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ANTIQUEFURNITURE RAFUJU STUDIO MAGAZINE

漆で丈夫に長持ちに。お手入れも簡単、修理も可能な「漆器」の話

日本人の衣食住すべてに浸透している「もったいない精神」。"もの" を無駄なく、できるだけ長く使い続けるという思想は、日本の伝統工芸に深く根付き、ものづくり世界においても核となっています。

そんな「もったいない精神」にあふれる伝統工芸を、衣・食・住それぞれ、全三回にわたって、ご紹介しています。前回、第一回目は「衣」にまつわる「刺し子」に注目しました。着物が丈夫で長持ちするように、それを着る家族が寒くないように、一目一目気の遠くなるような作業をする「刺し子」。そこに込められた愛情を知り、そのおしゃれなデザインを見ると、何も言われなくても、ものを大切にしようという気持ちになりました。

続いて今回、第二回目は「食」にまつわる「漆器」についてお話ししたいと思います。かなり古い時代から日本人の生活の一部として使われてきた漆器。そこにもしっかり、長く使われる工夫が隠されています。

「japan」=「漆」

朱色の漆器 陶磁器のことを英語でchinaと呼ぶことがあるように、漆器のことをjapanと呼びます。

漆は東アジアにだけ生息する漆の木の樹液が材料です。湿度が高いほどよく乾くという少し変わった性質を持っていて、日本の多湿な気候が漆工芸の美しさを生むのに最適な環境といわれているそうです。

古くは縄文時代の遺跡から、漆を使った装飾品が見つかったほど。日本は、漆の長い歴史と文化を育んできたのです。

見えない部分に手間をかける、長持ちの秘訣

丈夫な漆器 古くから現在に至るまで、漆器の多くは木を材料としています。日本人は、木の器に漆を塗ることで、強さと美しさを加える技術を身につけました。

丁寧な漆器づくりの仕事では、下準備の部分に相当な時間をかけます。まず最初に、木を削って形を作った器に、漆を染みこませます。木は湿度によって縮んだり膨張したりしますが、漆がそれを防ぐのだそうです。その後、強度を増すために麻布や和紙を貼り、その上から何度も漆を塗り重ねることで、木をさらに丈夫にします。

ここまでが、言ってみれば下準備。完成の時には全く見えなくなってしまう部分にも、これほどの時間と労力をかけるのです。

さらに、漆を塗り、表面を研ぎ、最後の仕上げに黒や朱などの色漆を塗って、ようやく漆器が完成します。漆が水や湿気を跳ね返し、土台になっている木が腐るのを防いでくれるのです。もともと強さのある漆を、何度も何度も塗り重ねることによって完成させる漆器。この重ね塗りこそが、長持ちの秘訣なのですね。

お手入れと修理をしながら、長く使うということ

漆器の手入れ 今は高級品のようなイメージも強い漆器ですが、安定して生産できるようになった江戸時代には、庶民の間でも広く使われるようになりました。漆はとても抗菌力が強いので、特に食べ物を扱う道具として重宝されてきました。

漆の特徴は、なんといってもその耐久性。縄文時代の遺跡から発見された装飾品の光沢は、何千年もの間変わることなくそのままだったそうです。「長持ち」というと、「壊れにくい」ということが真っ先に浮かぶような気がしますが、長く使い続けるということには「壊れても修理しやすい」という要素もすごく重要です。

何重にも漆を塗り重ねている漆器は、表面にキズがついても、上から漆をもうひと塗りすることで、キズを隠すことことができます。また、漆の「一度乾いたら再び溶け出すことがない」という特徴を利用して、割れたり欠けたりした部分を、漆を接着材にしてくっつけることで、再び使えるようにすることができます。

そんな漆の唯一の弱点は乾燥すること。今の生活でいえば、冷蔵庫や食洗機、電子レンジには使えませんが、"普通に" 使っていれば壊れるようなことはめったにありません。乾燥にこそ弱い漆ですが、熱や酸にも強く、実はお手入れも簡単。水で洗えばたいていの汚れが落ちてしまいます。むしろ頻繁に洗うことで漆に水分補給をすることになり、漆器を長持ちさせることにつながるのです。

宝物になる美しさ

沈金蒔絵木製椀 お手入れや修理を重ねながら、何十年、何百年と使うことが可能となる漆器。そんな漆器の魅力は、その実用性ばかりではありません。「いかに美しく見せるか」ということも昔から求め続けられていることです。艶やかな黒や朱でも十分に美しい漆器ですが、さまざまな装飾技法も生まれました。

漆を糊として金粉や銀粉などをくっつけて絵を描く蒔絵(まきえ)や、貝殻の内側の光沢のある部分を貼りつける螺鈿(らでん)などを施したものは、美術品にもなるほど。
こうして高級さも持ち合わせた漆器は、代々、家宝として受け継がれていくことになりました。今でも美しい漆器がアンティークとして残っているのはそのためなのですね。

最後に

見えないところに手間をかけられるかどうか。これこそが長持ちする道具のポイントなのだと思いました。そして、長い間使い続けられるかどうか、ということは「使いやすさ」と「美しさ」もとても重要な要素になるのだと改めて実感しました。この両方を持ち合わせている漆器だからこそ、今も昔も、生活の身近に、同時に宝物として、人々に愛されてきたのですね。

さて、次回は「住」にまつわる物。生活に必須な「箪笥」についてお話ししたいと思います。どうぞお楽しみに。

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筆者のご紹介

赤津ちひろ

これまで全く異なる業界で働いてきたが、数年前からものづくりの素晴らしさに魅了され、思い切って転職、入社。職人たちの技術や工夫、気の利いた遊びにはいつも感心するばかり。壊れないように、使いやすいように、飽きないように…人びとの暮らしにあわせて丁寧につくられた家具、雑貨、日用品などすべての「もの」たちを、魅力いっぱいにご紹介していきます!

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