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ANTIQUEFURNITURE RAFUJU STUDIO MAGAZINE

使って楽しむ、鉄瓶。錆び・重さのデメリットをカバーする職人技

最近、日本国内だけでなく、欧米を中心とした海外でも、鉄瓶や鉄の急須の人気が高まっているそうです。

鉄瓶の人気の秘密は...?
「お湯はまろやかになり、そして冷めにくく、鉄瓶から溶け出した鉄で鉄分補給ができること」や、「"煎茶文化" とともに生まれた手頃で使いやすい湯沸し道具で、かつ、わびさび文化と職人の遊び心が表現された意匠が見ていて楽しいこと」など。こうしてみると、良いことばかりに思えます。でも、あまり使われなくなったという現実もあります。

「重い」そして「錆びやすい」。やはりこれが二大デメリットでしょうか。でも実は、丁寧に作られた鉄瓶たちには、これらの問題を解決に導く職人技が隠されているのです。

今回は、見ていて楽しいだけじゃない、"使う" ことを考えた鉄瓶職人の匠の技に注目です。

光る職人技。「重さ」と「錆び」対策

アルミやステンレスのヤカンに比べれば、それなりに重くて確かに錆びやすい鉄瓶ですが、職人がきちんと作った鉄瓶にはその問題を解決する工夫がなされています。

熱を逃がし、そして軽い。中空の袋鉉

鉄瓶の袋鉉 鉄瓶の持ち手、「鉉(つる)」は、大きくわけて2種類。鉄の棒を曲げて作る「無垢鉉(むくづる)」と、鍛冶屋である鉉師(つるし)が一枚の薄い鉄板を叩いて作る「袋鉉(ふくろづる)」があります。

無垢鉉は機械でも作ることもできますが、袋鉉は今のところ熟練した職人による手作りのみだそうです。袋鉉は、薄い板を叩いて丸め、中を空洞(中空)にするので、無垢鉉に比べてとても軽いのが特徴です。その一方、精巧に作るには熟練した職人技が必要なのだとか。

さらに、"わびさび" を表すために、鉄が朽ちる様子を表現した「虫喰い」と呼ばれる小さな穴をあけます。中空と虫喰いは、お湯が沸騰していても熱くならないようにという、熱を逃がすための職人の工夫でもあるんだそうです。

錆び防止の膜を張る、金気止め

鉄瓶の金気止め 丁寧に作られた鉄瓶は、製造の最後に「金気止め」という工程を経ています。南部鉄器独自の技術として生みだされた「焼抜き」とも呼ばれるこの工程では、一度できあがった鉄瓶を炭火で再び焼きます。すると、鉄瓶の内側に酸化被膜という錆び防止の膜ができて、錆びにくくなるのです。

実はこの技術、明治時代に盛岡で起きた大火災がきっかけで偶然発見されたもの。焼け跡から拾った鉄瓶が錆びにくかったために最後の工程に加えられたのだとか。

鉄瓶は使っていくうちに、水の中のカルキ(石灰分)などを吸収して「湯垢」が付いていきます。使いながら「湯垢」をつけて錆びにくくする、つまり鉄瓶を「育てる」のですが、金気止めで酸化被膜が付いている鉄瓶は、その膜が取れるころに湯垢ができるという上手い具合に作られているのです。

意外とシンプルな使い方

鉄瓶のお手入れ方法 手入れが面倒と思われがちな鉄瓶ですが、使い方は意外とシンプルです。守るべきルールは2つだけ。
  • 使い終わったら完全に乾かすこと
  • 内側には絶対触れないこと

お湯を沸かしたあとは、熱いうちにお湯を捨て、余熱で水分が飛んで完全に乾くまで放っておきます。もしも乾かない場合には、ほんの数十秒ほど空焚きして水分を飛ばします。

内側は絶対に触らず、放っておきます。金気止めや湯垢で錆び止めの効果がありますが、こすったり触ったりするとせっかくの錆び止めが取れてしまうためです。

それから、昔は鉄瓶を囲炉裏や火鉢で使われていたという点を考えて、ガスコンロで使う時はできるだけ弱火で、炎が直接当たらないようにするのが長持ちの秘訣です。

ポイントはこれだけ。毎日使って、使った後は特別なことをするよりも、むしろ「放っておく」ことがお手入れになるのです。

鉄瓶でおいしいお茶を

鉄瓶の味の違い 職人たちの匠の技がたくさん散りばめられた鉄瓶を実際に使ってみると、どうでしょう。

冒頭でも触れましたが、まず鉄瓶で沸かしたお湯を使うと鉄分補給ができます。鉄瓶から溶け出すのは、体内にほぼ100%吸収されるイオン化した鉄分。野菜や魚に含まれる鉄分よりも吸収されやすいそうです。
また、「お湯がまろやかになる」のは、鉄瓶が水道水のカルキ(石灰分)を取り除いてくれるためです。カルキは鉄にくっついて湯垢になります。湯垢がつくと鉄瓶はますます冷めにくく、お湯はますますまろやかになります。まろやかなお湯で淹れたお茶は、甘味が増しておいしくなるのです。

RAFUJU MAGでは「おいしいお茶の淹れ方」についての記事も公開していますので、そちらもぜひ参考にしてみてくださいね。

最後に

毎日のお水やお茶をおいしく。毎日の暮らしをこだわることが一番の幸せかもしれません。

重さも錆びも、確かにデメリットではありますが、鉄瓶でじっくりゆっくりおいしいお湯を沸かして、忙しい毎日にほっと一息入れてみるのはいかがでしょうか。

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筆者のご紹介

赤津ちひろ

これまで全く異なる業界で働いてきたが、数年前からものづくりの素晴らしさに魅了され、思い切って転職、入社。職人たちの技術や工夫、気の利いた遊びにはいつも感心するばかり。壊れないように、使いやすいように、飽きないように…人びとの暮らしにあわせて丁寧につくられた家具、雑貨、日用品などすべての「もの」たちを、魅力いっぱいにご紹介していきます!

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