSE